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トウモロコシがスニーカーに変身 広がる農産物の用途

5/25(木) 11:27配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

 米国の穀倉地帯ではサイロが満杯になっている上、今年も豊作が見込まれるため、農家はトウモロコシや大豆の新たな用途を模索している。

 加工食品、飼料、バイオ燃料への旺盛な需要をもってしても、米国や世界における農作物の記録的な供給過剰は解消できていない。大量の収穫とおおむね穏やかな天候が数年続いたためだ。こうした過剰分を販売するために、農家や業界団体は新たに自動車会社や玩具メーカーなどさまざまな顧客を呼び込もうとしている。

 トウモロコシと大豆は数年前からフォード・モーターの座席クッションに利用されている。このほか、スウェーデンの家具販売大手イケアのマットレス、フランスの食品大手ダノンのヨーグルトのカップ、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のスキンケアブランド「オレイ」の保湿製品にも利用されている。

 ドイツのスポーツ用品大手アディダス傘下のリーボックは最近、トウモロコシを利用したスニーカーを発表した。デンマークの玩具会社レゴは今年、穀物をベースにした素材をブロック玩具「レゴ」の型取り材に使うことを考えていると明らかにした。

 業界団体も、工業用や建設用の原材料として石油の代わりに農産物を用いる新たな方法について研究を進めるよう求めている。

 米国のトウモロコシと大豆の1-3月期の在庫は合計103億5000万ブッシェルと、過去最高に膨らんでいる。シカゴ商品取引所(CBOT)の大豆先物相場は1月半ばに比べ10%余り下落した。トウモロコシ価格にも下げ圧力がかかっている。アナリストは南米の豊作が世界の供給過剰に拍車をかけると予想しており、米農務省は3月、国内の農家による今年の大豆の作付面積が過去最高に達する見通しだと明らかにした。

 穀物や油糧種子のさまざまな用途を探るのは新たな動きではない。ポリ乳酸(PLA)と呼ばれるバイオプラスチックの製造を世界で初めて手掛け、今や最大手メーカーとなったネイチャーワークスは1989年、穀物メジャーの米カーギルの研究開発プロジェクトとしてそうしたことを始めた。ただ、農産物の供給過剰が続いていることで多くの農家が多額の負債を抱え、廃業する農家も出ていることから、新たな用途の開拓は一層急務となっている。

 イリノイ州に本拠を置くアルゴ・ジェネシス・ケミカルは最近、道路舗装材、ボール紙、おむつ用粘着テープなどに使用する、大豆を原料とした柔軟性に富む独自のプラスチックを開発した。同社は、こうした化合物は原油価格変動がメーカーに与える影響を緩和できると考えている。

 ネイチャーワークスの広報担当者スティーブ・デービス氏は、バイオプラスチックについて、長期的にプラスチック業界を変化させるとの見方を示し、「大いなる成長の可能性を秘めている」と述べた。

 こうした新製品の消費者は、トウモロコシや大豆の利用を歓迎する可能性がある。多くの消費者はサステナビリティのためにプレミアムを支払う用意がある。企業は、原材料を毎年栽培される作物に切り替えれば、環境への意識が高い「グリーンな」企業だとアピールすることができる。だが研究者の間では、環境への影響全般について意見が分かれている。

 これらの新たな用途は、飼料・アルコール・食料向け農産物の膨大な生産量のごく一部にとどまっている。欧州バイオプラスチック協会によると、世界の農地の約96%が食料・飼料・牧草の栽培に利用されている。2014年にはバイオプラスチック向け作物はわずか0.01%で、天然ゴムと綿花、バイオ燃料向け作物が残りの大半を占めた。

 アイオワ州デモインの商品仲介業者、サミット・コモディティー・ブローカレッジの創業パートナー、トム・フィッツェンマイヤー氏は「トウモロコシのそうした用途は極めて特殊なので関心を持たれるが、真に探し求めているのは50億ブッシェルの需要がある用途だ」と指摘した。

 だが新たな用途開拓を進める関係者は、そうした用途が急拡大する余地があるとみており、米国でエタノールがたどった道を例に挙げた。米農務省によると、1980-81穀物年度(9月~翌年8月)にエタノール生産に使用した米国産トウモロコシは全体の1%未満だった。だが、2015-16穀物年度には38%に相当する52億ブッシェルがバイオ燃料向けに使用された。

 食料安全保障関連グループの一部は、穀物や大豆が工場に送られると、世界の人口増加に応じて必要になる農地が別の目的で使われることになると指摘している。

 オハイオ州で農業を営み全米大豆基金財団(USB)代表を務めるジョン・モッター氏は、今のところ米国の農家は見つけ得るあらゆる買い手を必要としていると述べた。

 また「農民は実業家であり、長期的な視点で考えている」と話し、自身の大型ピックアップトラックの座席に使用されている発泡材料が油糧種子からできていることを誇らしげに語った。

By Benjamin Parkin