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Dropbox Japan新社長、法人向けビジネス拡大の戦略を語る

5/26(金) 7:00配信

アスキー

Dropbox Japanが、法人向けサービス「Dropbox Business」の国内展開強化に関する説明会を開催した。今年1月から代表取締役社長を務める五十嵐光喜氏が出席し、戦略を説明した。
 クラウドストレージサービスのDropbox Japanは5月25日、今年1月から代表取締役社長を務める五十嵐光喜氏が出席し、事業戦略説明会を開催した。すでに「良いモメンタム」を見せている法人向けサービス「Dropbox Business」の展開を、国内でもさらに強化していく。
 

ファイルの同期から「チームの同期」へ、ビジネス市場へ舵を切る
 もともとはコンシューマー向けクラウドストレージサービスとしてスタートしたDropboxだが、近年では法人向けサービスのDropbox Businessも急伸しており、現在では20万社以上、Fortune 500企業の52%が採用している。全ユーザー数(コンシューマーユーザー含む)は5億ユーザーに達するという。
 
 そして今年1月には、「年間売上10億ドル」という大きなマイルストーンの達成も発表している。創業から8年余りでの10億ドル達成は、Salesforce.comやWorkday、Service Nowといったクラウドサービス事業者よりも早いスピードでの成長だ。
 
 説明会に出席した米Dropbox CTOのアディティア・アガーワル氏は、「初期のDropboxではファイルの同期に注力していたが、現在は『チームの同期』に注力している」と語る。つまり、企業内の部門内やプロジェクトチーム内での情報共有を改善することが主眼であり、そのためにテクノロジーやサービスを改善してきた。
 
 昨年3月には、AWS(Amazon S3)からよりスケーラビリティの高い独自設計のクラウドインフラ“Magic Pocket”に移行したほか、昨年7月には企業管理者向けの強力な管理ツール「AdminX」をリリースした。
 
 また今年1月には、新しいチームコラボレーションツールとして「Paper」をリリースしている。これは、テキストだけでなく画像や動画、共有ファイルなどを貼り込んだドキュメントをプロジェクト内で共有し、共同編集できるWebベースのサービスだ。これに加えて、Dropbox Businessのラインアップを2プランから3プランへとリニューアルしている。
 
「マイクロソフトやグーグル、Boxは『エンタープライズITのやり方』」
 しかし、法人向けクラウドストレージ/コンテンツ共有サービスの市場は、競争も激しい。たとえばマイクロソフト、グーグル、Boxといった競合のグローバルベンダーと、この市場のシェアを争うことになる。
 
 五十嵐氏は、Dropbox Businessが顧客に選ばれる理由、つまり競合サービスと比較した場合の「強み」について、次の3つを挙げた。
 
 ひとつは「個々の従業員がストレスなく使いやすいこと」だ。五十嵐氏は、コンシューマー向けサービスとしてスタートしたDropboxでは「当初から使いやすさを追究してきた」と述べる。たとえば、DropboxではWindows、Mac、iOS、Androidのそれぞれでネイティブアプリを用意しており、それぞれのUIに最適化された機能を提供する。「Webベースのアプリとは使い勝手が大きく違う」(五十嵐氏)。
 
 この点に関してはアガーワル氏も、マイクロソフトやグーグル、Boxなどの競合サービスは「従来からのエンタープライズITのやり方」の延長線上にあるものであり、コンシューマー向けサービスからスタートしたDropboxは、それらとは一線を画した「使い勝手の良いサービス」だと強調した。
 
 ちなみにDropbox Businessでは、今年1月に新機能「スマートシンク」を投入している。これは、グループ内で共有されている大量のファイルのうち、実際に使用するものだけをローカルPCに同期する機能で、同期しない(オンラインのみの)ファイルがローカルストレージ容量を無駄に消費することを防ぐ。共有ファイルの多いビジネスユーザーでは特に利便性の高い機能だ。
 
 次は「同期のスピード」だ。クラウドストレージサービスでは複数のデバイス間でファイルの同期処理を行うが、Dropboxではこのスピードを重視しており、たとえばクラウドを介さないLAN同期、同期完了を待たずに動画再生ができるストリーミング同期などの技術を提供している。
 
 同期スピードについて、具体的な他社比較データは公表していないが、五十嵐氏は「特に大きなファイルの同期においては(競合サービスとは)格段の差がある」と述べ、IDCが「業界最高クラス(Best in Class)」のスピードと評価していることを紹介した。
 
