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話題沸騰!劇場アニメ『BLAME!』監督&副監督インタビュー・2

5/25(木) 17:30配信

Stereo Sound ONLINE

 フル3DCGで描かれるハードSF作品『BLAME!』。『シドニアの騎士』などの原作でも知られる弐瓶勉の伝説的な作品で、世界中に熱心なファンがいることでも知られている。その劇場公開が5月20日に始まった。これに合わせ、アニメを制作したポリゴン・ピクチュアズを訪ね、瀬下寛之監督、吉平“Tady”直弘副監督へのインタビューを行なった。ここページではその2をお送りする。

階層都市の3DCGは見えないところも含めて、周囲十数km単位を作った

 おふたりとも、3DCGの世界で長く活躍してきただけに、こうした制作のためのツールは使いやすいものをいくつも開発してきたそうだ。

 手描きでまとめられた設定が決まると、ようやくデジタルでの制作(モデリング)に入る。しかし、後はすべてデジタル作業というわけではない。キャラクターデザインは一度3Dでモデリングされた後で、キャラクターデザイナーが手描きで修正を入れていく。これは3D化によって元の絵のイメージが変わってしまうため。こうした修正を重ねながら元のイメージ通りの3Dキャラクターが出来上がっていく。

 舞台装置とも言える美術も単なる背景画ではなく、3Dでモデリングされる。ここでは、建築物や工業製品の設計に使われるCADソフトを使用しているそうだ。『BLAME!』の世界は、都市が暴走して無限に拡張を続けているというもので、水平方向にも垂直方向にも無限とも思えるような階層が続いている。そんな階層都市によっては場面として必要な部分だけでなく、周囲十数km単位で作り込んでいるとか。

【瀬下監督】「物語に説得力と臨場感を与えるためにも、その世界をそのまま作り上げてしまうことを目指しています。僕自身も、好きな作品では、その世界に足を踏み入れてみたいと思いますし、観客のみなさんにもそう思ってもらえる世界を作りたいのです」

 ちなみに、制作にも深く関わっている原作者の弐瓶勉は、ちょっと常識を超えたスケール感を持っていて、原作のある場面で後ろに見えている構造物がどのくらいの距離にあるのかと聞くと、数kmどころか「数100kmくらい」とケタ違いの数値を言うことが少なくないそうだ。さすがにその規模でモデリングすることはできないが、そのくらいのスケール感を表現できるように、少なくとも水平線の彼方まで見通せるくらいの作り込みはされているという。

 こうしたキャラクターや世界の造形が進む一方で、ドラマとしての制作は脚本作りから、プレスコ(音声の先行収録)による声優による演技の収録が行われる。この段階でいわゆる絵コンテは作っていない。脚本を元に、舞台設定や役者の配置など場面のために必要な情報が書き込まれた台本が制作され、瀬下監督と声優陣の打ち合わせを経て、収録となる。

【瀬下監督】「声優との打ち合わせや収録が一番緊張しますね。声の芝居だけのドラマでどこまで面白いものを作れるか、どこまで観客を世界に引き込めるかが勝負になります」

 出来上がった絵に声を当てていくアフレコと異なり、プレスコでは声優自身の演技のタイミングに合わせて、映像としての構図や動きが作られていく。これが絵コンテ(ストーリーボード)作り。ここは吉平副監督が中心となって、演出スタッフで作業を分担していくそうだ。

【吉平副監督】「場面として完成したものから、画面を切り取っていく作業ですね。そのまま画面にすると膨大なカット数になってしまうので、カットを凝縮してまとめていくといったことも必要で大変な作業です。監督の要求も厳しいですから(笑) とはいえ、スタッフ間での情報やイメージの共有ができていますので、作業の自由度が高く工夫のしがいがあります」

 アニメではその設計図とも言える絵コンテ作りが最初の段階にあるが、瀬下監督はそれに縛られてしまうことを避けたいようだ。まずは場面(シーン)があり、最終的に画面(カット)で構成されていく。そこに至る現実的なプロセスでは制約は可能な限りなくしたいそうだ。

【瀬下監督】「3DCGは我々のアイデンティティと言えるものですが、必要とあらば2Dの作画を交えてもいいと思っています。そのあたりは3DCGに固執せずに柔軟にやっていきたいですね」

 ポリゴン・ピクチュアズの作る作品は、2Dのアニメに近いものだが、その制作手法はかなり異なっていることがわかる。作品というよりもその世界そのものを作り上げ、その中で生まれるドラマを描いていくことで臨場感を高めるのだという。見ている人がその世界に入り込んでみたくなるような世界を持った作品。『BLAME!』の多くの人の想像を超えた世界に、観客もきっと足を踏み入れたくなるはずだ。

(つづく)

取材・文:鳥居一豊

【映画『BLAME!』】
5月20日(土)より全国にて2週間限定公開中
<スタッフ>
●原作/総監修:弐瓶勉
●監督:瀬下寛之
●副監督/CGスーパーバイザー:吉平“Tady”直弘
●脚本:村井さだゆき
●プロダクションデザイナー:田中直哉
●キャラクターデザイナー:森山佑樹
●ディレクター・オブ・フォトグラフィー:片塰満則
●美術監督:滝口比呂志
●色彩設計:野地弘納
●音響監督:岩浪美和
●音楽:菅野祐悟
●主題歌:angela「Calling you」
●音楽制作:キングレコード
●アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
●配給:クロックワークス
●製作:東亜重工動画制作局

<キャスト>霧亥:櫻井孝宏/シボ:花澤香菜/づる:雨宮天/おやっさん:山路和弘/捨造:宮野真守/タエ:洲崎綾/フサタ:島崎信長/アツジ:梶裕貴/統治局:豊崎愛生/サナカン:早見沙織

話題沸騰!劇場アニメ『BLAME!』監督&副監督インタビュー・2

最終更新:5/25(木) 17:30
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