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3万円台で6コア/12スレッドCPUが買える時代 Ryzen 5の実力は?

5/25(木) 19:09配信

ITmedia PC USER

 3月にリリースされたRyzen 7は、Intelのハイエンド環境と渡り合うだけのパフォーマンスを見せ、また久しぶりに元気なAMDということで自作PC市場が一気に活性化した。

【ベンチ結果詳細】

 そんなRyzenの第2弾はメインストリーム向けだ。Ryzen 7は4万円以上するハイエンド向けだったが、コア数を抑えた「Ryzen 5」は、3万円前後のCPUとなる。ただし、6C/12T、4C/8Tと、ライバルのCore i5が4コア/4スレッドであるところを、コア/スレッド数で上回ってきた。こちらもパフォーマンスに期待が持てる。

 Ryzen 5の仕様を確認しておこう。

 Ryzen 5は2つの異なるコア数で展開されている。ラインアップの境目はまずRyzen 5 1600と1500Xの間。ここに6C/12Tと4C/8Tの境目がある。また、もう1つ境目があり、1500Xと1400の間でL3キャッシュの容量が16MBから半分の8MBへと引き下げられる。こうした仕様なので、8C/16Tでクロックの違いのみだったRyzen 7よりも用途別の使い分けがしやすいだろう。

 1400についてはコア数が少なければクロックも低く、L3キャッシュも少ないため、TDP 65W枠のなかでもより省電力寄りになるものと見られる。一方、65W枠の中でマルチスレッド性能を求めるなら1600、シングルスレッド性能を求めるなら1500Xと選択を分けられそうだ。1600Xは、TDPよりもパフォーマンス志向で、かつRyzen 7よりも手ごろな製品を求める方に向いている。

 さて、当然だがRyzen 5もSokect AM4であり、Ryzen 7と同様のチップセットと組み合わせることになる。X370、B350、A320といったあたりだ。また、倍率ロックは引き続きフリーとなっているので、X370やB350を用いればオーバークロックもできる。

 CPUクーラーについては、Ryzen 5 1600Xが別売、1600/1500Xは「Waith SPIRE」、1400は「Waith STEALTH」が付属する。Waith SPIREとSTEALTHでは対応するTDPが異なり、特にSTEALTHはTDP 65Wに最適化されたクーラーなので、これを用いたOCではあまりムリはできないだろう。一方、SPIREは95W対応なので、65WのCPUに対して30W程度の余裕がある。なお、Waithクーラーは、冷却性能は別として静音性はかなり満足のいくものだ。

●最適化が進んでRyzenがCoreに肉薄

 それではベンチマークに進もう。今回は前回のRyzen 7の検証に、Ryzen 5の1600Xと1500Xを追加する形で行いたい。つまり8C/16Tに6C/12Tと4C/8Tが追加される形だ。動作クロックなどには多少の違いがあるが、そこさえ考慮すればおよそコア数の違いでパフォーマンスと製品選びの目安が付くだろう。

 ただし、Ryzen環境は現在も日々最適化が進んでおり、AMDからドライバや電力設定、マザーボードメーカーからもBIOSといった具合でアップデートがある。またこれらとは関係なくMicrosoftのWindows 10もCreators Updateの提供が始まった。パフォーマンスは目まぐるしく変わる(と同時に安定性が向上するものもあれば、問題が出たものもある)状況であるので、前回の計測時とは必ずしも同等に比較できないところもあるので多少考慮しつつ見ていただきたい。

 検証環境は上記の表のとおりで、細かな製品は異なるものの、大枠ではRyzen 7時のものと合わせている。マザーボードに関しては、今回、評価キットに含まれるASRockの「Fatal1ty AB350 Gaming K4」を使用した。今回の評価キットは、そもそもCore i5に対してトータルコストでバランスを取りつつどれだけのパフォーマンスなのかを比較できるというものらしい。マザーボードコストをB350チップセット搭載モデルで抑えるという思惑のようだ。とはいえ性能にはそれほど影響が大きくないところであるのでよしとしよう。

 また、メモリはGeILのGEX416GB3200C16DC(PC4-25600 DDR4-3200 8GB×2)が付属した。当初はこれをDDR4-2933で動作させて検証するといった指定だったが、ここでは前回の検証環境に合わせてDDR4-2666設定で動かしている。まあ、RyzenではDDR4-3200まで可能になったようなので、OCメモリを狙ってみるのもアリだ。

