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《ブラジル》県連故郷巡り「承前啓後」ポルト・ヴェーリョとパウマス(31、終わり)移民史はブラジル近代史の一部

5/24(水) 6:23配信

ニッケイ新聞

 3月21日の夕食時、同じテーブルに見慣れない若い家族が一緒に座った。一行の藤本誠吾さん(82、滋賀県)=サンジョゼ・ドス・カンポス在住=が、養子として育てた藤本ミツオ・ジューリョさん(55)の家族だった。亡くなった兄弟の子供を引き取って、育てたのだという。
 藤本さんは家族に連れられて1歳で渡伯し、ペレイラ・バレットに入植した。サンジョゼでは長年、写真館を経営してきたが、デジカメの台頭で現像の仕事がなくなり、2000年に閉店した。
 聞けば、ジューリョさんは、パウマス連邦警察でコレジェドール(警察監査官、警察の警察)をしており、大物政治家などの重要案件も担当しているという。
 藤本さん本人によれば、「パウマスにきてから2回もジョルナル・ナショナル(グローボのニュース)に出て、汚職事件に関するコメントをした」という。実は、けっこうな有名人だ。
 ジューリョさんは「ここにきて1年半だが、トカンチンスは大変汚職が多い州で、今困難な捜査をしている最中。ここは公共事業が多いから、汚職がつきもの。連邦警察の使命は、汚職撲滅だ」と力強く語った。まさにブラジルを良くするための最前線に立っている日系人の一人だ。
 PMDBの政治勢力が強く、公共事業が最大の産業であり、政治家が強い土地柄だから、汚職はムリもない。
 なんとここに来る前は、偶然にもポルト・ヴェ―リョに勤務していたという。「国境の町グァジャラ・ミリンにいたが、あそこはトラフィカンチ(麻薬密輸業者)ばかり。大変なところばかり回されている」という。
 見るからに口数の少ない真面目な日系人の典型であり、それゆえに、最も困難な仕事を回されるのかと推測した。

    ☆
 最終日の22日(水)の朝、30回以上も故郷巡りに参加する常連中の常連、清水秀策さん(82、愛知県)=聖市=は、「今回の旅で、ブラジルの奥地にこんな立派な町があり、ここでも日系がしっかりと活躍していることが分かった。それがこの旅行の有難いところ」と旅の充実感をかみしめていた。
 兼松プリニオ毅さん(つよし、78、マリリア出身二世)=サンカエターノ・ド・スル市=は「ゴミや犬の糞一つ、落ちてない奇麗な町で驚いた。しかもセルカ(塀、柵)もないから、おそらく治安も良いのだろう。僕が生まれたマリリアから40キロのオスカル・ブレサネ市は、今でも人口2500人しかいない。それに比べて、パウマスが短期間で成長したのはすごい」と感嘆のコメントをのべた。
 一行はパウマス空港に向かう途中で、トカンチンス日伯文化協会の会館に立ち寄った。入口には堂々とした鳥居が立っていた。中村ネルソン会長によれば、2012年の日本祭りの機会に建設したのだそう。「会員の設計技師を中心に、有志8人ぐらいが毎週末集まって2カ月半がかりで作った」とのこと。
 昨年は不況でスポンサーが集まらず、日本祭りはできなかった。「今年は9月にぜひやりたいと思っている。

    ☆
 コロニアの伝統的なファゼンダ「多羅間農場」が、ブラジル近代農業のフロンテイラに直結しているという事実は、まさに移民史がブラジルの歴史の一部であることの証明だ。1994年に解散したコチア産組中央会がセラード開発でやろうとした農業が、ここで実現されているのではないか―そんな気がした。
 「承前啓後」(過去を受け継いで、未来を導き開く)を地で行く充実した旅を満喫した一行、無事に聖市に戻った。(終わり、深沢正雪記者)

最終更新:5/24(水) 6:23
ニッケイ新聞

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