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ボクシングの村田諒太は、WBAのワナにはめられたのか

5/26(金) 8:17配信

ITmedia ビジネスオンライン

 あれから1週間近く経っても、騒動は少しも沈静化する気配がない。

 5月20日に東京、有明コロシアムで行われたWBA(世界ボクシング協会)ミドル級王座決定戦で同級2位の村田諒太(帝拳)が同級1位のアッサン・エンダム(フランス)に判定負け。4Rにダウンを奪い、その後も一方的に攻め込んでいたにもかかわらず、1ー2のスプリットデジション(審判の採点が割れること)で敗れたことで日本だけでなく世界中から「疑惑の判定」として物議を醸している。

【WBAに裏金疑惑が浮上】

 WBAのヒルベルト・ヘスス・メンドサ会長もTwitter上で「チャンピオンシップ委員会にダイレクトリマッチ(再戦)を要求する」と訴えて「公正な採点ができないスポーツに強い怒りと不満の念を禁じ得ない。自分の採点では117ー110で村田が勝っていた。村田と(村田所属の)帝拳、そして日本のボクシングファンにおわびしたい。とんでもない判定が及ぼすダメージをどのように回復させたら良いのか、私は最適な言葉を見つけることができない」と書き添えた。

 しかし、ハッキリと言いたい。WBAという団体はもうこの醜態によって世界的信用を失ってしまった。つまり「死んだ」も同然となったのだ。このようなインチキ団体を取り仕切る会長の再戦要求など村田陣営には耳を傾けてほしくない。しかも、このメンドサ会長にも何を隠そう今回の騒動に“加担”している疑いがある。その背景をひも解いていきたい。

●村田を勝たせたくない裏の力

 この世界戦でジャッジを務めたのは3人。そのうちラウル・カイズ・シニア(米国)が117ー110で村田優勢としたものの、あろうことかグスタボ・パディージャ(パナマ)は116ー111、ヒューバート・アール(カナダ)も115ー112で両者ともにエンダムを支持していた。

 パディージャとアールが「手数の差」でエンダムに軍配を上げたとする見解も出ているが、確かに放ったパンチは村田よりも多かったとはいえ肝心要の有効打数は圧倒的に少なかった。2人は一体何を判定の基準に見ていたのか。もし本当にボクシングを「手数」で優劣を競うスポーツととらえているならば、フルラウンドの中でシャドーボクシングのパンチを数多く放てる選手こそがチャンピオンにふさわしいと考えているのであろう。

 2人が村田の攻勢には目をつぶり、エンダムの勝ちとした理由は別のところにありそうだ。どうやら、この疑惑裁定の裏側には「村田を勝たせたくない裏の力」が働いていたようなのである。

 考えられないような裁定を下した2人のジャッジのうち、パディージャという人物は多くの関係者いわく「真っ黒」のようだ。日本ボクシング界で大きな力を持つ帝拳ジムの本田明彦会長は近年、商業主義に走っていたWBAを批判していたこともあってパナマに本部を置く同団体の関係者からは「厄介者」として見られる傾向が強まっていた。

 パディージャはパナマ国籍でWBA幹部ともズブズブの関係であることを考えれば「帝拳所属の村田に勝たせたくない」という思いが働いたとしても不思議はない。しかも他メディアでも指摘されているように、パディージャは日本人選手(9人)が出場した試合をジャッジしたことがあるが、1人も軍配を上げたことがない「日本嫌いの審判」として業界内ではいわくつきの男だった。

 JBC(日本ボクシングコミッション)の関係者からは「パディージャの父親はパナマに移住してきた日本人移民の安い労働力によって、かつて自身の働いていた工場が潰れて職を奪われた。それ以来『日本人嫌い』となり、息子にもその精神が受け継がれたのではないか」との証言も聞こえてきている。

●怪しいジャッジが下されてしまう危険性

 話はこれだけでは終わらない。エンダム陣営のプロモーターがWBAに大きな影響力を持つ人物であったことも、一部メディアによって明らかになっている。前出の関係者はこうも補足した。

 「この話は紛れもない事実。だから実際に試合前まで、エンダムとのWBA王座決定戦に臨む村田には、多くの関係者から『大丈夫か?』とささやかれていた。判定に持ち込まれる展開になったら、もしかすると極めて怪しいジャッジが下されてしまう危険性があるんじゃないかと指摘されていた。