 グラフィックスカードは、GPUで見ればRadeon RX 480で合わせたが、前回はリファレンス仕様、今回はSapphireの「NITRO+ Radeon RX 480 8 GB」(11260-07)をベースに、クロックを定格まで落としたものを用いた。SSDや電源などは同じだ。それでは結果を見ていこう。

 なお、いくつかベンチマークで計測できなかったところがあるので、そこはスコアなしとしている。Rise Of The Tomb Raiderの3840×2160ピクセルがRyzen 5 1600Xのみエラーになったり、PCMark 8がRyzen 5 1500Xのみエラーとなったり、これがハードウェアによるものか、アップデートに際して問題が生じているのか切り分けが難しく、解決できなかった。ただ、3DMarkが(もともとエラーが生じやすいのだが……)不安定だったり、別件で検証したCore i7-7700K環境とCreators Update環境も同様に不安定になっていたりと、どちらかと言えばハードウェアではなく環境側の問題のように思える。これについては、アップデートを待つほかないだろう。

CINEBENCH R15

 さて、まずはCINEBENCH R15。マルチスレッド側のCPUテストでのRyzen 5 1600Xは、同じTDP 65WのRyzen 7 1700に対しても一段低い値となるが、一方で動作クロックは高めであるため、コア2つぶんから想像するほどではない。もちろん、高クロックで8コアのRyzen 7 1800Xと比べれば大きく下がるが、意外やパフォーマンスはイケそうだ。当然、4C/8TのCore i7-7700Kと比べても高い。

 一方で4C/8TのRyzen 5 1500Xについては、さらに一段スコアを下げるため、多少見劣りする。ただし、Ryzen 7 1800Xの半分と考えれば妥当だろうか。あるいは少し低い印象がある。Core i7-7700Kよりも低いスコアであり、やはりターゲットとなるのはCore i5となるだろう。

 CPU(Single Core)側は、およそクロック相応だろう。Ryzen 5 1500Xが1600Xを上回っているが、これくらいは誤差の範囲。Intel Coreマイクロアーキテクチャに対して(クロック分を考えても)若干低いあたりといったところだ。

PCMark 8

 PCMark 8では、やはりコア/スレッド数よりもクロック、あるいはIPCなのだろうか。まずRyzen 5 1600Xのスコアを見ると、Ryzen 7 1800Xのものに迫るものが見られる。そして、低クロックのRyzen 7 1700よりも高いスコアを示している。前回指摘したとおり、現状のアプリケーションでは、特定用途でなければ4C/8Tを超えるスレッドを使うことがない。今後の変化を待つしかないだろう。Ryzen 5 1500Xについては、HomeテストがAmazoniaで止まる症状が出て計測できなかった。ただしほかのテスト中のAmazoniaはパスするあたり、原因が分からない。

X265 HD Benchmark

 CPUのスレッド数をフル活用できるアプリケーションであるトランスコードテスト「X265 HD Benchmark」を見てみよう。これもスレッド数から予想できるところで、Ryzen 5 1600XはCore i7-7700Kを超える高いパフォーマンスを見せている。ライバルがCore i5の上位モデルとなるため、こうした用途においてはかなり心強いだろう。ただし、CINEBENCH R15でも若干気になったところだが、Ryzen 5 1500Xはスレッド数とクロックから考えても、8C/16T、6C/12TのRyzenよりも若干低いスコアとなった印象がある。もしかしたら、Disable化されたスペックの部分で、アンバランスなところが生じてしまっているのかもしれない。

3DMark

 3DMarkに関しては、Ryzen 5が特にGraphicsテストにおいてRyzen 7 1800Xの値を上回っている。これは前回計測して以降、最適化が進んだ結果だろうか。それは別として、CPUが影響するPhysics/CPUテストについては、Ryzen 5 1600Xがなかなかよいスコアである一方、Ryzen 5 1500Xはやはり伸び悩んでいる。ここまで見てきた流れと同じと言えば同じだ。

 ただし、3DMarkスコアで見れば今回比較した5つの環境とも同じくらいで、互角と言える。ゲーミングPCを考えるとき、おおよそCore i5程度のパフォーマンスがあれば後はグラフィックスカードの性能に左右されると言われてきたが、今回はすべてCore i5よりもコア/スレッド数が多いわけで、およそグラフィックスカードの性能が引き出せていると言えるのではないだろうか。そうした視点で見ると、Ryzen 5をベースとしたコストバランスのよいゲーミングPCというプランが構想できる。

