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「共謀罪」が成立すれば、社会はどう変わるのか~弁護士に聞く(新聞うずみ火)

5/26(金) 6:10配信

アジアプレス・ネットワーク

◆テロ対策のために、わざわざ『共謀罪』を新設する必要なし

「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案が5月23日の衆院本会議で自民・公明両党、日本維新の会などの賛成多数で可決され、衆院を通過した。一般市民は対象になるのか、テロ対策につながるのか。さまざまな疑念について、治安立法に詳しい永嶋靖久弁護士に聞いた。(矢野 宏/新聞うずみ火)

【関連写真を見る】永嶋靖久弁護士は、共謀罪について「刑法の基本原則を否定すること」と指摘する。

組織犯罪処罰法改正案は、東京五輪・パラリンピックを控えたテロ対策の必要性から「テロ等準備罪」を新設するというもの。2人以上が犯罪の計画を相談(共謀)し、その後に準備行為があったら、計画された犯罪が実行されなくても罰せられ、法定刑の長期(上限)が4年以上の刑法全般について計画段階で処罰できるという内容はまさに「共謀罪」そのもの。 

「共謀罪」だと過去3回も廃案になったように、世論の反発を買う。五輪のためのテロ防止と訴えれば支持を得やすいと考えたのだろうが、法案にはテロのための条文はない。
今回は対象となる犯罪の数をこれまでの676から277へと大幅に絞り込んでいるが、その中には誰が見てもテロとは無関係な犯罪が数多く含まれている。

◆1.テロ防止 すでに法整備

そもそも、なぜ「共謀罪」法案が必要なのか。

2000年に国境を超えた組織犯罪に対処するため、国連総会で「国際組織犯罪防止条約」(パレルモ条約)が採択された。政府は、締結するために必要な法整備(共謀罪)が必要だと説明する。

パレルモ条約は法整備を求めてはいるが、立法措置が必要だとは書いていない。永嶋弁護士は「パレルモ条約が採択されたのはアメリカ同時多発テロの前年で、マフィア対策なのです。マネーロンダリング(資金洗浄)や麻薬売買、人身売買などを行う国際的な犯罪集団に対して各国が協力して対応していこうというのが目的」と述べ、「共謀罪」法案がなくても条約の締結ができると主張している。

「もともとマフィア対策として出てきたのがテロ対策に変わるなど、条約本来の目的と違っている。メディアが『テロ等準備罪』という通称を使うことも間違いです」

では、「共謀罪」がなくてもテロ対策は大丈夫なのか。

永嶋弁護士は「テロ対策のために、わざわざ『共謀罪』を新設する必要はない」という。
「日本はテロ防止関連諸条約13本を批准し、これに対応する立法がすでになされています。また、国内法では、爆発物取締罰則、化学兵器、サリン、航空機の強取、銃砲刀剣類所持等取締法など、実際に行動を起こす前の『予備』の段階で処罰することが可能となっており、現在の法律で十分事足りるのです」

4月25日の衆院法務委での参考人質疑に臨んだ京都大大学院の高山佳奈子教授(刑事法)もこう証言している。

「五輪の開催決定の翌14年に改正された『テロ資金提供処罰法』の新しい条文により、テロ目的による資金、土地、建物、物品、役務その他の利益の提供が包括的に処罰の対象に新しくなりました。これでほとんどのテロ目的の行為はカバーできています」

◆2.捜査対象 依然あいまい

共謀罪の法案をめぐる最大の疑念は、一般市民が対象になるか否か。

政府は当初、「組織的犯罪集団」だけが対象で、一般人は関係ないと説明した。組織的犯罪集団について「犯罪をおかすことを目的とする集団」としていたが、「目的が正常でも、一変した段階で一般人であるわけがない」と言い換えるなど、国会での審議を見る限り、組織的犯罪集団の定義があいまいである。

それでも、「犯罪の相談などしないから一般人の自分は関係ない」という声も少なくない。永嶋弁護士は「捜査機関が組織的犯罪集団として認定すれば、処罰対象になる恐れがあります。労働組合や市民団体もその例外ではないということです」と指摘する。決して他人事ではない。

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