 最後は「グローバルなネットワーク」だ。五十嵐氏は「実はDropboxでは、大容量のデータセンター間ネットワークにも大きな投資をしている。これもスピードを考えてのこと」だと語る。このネットワークは当然、日本にも引き込まれている。
 
 五十嵐氏は、ある日本企業で調査したグローバル拠点間でのコンテンツコラボレーション(ファイル共有)の状況を示し、Dropboxによるネットワークへの投資が、特にグローバル展開している企業における拠点間の情報共有を改善するために貢献していると述べた。「大手企業だけでなく、海外企業とコラボレーションする中堅中小企業においても、こうした仕組みが必要になるだろう」(五十嵐氏)。
 
 なお、セキュリティ対策に関しては、「クラウドサービスを提供するうえでは、対策は義務であり、すでに『当たり前』のことになっている」と述べ、そこは競合との差別化ポイントにはならないという認識を示した。SOC2/3、ISO 27001/27018、HIPAA/HITECHなどのコンプライアンス要件を満たすほか、冗長化されたインフラと“ナイン9”のデータ可用性、データ暗号化や2要素認証などの技術を適用している。
 
ビジネス市場におけるフォーカス、「エンドユーザー視点で考える」
 こうした「強み」を持っているにもかかわらず、Dropboxはこれまで、法人向け市場におけるアピールが弱かった。そういう筆者の印象を率直にぶつけてみたところ、五十嵐氏も「たしかにこれまでのアピールは“奥ゆかしい”ものだったのは事実」だと認めた。そこで、今後は市場における「ビジビリティ(存在感)」を高めていきたいという。
 
 日本市場における今後のフォーカスエリアとして、五十嵐氏は「SMB(中堅中小企業)」、「マーケティング/デザイン/セールス(MDS)部門」、そして「ストレージを超えるサービス(=Paper)」の3つを挙げた。
 
 SMB顧客に関しては、まず個々のエンドユーザー(従業員)に使いやすさを実感してもらうことで、社内でのツール検討時にもDropboxを選択してもらうという動きを作っていく。実際、現在の導入顧客のほとんどが、個人ユーザーから広がったものだと五十嵐氏は説明する。
 
 ビジネスユーザーへの訴求を強めるため、今後、ビジネスユーザー向けの「使い方」紹介コンテンツを拡充したり、企業への訪問機会を増やしたりしていくと述べた。「われわれの視点はいつもエンドユーザーにある。企業における使い方、導入事例を、きちんとエンドユーザーにシェアしていきたい」(五十嵐氏)。
 
 次のターゲットであるMDSは、「大容量のファイル」を用いた「チーム内でのやり取り」が多く、「リモートで(社外で)仕事」する機会も発生することから、高速な同期というDropboxの強みが顧客にアピールするという。五十嵐氏は、特に注力する業種としてメディア、建設を挙げ、ABC朝日放送、加賀田組 東京支店といった顧客事例も紹介した。
 
 「建設業では、社内設計部門が作成/修正したCADデータを、建設現場にいるスタッフがすぐに参照したいというニーズがある。ネットワーク状態が不安定な現場でも、Dropboxならばきちんとシンク(同期)する」(五十嵐氏)
 
 最後のPaperについては、「顧客企業の『働き方改革』を支援するため、“ストレージ以上”のものを提供する」一環としてのツールだという。
 
 説明会では、あるプロジェクトを社外協力者と進行するストーリーでデモを披露し、Paperを開いて打ち合わせを開始し、タスクリストを共有して互いに進捗を確認したり、貼り付けられた資料写真を全員がリアルタイムに確認し、そこにコメントを書き込む、といった作業が容易にできることを紹介した。
 
 「たとえば、この打ち合わせを対面でやるとすれば、事前のスケジュール調整やドキュメント作成といった“仕事のための仕事(Work for Work)”が幾つも発生し、それだけで何日も進捗が滞る。Paperを利用することで、この時間を大幅に減らせると考える」(五十嵐氏)
 
 五十嵐氏は最後に、あらためて日本市場で取り組んで行くこととして、「エンドユーザーにきちんと(ビジネスにおいて有効な)使い方を広めていくこと」と「ほかのアプリ/サービスとの連携を進めるためのAPI公開と普及」を挙げた。
 
 
文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

最終更新:5/29(月) 17:35
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