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アマゾンのAIから投資指南を受ける日

5/26(金) 11:47配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

 スイスの大手金融機関UBSグループの一部顧客は、経済に関する質問を機械に向かって問いかけることができる。相手は米アマゾン・ドット・コムの人工知能(AI)だ。「アレクサ、FRBの利上げが米国経済に与える影響は?」といった具合に聞けばよい。

 UBSの欧州資産運用部門はアマゾンとの提携により、顧客が金融や経済についての質問をアレクサに聞けるようにした。顧客はフィナンシャルアドバイザーに電話をかけたり、インターネット上でリポートを調べたりしなくても、アレクサ経由でUBS投資部門の考えを聞くことができる。

 しかし今のところ、出来るのはそこまでだ。

 セキュリティーとプライバシーの両面から、UBSの顧客はアレクサ経由で自分のポートフォリオにアクセスしたり、株式の購入や売却をしたりはできない。またアドバイザーへのコンタクトも無理だ。UBSの広報担当は、アレクサとの連動をいかにして顧客にとって安全かつ信用できるものにするか模索中だとしている。

 音声認識やクオンツ分析、AIに至るまで、最先端科学技術を資産運用アドバイスに融合させる動きは緒に就いたばかりだ。しかし、デジタル・ディスラプション(デジタル化による創造的破壊)への機が熟した資産運用業界では、向こう数年以内にテクノロジーがより大きな役割を担うようになるだろう。 

 変化の最初の波は主に、上場投資信託(ETF)の自動ポートフォリオ管理を提供してくれるロボアドバイザーが中心だった。そうした自動および半自動投資サービスの台頭を率いていたのは、2010年創業のベターメントをはじめとする新興企業だ。

 またバンガードやチャールズ・シュワブなどの大手資産運用会社のほか、メリルリンチやウェルズ・ファーゴ、UBSといった金融機関も、顧客向けの自動サービスを導入もしくはテストしている。

 そう遠くない将来、資産運用会社は、より日常的な業務の自動化を望むはずだ。例えば、予約の管理やポートフォリオに関する顧客からの基本的な質問への回答などだ。AIはやがて、顧客がアドバイザーに電話をかけてくるタイミングを学習し、それに先回りして電話するよう担当者に言ってくるようになるかもしれない。最も画期的なテクノロジーを使えば、複雑な業務に取り組むバーチャルなフィナンシャルアドバイザーが数多く生まれる可能性もある。こうしたAIアドバイザーは顧客ごとの傾向を学習し、個々人に合わせた資産運用のゴールを設定したりしてくれる。

 調査会社アイテ・グループのシニアアナリスト、デニス・バレンティン氏は、こうしたことが実現できればフィナンシャルアドバイザーの負担が減り、彼らは一段と価値の高い仕事に集中できるようになると語る。

 ただ資産運用会社側は、個人的な金融情報の詳細にAIがアクセスすることを顧客がすんなり受け入れるかどうか、まだ確信が持てずにいる。サイバー攻撃への脅威が高まっている状況ではなおさらだ。

 また、顧客が離婚や相場の悪化など大きな環境の変化に直面した時、人間より機械を話し相手にしたいかどうかにも一部で懐疑的な見方がある。

 「人は誰かとつながりたいものだ」。調査会社セルリ・アソシエイツのディレクター、スコット・スミス氏はこう語る。

 ロボアドバイザー企業のウェルスフロントは予測解析をサービスに組み込んでいるが、完全な自動化がすべての顧客に適しているわけではないと認めている。個人的なつながりを好む人はまだ多いのだ。

 同社のアンディ・ラクレフ最高経営責任者(CEO)によると、機械学習を使ったサービスは生身のアドバイザーとは話したがらない「デジタルネイティブ」世代が大半を占める若い顧客とつながるための手段だという。

 ただラクレフ氏は、若い顧客にとって人間のアドバイザーが重要でないのは、人間的な接触だけが理由ではないと語る。「人間のアドバイザーが遂行する業務において、ソフトウェアの方がはるかに良い仕事をするのは実際よくあることなのだ」

By VERONICA DAGHER