 しかもエンダムには強力な“後ろ盾”があったのに対し、村田を支援していたのは以前からWBAの運営に疑問を投げかけていた本田さん(帝拳ジム会長)がいた。そういう構図を考えると、村田陣営が『是が非でもKO勝ちを狙いたい』と公言していたことはうなづける。WBAは最初から村田に勝たせたくなかったのだろう」

 さらに「カネ」だ。判定を下したジャッジのパディージャとアール、そして両者の身を預かるWBA本部にはここにきて裏金疑惑が浮上。今回のエンダム勝利には母国であるはずのフランスからも祝福どころかすさまじい数の批判が沸き起こっていて、同国の老舗スポーツ紙『レキップ』が「エンダムの疑惑勝利の裏には陣営による強力な力、そして“potーdeーvin”(一杯のワイン=仏語で『賄賂』の意味)があったと見られても仕方がない」と報じたように複数の仏メディアは賄賂の存在を疑い始めている。

 逆にこのような報道もあった。フランス、パリに本社を置く『ユーロスポーツ』の番組内で同局専属のキャスターは「一部ではエンダム陣営から巨額のカネがジャッジ2人とWBA側に流れたとの情報も飛び交っているが、さすがにそのようなことはないでしょう」と発言。裏金の疑惑を1人のキャスターが放送の中で否定したことで、フランス国内ではネット上で「逆に怪しい」「やっぱりエンダム側はカネをばらまいていたのか」などと書き込まれ、炎上する騒ぎへと発展している。

 もちろんこれらはウワサの域を出ないレベルの話であって真相は分からないし、信じたくはない。しかし仮にエンダム側から「判定になった場合には何とかして勝たせてほしい」と言われ、事前に裏金の受け取りを成功報酬という形で約束されていれば今回のインチキ判定を2人のジャッジが下したことも合点がいく。その2人を管轄しているメンドサ会長にも疑惑の目が向けられるのは仕方がないことだ。

●WBAはやはり「怪しい」

 「メンドサ会長は怪しくないでしょ。再戦指令も出したことだし」と思われた人もいるだろうが、やはり「怪しい」と言わざるを得ない。なぜなら、仮にエンダムと村田の再戦が実現したとしても因縁のリマッチとして大いに盛り上がることで2人のファイトマネーは前回よりも上がり、そこから得る承認料も当然跳ね上がるわけだからWBAも潤う。

 そういうシナリオを描いた上でメンドサ会長は疑惑の判定が今回の世界戦で下された後、自らがジャッジしたポイント数を明かすような前代未聞の行動を起こしたのではないだろうか。「自分は何も悪くない」という姿勢を世にアピールしたかったのかもしれない。帝拳ジムの本田会長がWBAに不信感を抱いていたのも、大いにうなずける。

 村田は日本ボクシング界でビッグマネーが動く、数少ないドル箱選手の1人。そういう意味でも商業主義に走って嫌なウワサが絶えなかったWBAと交わることで、とんでもない結末になってしまう流れを危惧する人物は戦前から複数いた。しかし圧倒的に攻めながらも残念ながら村田がエンダムをKOできなかったことで、WBAという団体のいい加減な運営スタイルがあらわになってしまったのは間違いない。

 JBCは、今回の「疑惑の判定」についてメンドサ会長に書面を送り、採点結果を再検証して2週間以内に回答するように強く要請した。これでWBA側から納得のいくような回答が得られない限り、村田陣営は再戦に応じる必要はないと思う。

 そうした中、WBAは公式Twitterで25日、メンドサ会長がパナマで会見を開き、あらためてエンダムと村田の再戦を指示したことを伝えた。また、疑惑の判定を下した2人のジャッジについても6カ月の資格停止処分としたことも発表している。とはいえ、ジャッジ2人については「資格取消」でなく「短期間の資格停止」であったことから大甘処分となった感は否めない。

 ちなみに、WBC(世界ボクシング評議会)と、WBO(世界ボクシング機構)からは「公平な戦いをしてほしい」と世界戦のオファーがあったことも本田会長は明かしている。“インチキ裁定”にもめげず真摯(しんし)な態度を貫いて評価を上げた村田の未来は明るく、たとえWBAと決別しても引く手あまただ。

(臼北信行)

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