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「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第49回:一致団結(正智深谷高:小島時和監督)

5/24(水) 18:00配信

ゲキサカ

“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」

 トップチームを見ていた金井豊コーチの元へ小島時和監督が歩み寄り、意見を交わす。急成長の裏側に、チームスローガンを体現するスタッフ陣の力がある。昨年度の全国高校選手権で初の8強入りを果たした正智深谷高は、強豪校不在が長く続いた埼玉県北部で急速に力を付けている。台頭の陰には、地域の力を束ねてきた小島監督の歩みがある。

 指揮官は「僕が西部の東農大三高の監督をやっていたときは『抽選で北部と当たったら1勝は確実』と考えていた。でも、逆の立場で言われたくないと思った。だから、北部の先生たちと『みんなで頑張ってシードを取って北部から県大会に出るチームを増やそう』と地域を盛り上げていった」と1999年の就任時を振り返る。

 高校同士だけの話ではなかった。上里FC、ジェットストリームFCといった地元のジュニアユースチームの指導者と交流を深め、指導方法を学んだという。

「オレが監督だ!と意地を張っていてもダメ。良いものは、どんどん導入するし、意見を聞く。県北部のチームで勝つ、正智深谷を全国で勝たせる。そのためなら、何でもやろうと思った」(小島監督)

 2004年に両ジュニアユースが統合して生まれたFCコルージャは主な選手供給源で、現在は綿密な関係を持っている。上里FCの発起人である金井コーチに高校の指導を頼むようになり、昔ながらの時間と量に頼るトレーニングを見直すことにもつながった。

 1チームが複数のリーグにエントリーする現代では、指導者がワンマンでチームを率いるのは難しい。しかし「船頭多くして船山に登る」の諺があるように、指導者が増えれば、指導や育成の方針がバラバラになるリスクも抱える。ピッチ上の選手と同様に、スタッフも組織力が求められる時代になって来ている。

 チームスローガンは、一致団結だ。小島監督は「体を鍛えて、サッカーの技術や戦術を覚えた後、絆とか団結心を学ぶことが必要。ただ、言うのは簡単だけど、本当に難しい。(他者の意見に対して最初は納得しても)うーんと思ったところから、よし分かったという気持ちにならないといけないから」と、真の一致団結にたどり着く難しさを説いた。人には意地もプライドもある。同じ目的であっても、成し遂げたい思いが強いほど対立や反発が生まれるものだ。柔軟で、謙虚で、誠実でなければ、団結を導く人物にはなれない。並び立って、笑顔で意見を交わす指導者の姿に、強さの背景が見えた気がした。

■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」

最終更新:5/24(水) 18:00
ゲキサカ