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社説[「共謀罪」衆院通過]懸念解消にはほど遠い

5/24(水) 7:30配信

沖縄タイムス

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案は、23日の衆院本会議で、自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決され、衆院を通過した。

 国会審議の形骸化は目を覆うばかりである。

 与党などは19日、審議時間が30時間に達したことを理由に、衆院法務委員会での審議を打ち切り、採決に持ち込んだ。

 共同通信社が採決後の20、21両日に実施した全国電話世論調査では、政府の説明が十分だと思わないとの回答が77・2%に達した。

 「審議が尽くされていない」という声が圧倒的多数を占めているのである。多数決原理は少数意見の尊重とセットで運営されなければ多数専制に陥りかねない。

 国連のプライバシー権に関する特別報告者ケナタッチ氏は「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」と、法案への懸念を示す書簡を日本政府に送った。

 法律が成立すれば、犯罪を計画段階で処罰するようになるため、解釈によって捜査機関の権限が拡大され、捜査手法が広がり、個人・団体の行動が日常的に監視される懸念が生じる。

 だが、十分な審議を求める国民の声にも国連特別報告者の疑問にも、政府はまともに答えていない。

 金田勝年法相の国会答弁はあまりにも不十分で、内容を理解しているのか疑わせるような惨たんたるものだった。 法相が説明できないような法案はいったん廃案にして出直すべきだ。

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 政府は、過去に廃案になった「共謀罪」の構成要件をあらため、名称も「テロ等準備罪」に変え、テロを前面に押し出した。2020年東京五輪に向けたテロ対策としての必要性を強調する。

 参院での審議であらためて議論になりそうなのは、法案のほんとうの目的がどこにあるのか、という点だ。

 22日午後10時半(日本時間23日午前6時半)ごろ、英国中部マンチェスターのコンサート会場で起きた自爆テロ事件は、あらためてテロ対策の難しさを突き付けた。

 イタリアで開かれる先進7カ国首脳会談(サミット)でこの事件が取り上げられるのは確実である。

 テロ対策といえば国民の理解も得やすく、野党も反対しにくい。今後の参院での審議で政府は国民の「安全・安心」を前面に押し出すことになりそうだ。

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 国際組織犯罪防止条約(パレルモ条約)の締結が急務で、そのためにも「テロ等準備罪」が必要、だと政府は強調する。

 だが、この条約はテロ対策を目的としたものではない。現行法規の枠内でも条約を締結することは可能、との見方も少なくない。

 危機や不安に乗じて法律を成立させ、捜査権限を肥大化させたとき、まず脅かされるのは市民の諸権利である。

 こういう時期だからこそ、地に足のついた冷静な議論が必要だ。その前提は、政府が説明責任をきちんと果たすことである。

最終更新:5/24(水) 7:30
沖縄タイムス

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