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SI企業、自社のSE救う「働き方改革」 ノウハウ商品化で“一石二鳥”

5/24(水) 18:53配信

日刊工業新聞電子版

自社ノウハウをビジネス化

 政府が後押しする「働き方改革」に取り組む企業が増えている。産業界でも長時間労働が多い情報サービス業界も積極的で、得意のITを駆使した改革を推進している。さらに各社は自社が培った働き方改革のノウハウを商品化して外部に提供。新たなビジネスチャンスとして“一石二鳥”を狙う動きも目立つ。

≪日立ソリューションズ、残業是正システムの引き合い増加≫
 日立ソリューションズは4月に専門組織「ライフスタイルイノベーション本部」を立ち上げ、働き方改革関連事業を強化した。約200人が在籍し、150人のシステムエンジニア(SE)を中心とする企画や設計、開発の人員で構成する。5年後に同事業の売上高を現在の約80億円から160億円へ拡大するのが目標だ。

 力を入れているのは人工知能(AI)やIoT技術などを活用した支援システムとITサービスの開発。開発後は人事部門と連携して自社内で実証を行い、実用化につなげる。6月からセンサーを利用した出退勤管理サービスの実証を始める予定だ。

 同時に自社内に分散する働き方改革に関連する商材の集約や国内外のIT企業の関連製品の発掘、社内に蓄積したノウハウ提供などで事業を展開する。パソコンの自動シャットダウンにより残業時間の適切な管理を支援する「長時間労働是正システム」は、2月の提供開始から50社強の引き合いがあるなど滑り出しは順調だ。

 「組織ストレス予測サービス」「組織パフォーマンス診断サービス」では人事・労務管理関連や他システムのデータを集めてAIで分析し、データの可視化から診断、問題発生予測を行って業績向上や持続的成長を支援する。「これまで人の経験や勘に頼っていた部分をデータとAIで科学的に抽出する」(リシテアソリューション部)とし、課題解決を支援していく。

富士通、テレワークを全社員に導入

 働き方改革で脚光を浴びるテレワーク。情報サービス各社は、自宅や営業先、出張先などさまざまな場所でパソコンやタブレット端末、スマートフォンを利用し、場所を選ばず仕事ができる環境づくりに取り組んできた。

 富士通は4月からテレワーク制度を全社に導入。対象となる社員は約3万5000人で、国内を中心に富士通本社からスタートし、グループ会社にも順次広げる。生産性を高めるため、AIなども活用する。

 勤務状況を見える化するためのITツールも導入する。4月からは富士通エフサス(川崎市中原区)が開発したツール「IDリンク・マネージャー」を導入して、あらかじめ仕事内容を申請するなどして時間への意識を高める。

 テレワークを利用する社員にはシンクライアント端末を配備する。最寄りのオフィスでのサテライト勤務の活用も含め、効率的に働ける環境を提案する。自社での実践を参考事例として、企業への提案活動に生かす方針だ。

≪伊藤忠テクノソリューションズ、IoT・AIを社内実証≫
 伊藤忠テクノソリューションズでは、テレワーク以外での働き方改革支援ビジネスの可能性を探る。そのために、自社の職場環境の改善や働き方改革につなげるIoT技術やAIを活用したITサービスを自社内で実証する方針だ。

 社内の課題をとりまとめ、ITで解決できるか精査しながら順次実証を行う。同社の菊地哲社長は「企業の課題は共通していることが多いので、サービス内容と実証結果次第では、商用化も視野に入れる」という。

 現在は「会議室が足りないのに、予約時間に利用されていないことが多い」といった社内の声をきっかけに会議室不足を解消するサービスの実証に取り組んでいる。本社の全会議室の天井に人感センサーを取り付け、予約時間内に会議室が利用されているか確認する。さらにセンサーで取得・蓄積したデータをAIで分析し、予約が集中する時間帯などを予測する。

 情報サービス業界は各種の制度改正や業界再編などの「特需」で大きな恩恵を受けることが多い。今回の「働き方改革」は従来の多くの特需に比べて、一過性でない長期的な取り組みが求められる課題だ。ICT活用の有用性を示すことで、働き方改革を新たな市場に育成することもできる。業界の長時間労働体質の解消と、そのノウハウの活用で各社がアイディアを競うことになる。

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