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新イベント鈴鹿10hに懸ける挑戦。「50台のフルグリッドを目指す」モビリティランド山下社長インタビュー

5/25(木) 10:20配信

オートスポーツweb

 3月頭に発表された、2018年からの『鈴鹿10時間耐久レース』の開催と、これまでの夏の風物詩、『鈴鹿1000km」の今年限りの終了。駆け足に新しいレースフォーマットへの転換を進めているように見える鈴鹿サーキット。サーキットを運営するモビリティランドの山下晋社長に、その真意と今後について聞いた。

【写真】インターコンチネンタルチャレンジ セパン12時間のスタートシーン

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──『世界的なGTシリーズの統一戦という夢のステージを鈴鹿から発展させていく』をコンセプトとして開催される『鈴鹿10時間耐久レース』ですが、先日のスーパーGT第2戦の開催中、インターコンチネンタルGTチャレンジのポイントが付与されることが発表されました。改めまして、この『鈴鹿10時間耐久レース』の開催に至った経緯を教えて下さい。

山下晋(以下、省略)「10時間耐久レースを始めるに至った出発点としまして、まずは当社のモータースポーツを代表するものは何かというのが出発点でした。鈴鹿サーキットには4輪ではF1、2輪は8耐がありまして、ツインリンクもてぎには2輪はMotoGP、トライアル世界選手権、4輪はWTCCがあります。現在、5つの世界選手権を開催していますが、その5つを眺めてみると、8耐だけが違う構造になっています。他の4イベントは既存の世界選手権を誘致しているという構造ですが、8耐は開催当時から世界選手権としてスタートしたわけではなく、当時の2輪を取り巻く日本の環境であったり、エントラントのみなさんやパーツメーカーのみなさんを含めた周囲の環境から、『こういうレースをやったら参加する人も観る人も面白いと思うんじゃないか』というのでスタートしたイベントなんですね。それが後々、世界選手権になったのです」

「鈴鹿では他にもさまざまなレースを開催していますが、今年で46回目を迎える鈴鹿1000kmは8耐よりも長い期間開催してきた、鈴鹿サーキットにとってはもっとも歴史の長いレースなんです。その鈴鹿1000kmも、開催当時は8耐と同様に、当時の4輪メーカー、エントラント、パーツメーカーの環境の中で、『さまざまなクルマが参加する日本で最長クラスの耐久レース』としてスタートしました。途中で世界選手権のいちカテゴリーになったり、それがまた変わったり、さまざまな変遷を経て今日に至ってきましたが、数年前から鈴鹿サーキットならでは、モビリティランドならではの4輪レースを8耐を参考にできないかなと考えていました」

「今の鈴鹿1000kmはスーパーGTのシリーズの一戦として、ビジネスとしては十分に成立しています。ですので、スーパーGTの一戦を外してまで考えるというのはビジネスとしてはリスクがあります。でも、鈴鹿1000kmの1000kmという距離は、始まった当時はそれなりの長距離レースで、当時は8時間くらい掛かっていましたが、今のスーパーGTでは天候さえ良ければ6時間を切るくらいになってきている。耐久レースである以上、もう少しレースを長くしたいなあと考え始めたんですね」

「ただ、スーパーGTのカテゴリーでやっている以上、今の1000kmでもチームのみなさんには十分に負担になって大変で、タイヤやパーツの問題を考えるとGT500クラスはこれ以上距離を伸ばすのは難しいといいますか、ほとんど不可能に近い。じゃあどうしようと考えている中で、世界的なトレンドを見てみるとGT3というカテゴリーがある。GT3マシンで24時間レースをやっているところもあれば、ブランパンGTシリーズではスプリントと耐久があって、そこにはさまざまなメーカーさんが参加されていて、ワークスに近い形態のチームもあれば、純粋なプライベーターもいらっしゃって、GT3マシンでレースをしている。8耐に近い印象を受けました。そこで、このGT3と鈴鹿1000kmを夏の4輪のお祭りとして融合できないかと考えて、去年、GTAに相談させてもらいました。そこで坂東(正明)代表にSRO代表のステファン・ラテル氏を紹介して頂いて協力を得て、ある程度の大枠で詰めて発表に至りました」

──世界的に盛況のGT3マシンを使用してのレースというよりも、鈴鹿サーキットにあってほしい4輪の耐久レースという出発点からGT3のカテゴリーを選んだということですね。

「そうです。鈴鹿サーキットならではのレースを開催する、というのが出発点で、それはGT3ありきではなかった。その理想に一番適しているカテゴリーが、今現在ではGT3なのかなという順番です。この言葉が適しているのか、こう言ったら乱暴で誤解される方もいるかもしれませんが、要するに『4輪の8耐』を作りたかったわけです。ただ、将来に渡ってGT3がすべてだとは思っているわけではありません。キーワードとしては『より多くのメーカー、より多くのエントラント、より多くのプライベーターが参加できる4輪カテゴリー』のレースをお客様にお楽しみ頂きたいということです」

──先日、リリースが発表されて、インターコンチネンタルGTチャレンジにポイントが付与される一方、スーパーGTとしてのポイントは付かないことになりました。

「我々はまず最初に、10時間耐久レースがポイントを付けなきゃいけない、というところからはスタートしていないんですよ。理想を言えば、日本のGT300クラス、スーパー耐久、ヨーロッパのブランパンシリーズ、GTアジア、IMSA GTに参加されているみなさん、可能な限り多くのGT3カテゴリーのチームのみなさんに参加頂けるようなレギュレーションにしようというのがスタートです。その中で、ポイントについてはどのカテゴリーでも付けられるのなら付いた方がいいとは思います。付けちゃいけないなんで一切思っていません(苦笑)。ただ、ポイントを付けるがために、フォーマットやレギュレーションを歪んだような形になってしまったり、無理が生じるのであれば、特別ポイントにこだわるつもりはありません。できればそれぞれのカテゴリーを開催されている方にご理解を頂いて、将来的にどのカテゴリーでもポイント対象になればいいなと思っています」

──スーパーGT第2戦でエントラント向けの説明会がありましたが、GT300クラスのエントラントの反応をどのように感じていますか?

