ここから本文です

折れない心を育む「レジリエンス」高めるには?

5/25(木) 11:10配信

ITmedia ビジネスオンライン

 つらいことがあっても、すぐに立ち直って元気になる。そんな人になれたら……と考えたことがある人は多いだろう。近年、ストレスや逆境を克服する力「レジリエンス」があらためて注目を集めている。6月病を引き起こさないためにも、自分の力を高めて予防することは有効な手段だ。レジリエンスを高めるにはどうしたらいいのだろうか。企業向けにカウンセリングや研修などを手掛ける会社に聞いた。

【その他の画像】

●個人の力を高めるために

 レジリエンスは、「回復力」「復元力」などという意味を表す言葉。メンタルヘルスの分野では、「逆境でも折れない、しなやかな心の強さ」といった意味合いで使われ、長年研究されてきた。特に米国で研究が進んでおり、欧米のグローバル企業が人材育成に取り入れている事例も多い。日本では、東日本大震災以降、心のケアという観点でレジリエンスという言葉がよく聞かれるようになった。

 企業向けに従業員のカウンセリングサービスなどを提供するヒューマン・フロンティア(東京都港区)によると、企業のメンタルヘルス対策としてもレジリエンスに対する関心は高まっている。

 2000年以降、メンタル不調による休職が増加し、現在では長期休職の7割がメンタル不調によるものだという。対策を講じている大企業でも、メンタル不調者の数は高止まりしており、減らない状態にある。

 そのような問題を解決するための方法として、メンタル不調を事前に防ぐ「一次予防」の必要性が認知されつつある。ヒューマン・フロンティアの神沢裕社長は「会社として高ストレス環境をなくすだけでなく、個人のタフネスを高めることも必要になっている。そこまで対処しないと、メンタル不調は減っていかない」と話す。

 同社は、入社3年以内の若手を対象としたレジリエンストレーニングの研修を提供してきたが、16年末に全ての年齢層に対象を拡大。新入社員だけでなく、プレッシャーや責任が重くなる世代にこそ必要だと判断した。

●身に付けるには

 レジリエンスを高めるにはどんな考え方が必要なのか。出来事に対する捉え方は個人の性格が大きな要素となるが、「レジリエンスは後天的に身に付けられる」ものだという。性格を変えるのは簡単なことではないが、自分の性格や特性を自覚して対処することは可能だからだ。

 ヒューマン・フロンティアのトレーニングでは、次の4つの観点で意識や行動を変えていくことで、レジリエンスを引き出す。

<思考> 現実的、楽観的な考え方を育てる

<身体> 呼吸を整え、頭を休める

<行動> 周囲の人と関わりをもつ

<感情> ネガティブ感情を整理し、ポジティブ感情を創造する

 実際のワークでは、状況に対する捉え方を学ぶ。例えば、「仕事で失敗した」といった困難な状況を提示し、「その状況に陥った友達にアドバイスするならどうするか」を考える。友達に対して声をかけると想定すると、自然と前向きな考えが出てくるだろう。それは、困難な状況に陥ったとき、自分自身にかけるべき言葉だ。

 感情については、コントロールするのはハードルが高いと感じるが、まずは手を動かすことから始めるといいという。ポジティブな感情、ネガティブな感情を書き出して整理することで、頭を冷やし、冷静に考えることができるようになる。普段の生活の中でも、1日を振り返る習慣をつけておくことが有効だ。

 思考や感情をコントロールするためには、リラックスしていることや人と話すことも重要な要素。4つの要素が互いに作用していくことで、適応力を育てることができる。

●“根性で耐える”のではない

 誤解してはいけないのが、レジリエンスは“根性で耐える”力ではないということだ。考え方や習慣を変えていくことによって、困難やストレスにしなやかに適応する力を科学的に鍛えるのだ。無理して頑張りすぎることは逆効果になる。

 レジリエンスを身に付けようと意識して取り組めば、考え方や鍛え方も分かってくる。研修を受けた新入社員の参加者から、「配属後につらいことがあったとき、研修内容を思い出して対応できた」という声もあったという。

 また、レジリエンスの考え方が役立つのは、自分自身がストレスを感じたときだけではない。部下が悩んでいたり、失敗したりしたときに、有効なアドバイスをするための材料にもなる。

 一方で、レジリエンスを企業研修に取り入れる際には注意も必要だ。それは、会社から従業員へのメッセージの伝え方。「会社のために自分を鍛えろ」というプレッシャーとして受け取られてしまう危険性もある。そうなると、トレーニングに臨む姿勢が消極的になり、効果は見込めない。まずは担当者がレジリエンスに対する理解を深め、個人のスキルアップをサポートする姿勢を示すなど、適切なメッセージを発信することが必要だ。