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「地味すぎる」のにヒット連発、中公新書の快進撃

5/27(土) 10:11配信

BuzzFeed Japan

ヒーロー不在の『応仁の乱』で37万部超

地味、硬い、文字が多い--。この時代に「売れない」要素そろい踏みの、中公新書の売れ行きが絶好調である。『応仁の乱』の37万5000部(5月25日現在)は出版界最大の話題だ。編集長が語る新書というメディアのあり方とは。【石戸諭 / BuzzFeed Japan】

クオリティの高い原稿×メディア効果×話題の広告

「中公新書は数多くある新書のなかで”極北”だと思っています。昔ながらの新書ですね。つまり第一人者が、大きなテーマを、じっくり書く」

中公新書の白戸直人編集長はそう語る。

企画から完成、出版まで平均して2年から3年、長い人だと10年近くかかるときもあるという。

白戸さんは2011年から編集長を務める。

この間、増田寛也さん編『地方消滅』の約23万部、吉川洋さん『人口と日本経済』の約10万部など時代を切り取るようなヒット作がでた。

極めつけが呉座勇一さんの『応仁の乱』だ。
幕末や戦国時代ならいざしらず、「売れない」が常識だった日本中世史で、あまりにも地味な応仁の乱を正面から描き、話題をさらった。

2016年10月に出版され、年末までに6万8000部に達した。売り上げがぐっと伸びたのは2017年に入ってからだ。

新聞書評、NHKニュースで取り上げられ、社会現象といっていい部数にまで膨らんだ。

「売れた理由ですか。うーん、それなりの手応えはありましたが、ここまで売れるとは思っていなかったので……。担当もうまく答えられないんですけどねぇ(笑)」

「まず何より第一人者、しかも1980年生まれという若い筆者にクオリティの高い原稿を書いていただいたこと。取り上げてもらったメディアの効果、新聞広告の影響も大きいですね」

「スター不在」「地味すぎる大乱」「知名度はバツグンなだけにかえって残念」。そんな文言を使った新聞広告もインターネット上で話題になった。

「売れない」要素こそ長所

もっとも、広告が良くても中身が伴わないと読者はついてこない。ヒットの背景にはもう一つ、共通する大きな理由がある。

ポイントは冒頭にあげた「売れない」要素はすべて、中公新書の長所になっていることだ。

地味なのは、昔ながらの伝統である深緑の表紙が印象的だから。
硬いのは、その道の第一人者に執筆を依頼するから。
文字が多いのは、大きなテーマをじっくり書いてもらっているから。
ちなみにここでいう第一人者とは、必ずしもベテランだけではない。新しい視点を持っている若手も含まれる。実力がある、と判断すれば20代であっても声をかける。

編集者は原稿を受け取り、「大学1年生が辞書なしで読めるレベル」の文章になっているかチェックを入れる。

やり取りには当然ながら、時間と手間暇がかかる。刊行予定が後ろにズレていくのも、やむなし。

『応仁の乱』ヒットの背景にあるのは、こうしたマジメな本作りという「基礎」だ。

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最終更新:5/27(土) 10:11
BuzzFeed Japan

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