●Rise Of The Tomb Raider、The Division、Watch Dogs 2

 実際のゲームベンチマークも、最適化が効いているようで、部分的にはRyzen 7 1800X時のスコアよりも高く、Core i7-7700Kとの差が縮まっているのが特徴だ。まずはRise Of The Tomb Raider。1920×1080ピクセルについては多少の差が出ており、しかし最新環境のRyzen 5ではCore i7-7700Kとの差も1fps程度となった。一方で3840×2160ピクセルになるともはや誤差の範囲でしかなく、スコア的にはCore i7-7700Kを上回るものもあった。最小fpsについても同様。ただし、1920×1080ピクセルや2560×1440ピクセルを見る印象では、Ryzenのほうがフレームレートの落ち込みが少ないように見える。

 The Divisionも、Ryzen 7 1800X検証時はわずかにCore i7-7700Kよりも低い値だったのだが、Ryzen 5はどちらもこれを上回っている。とはいえ、そこまで大きく引き離すほどではないので、ほとんど互角と言うところだろう。こうなれば、グラフィックスカードを搭載する前提であれば、Ryzen 5とCore i5で、コストやマザーボード等の魅力で天秤にかければよいと言えそうだ。

 ただし、Rise Of The Tomb RaiderやThe Divisionではよいスコアを見せていたRyzenだが、Watch Dogs 2に関してはまだ最適化できていないようである。こちらも誤差の範囲と言えばそれで済ませる程度ではあるが、平均fpsでは2.5フレーム差が付き、最小fpsもCore i7-7700Kよりもやや低いようである。

●消費電力

 最後に消費電力。AMDからRyzen向けに最適化された電力設定がリリースされているが、この検証では性能を見るためにベンチマーク時は「高パフォーマンス」を、アイドル時の計測には「バランス」を用いている。

 プラットフォームの違い、そしてRyzen 7と5についてもマザーボードが異なるために必ずしも平等な環境での数値ではないが、アイドル時に関しては、まだRyzenのほうがやや高いようだ。ただし、およそ10Wであり、明らかに消費電力が大きかった以前のFXシリーズのようなCPUと比べれば扱いやすい。CINEBENCH R15実行中の最大値でも、やはりRyzenはTDPの数値以上に消費電力が大きいように見える。

 とはいえ、TDP 65Wの3モデルについてはまずまず我慢できる範囲だ。3DMark実行中の最大値については、今回グラフィックスカードがOCモデルのクロックを定格に調整しているため、ここが大きかった可能性もある。現行のRX 480カードの多くがOCモデルということでおよそ300W程度、電源としては600W級のものを用意すれば十分といった目安にはなるだろう。

●6C/12Tの1600Xは価格性能比の1つの答えかもしれない

 ここまでRyzen 5 1600Xおよび1500Xを用いて検証してきたが、レンダリングやエンコードなどの用途では、性能では8C/16TのRyzen 7が引き離すものの、6C/12Tで価格性能比のバランスのよいRyzen 5 1600Xもなかなか捨てがたい。一方で4C/8TのRyzen 5 1500Xに関しては別の用途で活用したい印象がある。

 別の用途という点で、ゲーミングパフォーマンスを見れば、Ryzen 5 1500Xも、より高クロックの1600Xやよりスレッド数の多い1700や1800Xと比べると若干劣るところはあれど、実際のゲームではそこまで大きくは離されない。コストパフォーマンスのよいゲーミングPCを狙うのであれば、1500Xも魅力的と言えるのではないだろうか。CPUで抑えた予算を、グラフィックスカードに割り当てるといったプランもありだ。

 価格については、まだRyzen 5自体、発売間もないためにCore i5と比べて高価であり、Ryzen 5 1600XについてはCore i7-7700Kとさほど変わらない印象もある。もっとも、ベンチマークで見る限りは、Core i7-7700Kにも太刀打ちできているので、そのあたりは予算とCPU意外のパーツの魅力で検討したいところだ。

 チップセットで言えば、X370でもB350でも、A320でもよいのだが、X370を狙うならOCやマルチGPU環境も視野に、B350を選ぶならOCも可能なシングルGPUゲーミングPC、A320なら徹底的にコスト重視のPCなどを構想してみればよいだろう。ほか、Ryzenの場合はOCメモリを選択することが想定されるので、そこがコスト増の要因になるので、予算を組む場合はここを忘れずに。検証した中での印象では、Ryzen 5 1600XをベースにB350マザーボードと、ミドルレンジ~ハイエンドGPUという組み合わせが、万能かつコスパのよいPCになるのではないかと思う。

最終更新:5/25(木) 19:09
ITmedia PC USER