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Mrs. GREEN APPLE、瞬間を大切に音を鳴らす 真の魅力を見せたツアー最終

5/27(土) 11:31配信

MusicVoice

 【レポート】5人組ロックバンドMrs. GREEN APPLEが5月19日、東京国際フォーラム ホールAで全国ツアー『MGA MEET YOU TOUR』の最終公演を行った。彼らは1月11日にセルフタイトルの2ndアルバム『Mrs. GREEN APPLE』を発売。同アルバムを携え、ライブハウスとホールを合わせて20公演をまわる同ツアーを開催した。ツアーファイナルとなった本公演は、アコースティックでしっとり聴かせる一方、ダンスチューンでオーディエンスを踊らせたり、シンガロングで盛り上がったりと、彼らの幅広い音楽性が十分に発揮された内容だった。バンドとして初めてホールツアーも経験した今回の旅。その最終地の模様を以下にレポートする。

■瞬間を大切にして音楽を鳴らす

 会場が暗くなると、宇宙の果てしなさを思わせる壮大なBGMが流れて、客席からは手拍子が起きる。「友だちの域を越えられない」という片思いの気持ちをのせた「Just a Friend」のイントロとともに、メンバーが手を挙げて登場した。「最高の日にしようぜ!」と大森元貴(Vo.Gt)の言葉でライブはスタート。ステージはまぶしいほどの照明に照らされ、会場の熱はどんどん高まっていく。そしてオーディエンスにジャンプを促し、「人を愛することとは」と問いかけるポップな「HeLLo」へ。さらに最新アルバム『Mrs. GREEN APPLE』のオープニング曲「Lion」や「おもちゃの兵隊」をプレイし、山中綾華(Dr)が繰り出す重厚なドラムが響き渡り3rdシングルに収録されている「ツキマシテハ」に。大森のギターが溜めこんだ感情を切り裂くようにかき鳴らされる。

 会場の広々とした空間を見渡し「涼ちゃんどうですか?この景色は」という大森の問いかけに藤澤涼架(Key)は「ヤバいね!」と興奮気味に応える。そして映画『ポエトリーエンジェル』の主題歌であり、青春の輝きとはかなさの両面を歌う「soFt-dRink」を演奏。浮遊感のある曲にオーディエンスはゆったり身をゆだねていた。間奏で山中のドラムと高野清宗(Ba)のベースが重なり合って、切ない雰囲気が深まった。

 続いてオズの魔法使いをモチーフにした「Oz」。大森のボーカルにAuto-Tuneがかかっていて、ゲーム音楽を連想させるポップなナンバーである。大森はリズムに合わせてテクテクとステージを歩く。さらに途中で大森と藤澤は一緒にダンスを踊り、最後は若井がポーズを決めて締めくくるなど、楽し気な空気が会場を包んだ。

 そんな雰囲気から一変、水の中を漂っているようなアンビエントな音が聞こえてくる。つらい環境の中にいても自分の生命を輝かせる、というメッセージを届ける「鯨の唄」だ。若井滉斗(Gt)が奏でる涙を誘うギターソロ、そして大森のボーカルは感情を爆発させてさらけ出すように演奏し、彼らの音に対するこだわりが隅々まで行き届いていることを感じた。

 大森が「涼ちゃんと1曲アコースティックでやってもよろしいでしょうか?」というと客席からは大きな歓声が上がった。「しっとりした曲なので、座って。聴いてください。『我逢人』」。天井からは星が連なったような照明が降りてきて、ステージを柔らかく照らす。曲の途中から藤澤のキーボードの横に移動して歌う大森。お互いの呼吸を大事にすることはもちろん、会場の空気を繊細に感じながら演奏に転化させている2人。静かながら強烈な吸引力にひかれて、オーディエンスもグーッと曲の世界観の中に吸い込まれる様子だった。彼らが、この瞬間を大切にして音楽を鳴らしているのがよく分かる一幕だった。

 「ホールなんでスペシャルな感じで5人でもアコースティックやってもいいですか?」と大森は再び問いかけ、カホンやアコギが加わり「Hug」を披露。ステージ中央に向かって円になって演奏する彼らの様子は、まるでスタジオでのセッションを見ているように、5人が心から音楽を楽しんでいることが深く伝わってくるシーンだった。

