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プリンタでネイル、どうなの? 記者が体験してきた

5/25(木) 7:10配信

ITmedia ビジネスオンライン

 通販大手の千趣会が、最新ネイルプリンタを使用したジェルネイルサービス「ツメコ」の展開を始めた。ジェルネイルというと、専門のネイルサロンでネイリストが施術するイメージが強く、ハードルが高いように感じる。同社は、それを短時間で手軽にできるネイルプリンタをメーカーと共同開発。美容サロンなどで活用してもらう。新サービスの登場で美容業界はどうなっていくのか。実際にツメコを体験し、手軽さと“わくわく感”を味わった。

【約20秒で絵柄がプリントされる】

●女性が喜ぶサービスを新規事業に

 通常、ジェルネイルの施術には1~2時間はかかる。ネイルアートのデザインによっても手間や時間が左右される。ツメコの場合は、前処理など全ての工程を含めて45分以内。プリンタに指を入れて色や柄を付ける工程に至っては、指5本を約20秒で仕上げる。

 新規事業としてネイルのサービスを考案したのは、千趣会の主要顧客である女性が喜ぶサービスを提供するためだ。通販事業による既存のリソースや強みを生かすことよりも、女性の悩みやニーズをくみ取ることを重視したという。事業開発チームの梅野理佳さんは「自分がネイルサロンに通っていて、技術が人によってバラバラだったり、時間やお金がかかったりすることに不満があった」と話す。

 需要や事業性などを研究した上で、事業化できると判断。海外製のネイルプリンタをヒントに、より性能が高いネイルプリンタの開発を始めた。日本のネイルサロンの技術力は高く、そこに近い水準のジェルネイルをプリンタでも提供する必要がある。ジェルや溶剤も大手メーカーと共同で独自開発した。研究期間も含めると、開発には約3年を要した。

 品質をネイルサロンに近づけるのは簡単ではなかった。ツメコでは、前処理として白や半透明のジェルを塗ってからプリンタで柄を付けていくが、開発当初はインクを載せるプリントの層が翌日には剥がれてしまった。そこで、インクをジェルに吸着させるための溶剤を独自開発。プリントの層とジェルを一体化させることができた。ツメコのジェルネイルは、少なくとも2週間は持つという。

●プラスアルファの美容サービスとして

 店舗への導入が決定しているのは約40台。契約台数の目標として、2017年に150台、2021年に1000台を掲げている。

 導入店舗の多くはヘアサロンだ。カットやパーマなどに追加するプラスアルファのサービスとしてジェルネイルを導入し、新規顧客獲得やサービス向上に役立ててもらう。事業開発チームマネージャーの山田誠さんは、「美容業界では“トータルビューティー”を目指す傾向が強くなっている。美容に関するサービスを総合的に提供するためのアイテムとして、ネイル専門店以外にも提案を広げている」と話す。エステサロンやまつ毛サロンなどにも営業を始めているという。

 ネイルに関する知識や技術がない店舗が多いため、技術的なフォローを手厚くしている。ツメコを導入するためには、トレーナーによる研修を受け、自主練習を積んだ上で、検定に合格することが必要となる。前処理は人の手で行うため、下地の塗り方や器具の使い方などのオペレーションを細かく指導するという。

●“使い分け”で市場拡大へ

 ツメコなら手軽にジェルネイルができるものの、ネイリストの仕事がツメコに置き換わるわけではない。プロのネイリストによる施術とツメコの“使い分け”によって、ネイル市場全体の拡大を目指す。

 ネイルサロンで複雑なデザインのジェルネイルをしようと思うと、5000~1万円前後かかることが多い。ツメコの提供価格は3500円(推奨価格、税別)からとお手ごろ。デザインは300種類以上あり、毎月新作も追加される。そのため、普段からネイルを気軽に楽しむのに適している。一方、パーティーなどの特別な機会には、ネイルサロンで時間をかけて仕上げてもらう。そういった使い分けを提案することで、ジェルネイルの選択肢を増やし、裾野を広げる役割を担う。

 さらに、美容業界以外でも導入を検討する動きがある。例えば、競馬場から女性向けサービスの一環として、着物レンタル店からは着物と同じデザインのネイルを提供するサービスとして、導入の相談があったという。手軽におしゃれを楽しむサービスとして、美容業界の外にも可能性が広がりそうだ。

●魔法のように色が付く

 千趣会東京本社では、導入店舗に対する研修や検定が日々行われている。その場所で、実際にジェルネイルを施してもらった。ジェルネイルは初めての経験だ。

 まずはデザインを選ぶ。デザインは300種類以上。デザイナーやイラストレーターによるデザインもあり、華やかなものから個性的なものまで多彩だ。かなり迷った末、プリンタならではのきめ細かいデザインにしようと、花や鳥が描かれた華やかなデザインを選んだ。

 下地を塗ってもらう前処理では、爪の形をやすりで整え、甘皮を除去した後に、5種類の溶剤やジェルを順番に塗っていく。ベースが白色のデザインを選んだため、柄をプリントする前の段階で、真っ白な爪になった。

 ネイルプリンタでは、5本の指を一度にプリントする。人差し指から小指の4本と、左右逆の手の親指を一緒にセット。爪が上を向くように固定する。爪の大きさは人によって異なるため、固定した指をタブレット端末に映し出して柄の大きさを調整する。そこまで準備したら、いよいよプリントだ。

 プリントが始まると、普通のインクジェットプリンタのようにヘッドが左右に動き、手の上を通過すると爪の部分にインクが噴き付けられる。まるで魔法をかけたみたいに、あっという間に爪の上に柄が浮かび上がってくる。思わず、「わあ、すごい」と声を上げてしまった。最後に、トップジェルを塗って完成だ。

 花と鳥が描かれた細かいデザインが爪を彩っていると、手を見ているだけで楽しい。これならまたやってみたいと思う体験だった。

 普段あまりネイルアートをしない人にとっては、ジェルネイルは「大変」「高い」というイメージがあるが、ヘアサロンなどで手軽にできるならやってみようと思える。店舗にとっても、リース契約の初期費用15万円、利用料月1万円(税別)という少ない投資で始められる。

 千趣会は6月2日~8月31日、新宿マルイアネックス(東京都新宿区)で、ツメコの専門店舗を期間限定オープンする。気軽にジェルネイルを楽しむサービスが広がれば、美容市場の活性化につながるかもしれない。