「今後については簡単なことではないと思っています。エントラントのみなさんからは『おもしろい』『出てみたい』という声をたくさん頂いています。その一方、『出たい。……でもねえ……』とか『誰が(参戦の)お金を出すんだ?』とおっしゃる方もいらっしゃいました(笑)。そこで我々が考えたのが賞金の設定です。鈴鹿10時間耐久では今の日本のモータースポーツではこれまでにないレベルの賞金総額(1億円)を設定しました。勝って賞金を獲るというエントラントさん側のモチベーションにつなげてもらえればと思っています」

──優勝賞金3000万円、各賞も細かく設定されていて、日本のチームでは最大3800万円の賞金が獲得できることになります。

「正直、我々としても総額1億円という賞金は桁違いでございまして(苦笑)、この賞金1億円という金額は来年のこのイベントが頑張ってすべてうまくいった時に、なんとかビジネスとして成り立つレベルなんです。ですので、すべて上手くいかないと赤字ですね。もちろん、それでも賞金はきちんとお支払いしますよ(笑)。新たに取り組むイベントである以上、石橋を叩いて渡るようなものはチャレンジとは言いませんよね。『チャレンジしようよ!』というのが今、スタッフにお願いしているところでございます」

──気になるのは来年の開催時の現実的な参戦台数ですが、海外、そして国内と、それぞれ何台くらいの参戦を見込んでいますか?

「なにせレギュレーションもまだ確定できてない状況で、エントラントのみなさまにもすべてをお伝えできている状況ではないので、現時点で何台という想像はできないですけど、先ほどのエントラントのみなさまの反応や手応えとしては、50台は確実にクリアできるだろうと思っています。50台のフルグリッドでスタートするというのを実現させて、そのフルグリッドの迫力をお客様に体感して頂きたいと思っています」

──使用されるワンメイクタイヤメーカーの選定、2018年スーパーGT鈴鹿大会のカレンダーの調整等、いくつか課題はあるとは思いますが、今の一番の課題はどのような部分になりますでしょうか。

「タイヤに関してはワンメイク化といいますか、コントロールタイヤにせざるを得ない状況です。本来ならば、コントロールタイヤが最善の策だと思っているわけではありません。さまざまなタイヤメーカーさんが戦うコンペティティブな場であってほしいとも思っています。ただ、これだけいろいろなシリーズのクルマが参戦する中で、車種に加えてタイヤも違ってくるとさすがにBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)が成立しない。BoPをきちんと成立させないと、エントラントさんの方でも参戦を迷うことになり、とてもじゃないですけどフルグリッドの50台は集められません。我々としてはフルグリッドになる方を優先させて、そのためにコントロールタイヤを選ぶという考え方です」

「お客様にフルグリッドの迫力を感じていただくため、エントラントが参加しやすいレギュレーションにできるようGTAやSROにご指導頂きながら、協力を得ています。それに合わせてエントラントの負担もありますので、エントラントのみなさまともお話ししながら、もっとも適正な形で実現するというのをこれから詰めていきたい。カレンダーについては鈴鹿1000kmがシリーズから外れるわけですが、まずは我々はスーパーGTのシリーズをやめたいと思っているわけではありません。2018年のスーパーGTは是非、やらせて頂きたい。ただ、今はどの時期に開催されるのかまったく決まっていません」

「鈴鹿1000kmを10時間耐久レースにするという話はモビリティランド/鈴鹿サーキットのわがままですから、我々がスーパーGTの鈴鹿開催をこの時期にしてもらわないと困る、と主張するつもりは毛頭ありません。GTA、メーカ-、各サーキットの方とお話をさせて頂きながら、お客様のことを考えた日程でいつになるかというのはこれからの話になります。その2018年のスーパーGTのスケジュールがまとまってから、その中で鈴鹿10時間耐久レースのご相談をしていくということになるだろうと思います」

「そしてもうひとつ重要なのは、実際にお客様に来て頂かないと始まりませんので、鈴鹿10時間耐久レースの魅力をお客様にどう伝えていくのか。事前のプロモーションがすごく大事だと思っています。日本とヨーロッパとアジア、これだけ多くの国からGT3マシンが集まるのはこの鈴鹿10時間耐久レースだけですので、日本はもちろんですが、ヨーロッパやアジア圏、特にアジア圏からのお客様には鈴鹿、松阪、伊勢などの観光と合わせて自治体と協力してPRに力を入れたいと思っています」

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 昨年6月に就任した山下社長は、モビリティランドの社長としては初めての生え抜きの社長となる。ここ1~2年、鈴鹿サーキットは『SUZUKA Sound of ENGINE』、この『鈴鹿10時間耐久レース』、そして先日には『FIAマスターズ・ヒストリック・フォーミュラ1チャンピオンシップ』のエキシビション開催の発表など、レースファンに向けたサーキット主体での新規イベントの開催が続いている。

 近年の国内モータースポーツは自動車メーカーやプロモーター(主催者)が中心となってイベントが運営されており、現在ではスーパーGTがもっとも盛況を呈している。次の時代に向けたモビリティランド/鈴鹿サーキットの新しい試みは今後の国内モータースポーツにどのような変化をもたらすのか。その大きな試みの中心に、この『鈴鹿10時間耐久レース』がある。

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