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キリンビールの「ゆっくり届くボタン」に込めた思い 「人間、ずっと頑張るってできない」

5/25(木) 7:10配信

ITmedia NEWS

 「忘れたころに商品が届く」――せかせかとした世の流れにあらがう、ゆるい企画をキリンビールが立ち上げた。

【画像】芝生の上に置いても全く違和感がないスローボタン

 その名は「スローボタン」。このボタンを押すと、忘れたころに「淡麗グリーンラベル」の6缶パックが届けられる仕組みだ。淡麗グリーンラベルのプレゼントキャンペーンのために開発されたこのボタンは、外側が木曽ヒノキでできており、顔に近づけるとヒノキの香りがふわっと鼻に抜ける。実際の製品からも、せかせかとした気持ちを落ち着かせたいという思いが伝わってくるようだ。

 ある意味、世の流れに一石を投じるこの企画。キリンビールはなぜこれを始めたのか。デジタルマーケティング部でグリーンラベルの企画を担当している野際陽介さんに話を聞いた。

(追記:2017年5月29日 キリンから、野際さんの肩書きについて指摘があったため修正しました)

 同社がある中野セントラルパークサウスに行くと、「せっかくなら隣の公園でお話ししませんか?」と公園の芝生にシートを敷いてインタビューをすることになった。インタビューまでゆるくしてくるとは、野際さん、できる男だ……!

●きっかけは?

―― 日も傾いてきて、完全に仕事という雰囲気ではありませんが、お話を聞かせていただこうと思います。

野際さん よろしくお願いいたします。

―― まず、作ったきっかけを教えてください。

野際さん もともと、グリーンラベルのブランドって普段仕事や家事を頑張っている方々に愛用していただいているというのが根底にあります。そんなグリーンラベルの提供価値をあらためて伝えるのに、どんな形があるだろうと企画を練っていました。

 その中で、最近の「働き方改革」や配送問題など、世の流れと掛け合わせて考えて、「ゆっくり過ごすのもいいんじゃない?」ということをお客さまに伝えられるのがいいのではないか、ということでスローボタンの企画が生まれました。

―― ボタンを押すと発注できるという仕組みは、他の通信販売サイトでも先例がありますよね。やはり発想の元ではあったのですか?

野際さん アイデアの元としては「そういうものがあるよね」というのは確かにありました。既存のものを全くそのままなぞっても仕方がないですし、こういった仕組みとグリーンラベルの世界観を掛け合わせるとどうなるか、と考えた結果が「ゆっくり届くボタン」ということです。

 最近はなんでもスピード優先じゃないですか。たまにはちょっと立ち止まって、振り返るというかゆっくり過ごす時間も必要だと思うのです。息抜きがあるからこそ人は頑張れるわけで、ずっと走り続ける、頑張るなんて、人間できないですよね。だから、「ちょっと立ち止まってみようよ」ということを、グリーンラベルのキャンペーンでお客さまに伝えらればと。

●ゆっくりする時間があるから頑張れる

―― 緩急つけるって大事ですもんね。野際さんの普段の働き方にもそういった「スロー」な部分は取り入れられているんですか?

野際さん 日々忙しく働かせていただいておりますが、休む時は休む、働く時は働くとメリハリをつけてます。休みの日にはもちろん休んでいますが、お店に行ってお客さまがどういう製品を手に取っているか見ていますね。お客さまに喜んでいただけるのが僕らにとって一番うれしいことなので、お客さまの興味関心はとても興味深いことです。プライベートでのそういった発見を、普段の仕事に生かしていく、といったスタイルで日々緩急をつけて働けていると思ってます。

 頑張って働いて、お客さまに喜んでもらっても、ゆっくりする時間がないとその達成感も味わえません。ゆっくりして自分を見つめ返せる時間があるから頑張れるし、心の余裕も出てきます。だから日々頑張れて、成長していけるっていうのがあるんじゃないかなと。

―― いくら忙しくても、休憩なくして成長はないと。スローボタンが当たったユーザーにもそのように過ごしてもらいたいですか?

野際さん 本当にもう、ゆっくり待っていていただきたいですね。届くまでの時間も楽しいですし、届いた時のうれしさも違うと思うんです。

 「いついつ届きます!」って商品が来るより、「押した。押したけどいつ来るんだ…… (忘れたころに)あ、なんか来た」って届いた時に、「あー、あれかあれか」ってなるの良くないですか?

 化粧箱にもこだわっていて、結構かわいいデザインにしました。以前のキャンペーンでもお客さまから「かわいい箱が来た」との声をいただいたこともあり、届いた時に喜んでいただけたら幸いです。

●公開からの反応は?

―― キャンペーンサイトを公開してからの反応はどうですか?

野際さん SNS上で見ていて、「ゆっくり届くって斬新、面白いね」という声を多くいただいております。切り株の形に引かれて応募しちゃいましたという人もいて、面白い物を作れて良かったと思ってます。

―― 実際の物を見せていただいて、結構作りにこだわっていますよね。外側もヒノキでしっかり香りもしますし。

野際さん そうですね。上面のロゴもただの印刷ではなく、レーザーで削って凹凸をつけていますし。こういうところで手を抜くと、せっかく当選したお客さまもうれしさが半減してしまうので、質にこだわったものをお送りしたいと心掛けています。

●禁断の質問

―― 「忘れたころに届く」というコンセプトを分かってて聞くのも大変アレなのですが、具体的にいつごろ届くとか決めているのですか?

野際さん それは企業秘密です(笑)。

―― ボタンを押してから3週間後に届くとか?

野際さん いいえ、そんなことないですよ。一応これくらいの期間でやろうというのはありますが、システム的にかっちりそれを決めてしまったら企画として元も子もないので。裏側もスローに管理しています(笑)。

―― 野際さんがゆるすぎて忘れてたら届かないと。

野際さん それは怒られちゃうので、ちゃんといつか届けます(笑)。

 こんな調子で、芝生の上のゆるいインタビューの時間はあっという間に過ぎていった。2人とも話すことに集中してしまって、正座を崩さなかったので2人とも後で足がしびれたのはここだけの秘密だ。

 キリンビールが仕掛けるこんな「スロー」な企画。共感した人は応募してみてはいかがだろうか……と締めたいところなのだが、このキャンペーンは5月21日までで、この記事の掲載タイミング的にキャンペーン期限を過ぎてしまっている。

 筆者が忙しくばたばたしていたのが原因だが、「スローな企画なので」ということでここは1つ。

最終更新:5/29(月) 17:30
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