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犯罪被害者に継続的な支えを 長女殺害された木浦さん 地元佐世保市の条例制定に期待

5/27(土) 9:19配信

長崎新聞

 佐世保市が長崎県内初の犯罪被害者支援の条例制定に向け準備を進めている。市内に住む木浦みゆきさん(57)は4年前、福岡市で起きた殺人事件で、長女の理紗さん=当時(28)=を亡くした。自らの体験を踏まえ「地元で継続的に支えていく仕組みがほしい」と思いを語る。

 2013年1月31日午前3時ごろ。自宅の電話が鳴った。福岡県警早良署からだった。「娘さんが事件に遭われました。署に来てください」。刑事の声の様子から深刻な事態だと察した。とにかく福岡へ向かったが、娘の携帯電話を鳴らすことは怖くてできなかった。

 不安を抱えたまま到着した署の一室で、事件のあらましについて一から説明を受けた。しかしなかなか核心部分を言ってくれない。もどかしくなって途中で詰め寄った。「娘は死んだんですか」。署員は「すみません」と、頭を下げた。霊安室で理紗さんと対面。頭に折り曲げたさらしを当て、顔の上には白い布をかぶせられていた。「まさか娘がこんなことに」。涙が止まらなかった。

 理紗さんは福岡市内の自宅で、友人の夫から包丁で首や頭を刺されるなどして死亡。離婚話の仲介に入っていた。みゆきさんは事件になるまで何も知らなかった。

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 葬儀を終え、仏前で涙を流す日々が続いた。悲しみや憎しみでしばらくは何もできなかった。事件について口にするのも嫌だった。誰かに支援を求めるなんて考えもしなかった。

 事件から約1カ月後に介護の仕事に復帰。事件のことばかり考えることはなくなったが、ふとした瞬間に頭をよぎり、涙があふれた。メールやプレゼントをくれた母の日など、これまでの思い出がよみがえり、胸が張り裂けそうになった。

 遠方の親戚には時折電話して悩みを打ち明けた。ただ、紹介された心療内科ではうまく相談できず、一度行ったきりだった。処方された精神安定剤は飲む回数を減らす努力をして、半年ほど前にようやく服用をやめた。みゆきさんは「発生当初から寄り添ってくれる人がいてくれたら、少しは違ったかもしれない」と打ち明ける。

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 事件が起きると、いつも直後は注目が集まるが、しばらくすると話題にすら上らなくなる。かつては自分もそうだった。でも今は思う。「いつ誰が犯罪の被害に遭うか分からない」

 条例ができることできめ細かいカウンセリングの実現に期待を寄せる。ただ遺族や被害者はそれぞれ状況が異なる。「どんな事件にも被害者がいて、その人に合った支援が必要。形だけの条例にならないようにしてほしい。そして被害者支援の取り組みに対し世間の関心が高まるきっかけになってほしい」。そう願っている。

長崎新聞社

最終更新:5/27(土) 9:19
長崎新聞