■楽曲の振り幅の広さが真の魅力

 アコースティックコーナーが終わり、大森はライブが折り返し視点であることを告げた。そこでもっとラフに楽しむために、藤澤はチーム対抗で声出しを提案。客席をメンバーごとに分けて、どのグループが大きな声を出せるか勝負をすることに。皆同じくらいに熱かったため、大森は「次は男子、女子といくからね! 男子!」と呼びかけると「イエーイ」と太い歓声が起きた。しかし「ちょっと待って。男子、これからくる女子がやべえから」と言って女子に呼びかけると、よりパワフルな歓声が上がってメンバーは大爆笑する。

 最後に全員で声を合わせて、スモークが一斉に上がり「VIP」のイントロが流れる。大森の声にAuto-Tuneをかけた「うブ」では会場はダンスフロアと化す。先ほどアコースティックでじっくり聴かせたのとまったく違うテンションの高さ。この振り幅の広さがMrs. GREEN APPLEの魅力だろう。

 すっかり会場は熱を帯びていたが、さらに盛り上げるため「次の曲はいっせいに、僕ら5人も含めてパリピになりたいと思っているんですが、どうですか東京!?」と煽り、「ちなみに新曲です!」とこれまで以上にゴリゴリのEDM「WHOO WHOO WHOO」。大森は赤いライトを持って客席の通路を歩き、会場のボルテージはマックスに達する。

 そしてSNSに頼らず直接話してみてよ、と投げかける「Speaking」でオーディエンスは自分たちの思いを開放して全力で歌う。キラキラした笑顔が満ちた客席。この光景こそ、メンバーにとって誇りと呼べるのかもしれない。

 スタッフによってカラフルなビーチボールが次々にステージに運ばれる。オーディエンスがウォーミングアップできるようにクロール、フラダンスとレクチャーして始まったのは夏の楽しさをつめこんだ「サママ・フェスティバル!」。藤澤と若井はステージに置かれた台に立って、ギターとキーボードの掛け合いを見せた。

 「本当にあっという間でした」。本編最後に演奏された「JOURNEY」ではこれまでのツアーの様子と今のステージの映像が映る。一つの旅を終えた彼らの充実した日々が伝わってきた。

■藤澤(Key)のバースデーでサプライズ

 本編を終えると、アンコールを求める拍手が会場に鳴り響く。すると途中からハッピーバースデーの歌唱が起きた。実は5月19日は藤澤の誕生日。オーディエンスの声に応えてメンバーが再び登場する。そのまま曲に入ろうとしたため、客席は一瞬「あれ?」と拍子抜けする。しかしメンバーが演奏したのは次の曲ではなく、ハッピーバースデーソング。

 このタイミングを予想していなかったのか藤澤は「すぐ曲やるって言ったじゃん!」と驚きながらも喜んだ。ステージ中央に運ばれてきたケーキは鍵盤のデザイン。皆に祝福された藤澤は「24歳の1年間のうちにやりたいことをいっぱいやって、もっともっと面白いことできたらいいなと思っています」と24歳になった抱負を述べた。

 映画と毎日放送のドラマ『笑う招き猫』の主題歌である、最新シングル「どこかで日は昇る」を披露してから、メンバーは今回のツアーを振り返る。藤澤はホールツアーを回るにあたって、会場に着くと中学生のときにやっていた吹奏楽部の大会や演奏会を思い出したと話した。

 そのときは自分のやりたいステージはこれなのかとずっとモヤモヤしていて、ステージが怖い部分もあったという。藤澤は「ライブ始まると全然そんなこと関係なくて。やっぱりすごく自分自身が、今この瞬間をただ、ただ楽しめているな、と思うし、やっぱり来てくれているみんなにも届いているな、っていうのも実感できるライブができているなと思って」とその気持ちを語った。

 ライブの途中で、彼らは今この瞬間を大事にしていると感じる場面が何回もあったが、彼ら自身もそう感じていたということが藤澤の言葉で改めて分かった気がした。ラストは藤澤のフルートが響く「庶幾の唄」。今が楽しいという感情を尊び、明日の平穏を願う歌が最後を飾る。

 1つのライブが終わると、ついつい「次は」と言いたくなってしまうものだ。しかし、今回は彼らが大きなものを乗り越えた手ごたえをともに喜び、余韻にひたりたくなる。そんな幸福感に満ちたライブだった。

※高野清宗の「高」は正しくは旧字体。

(取材=桂泉晴名)

最終更新:5/27(土) 11:31
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