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プラズマの系譜――パナソニックの4K有機ELテレビ「EZ1000」と「EZ950」の違いとは?

5/28(日) 12:10配信

ITmedia LifeStyle

 1月に東芝「X910」シリーズ、そして先月はLGエレクトロニクス「W7P」と、最新有機ELテレビの視聴インプレッションを本欄で記したが、今回は5月の連休明けに発表されたパナソニックの有機ELテレビをチェックしていこう。

サウンドバー部分は本格的な3Way仕様

 まずその前にお詫びと訂正を。先月のLGエレクトロニクス W7Pの記事で、LGディスプレイが開発・製造する「2017年版最新」大画面有機ELパネルを採用したのは、LGエレクトロニクスの新製品のみと記したが、パナソニック、ソニーの新製品も同様の最新パネルが採用されていることが分かった。

 つまり2016年パネルに比して、ピーク輝度で25%アップを果たし、ソニー製有機ELマスターモニター「BVM-X300」と肩を並べる1000nitsのピーク輝度を獲得した最新パネルが、パナソニックとソニーの最新モデルにも採用されているわけである。しかも、このパネルは標準仕様で表面にブラックフィルターがはられ、黒の質感をいっそう高める工夫が施されている。

 では、パナソニックの有機ELテレビについて見ていこう。発表されたのは、65V型の「TH-65EZ1000」と、65V型と55V型の「TH-65/55EZ950」である。先述のようにEZ1000、EZ950ともに明るさ1000nitsの最新パネル採用機だが、ブラックフィルターが貼られたのはEZ1000のみ。EZ1000とEZ950のグレード差(65V型でEZ1000のほうが約10万円高い)を考えて、パナソニックがLGディスプレイに対してそのような仕様違いをオーダーしたようだ。

 EZ1000とEZ950のもう1つの大きな違いはオーディオ系。EZ950は、画面下部にスピーカーを下向きに配置したいわゆるインビジブル・タイプだが、上位機のEZ1000には、ディスプレイを支える構造のサウンドバー・タイプの上向きアンダースピーカーが採用されている。そして同社の高級オーディオ・ブランド「テクニクス」のエンジニアと共同でこのスピーカーと内蔵アンプの音質チューニングを行なったのだそうだ。

 スピーカーはL/R用それぞれに、低音を受け持つ4基のウーファーと中音域用の2基のスコーカー、高域用の1基のツイーターが横並びに配置された本格3Way仕様。バスレフポートではなく、磁気回路を持たないパッシブラジエーターをL/Rそれぞれ2基配置し、容量の小さなキャビネットから量感豊かな低音を引き出そうという設計だ。アンプの出力はそれぞれ40W/20W/20W。

画質エンジンは、EZ1000/EZ950ともに同じものが搭載され、有機ELパネルの特性に最適化したパナソニック独自の高画質回路が盛り込まれてる。考えてみれば、パナソニックは有機ELと同じ自発光デバイスであるプラズマテレビを長年開発してきたわけで、その経験がEZ1000/EZ950の画質エンジンに生かされているのは間違いないだろう。

とくに同社画質エンジニアがこだわったのが階調表現。現行の有機ELパネルは、黒の光り出し(最暗部に近いグレー)部分でやや怪しい挙動を見せる性質があり、そのまま使ったのでは黒ツブレしたり、黒が浮いてしまうのだが、同社技術陣はパネルの挙動に合せて、入出力トーンカーブを時間をかけて追い込んでいったという。

また現行有機ELパネルは、バンディングノイズと呼ばれる階段状のノイズが暗部、明部ともに目立ちやすいのだが、その現象に対しても「暗部階調スムーサー」と呼ばれる信号処理回路と、高輝度域のW(ホワイト)RGB階調補正回路を充てて、ノイズの発生を抑えて滑らかな階調の実現を図っている。

 それから、EZ1000についてはEZ950に比べてガンマカーブの調整ポイントを増やし、自社工場で一品一品丁寧に調整してその精度を上げているという。この一手間をかけることこそが、高級モデルならではの証左といってもいいだろう。また、EZ1000のみ静止画用「フォトプロ」画質モードが用意されているのも、写真を趣味としている人には見逃せないポイントかもしれない。

 またパナソニック・ハリウッドラボ(PHL)が培ってきた米国のメジャー系映画スタジオとの親密な関係を生かし、ポストプロダクションのDeluxeなどに依頼し、映画コンテンツを観るにふさわしい画質知見が盛り込まれたという。また、同時にハリウッドのスタジオからの要望に応じて、3Dルックアップテーブルの開放やキャリブレーション機能などが採用されている。

●浮き上がってくる映像にゾクゾク

 TH-65EZ1000とTH-55EZ950/TH-65EZ950の3モデルを、スタジオのように遮光を徹底した空間で、主にUltra HD Blu-ray(以下、UHD BD)の映画コンテンツを中心に映画用画質モードで確認したが、完全暗黒から映像がフッとスムーズに浮き上がってくる瞬間に、ゾクゾクするような快感を覚えた。これこそ画素1つ1つの振る舞いを制御でき、種火を必要としない自発光デバイス=有機ELならではの魅力だろう。液晶テレビでは、とてもこうはいかない。

 HDR(ハイダイナミックレンジ)仕様のUHD BD「レヴェナント:蘇えりし者」「La La Land」(米国盤)の夜闇に沈むシーンを見たが、さすがに暗部階調の表現は秀逸だった。

 前者の焚き火を前に2人の男がしゃべるシーンや後者のジャズ・クラブの照明が徐々に落ちていくシーンは、階段状のバンディングノイズが目立ちやすいのだが、先述した「暗部階調スムーサー」が的確にはたらいているのだろう、3モデルともにノイズやガタつきがまったく気にならない。

 ピーク輝度の伸び、ハイライトの階調表現も見事だ。「レヴェナント:蘇えりし者」の朝焼けのシーンの雲のグラデーションの表現は非常に滑らかで、さすがパナソニックの最高級テレビと思わせる精妙な階調表現なのである。

 映像調整機能を精査してみると、24fpsの映画コンテンツのフレーム間に黒画面を挿入できる機能を発見したが、APL(平均輝度レベル)の低い場面でこの機能を動かすと、映像のキレが増し、より解像感が上がった印象となった。これは暗室環境で観たいというマニアにはぜひお試しいただきたいテクニックだ。

 まあいすれにしても、この3モデルは当代家庭用大画面テレビの最高峰に位置する高画質モデルであることは間違いないだろう。満を持しての日本市場デビューにふさわしい仕上がりだ。

 さて気になるEZ1000とEZ950の画質差だが、短時間のチェックではそのクオリティーに大きな違いはないという印象だった。確かに表面ブラックフィルターの有り無しで漆黒の艶に微妙な違いが出るのは間違いないが、EZ950だけを見ていれば、黒の質感表現に不満を覚えることはないと思う。

 EZ1000は、先述のように1台1台ガンマカーブの調整ポイントを増やしてその精度を向上させているので、その性能にいっそう安心感を抱くことができる。その安心が得られるのなら10万円余計に出してもいいという方もいらっしゃるに違いない。

 また、音質については大きな差異がある。テクニクス技術陣がチューニングに参画したというだけあって、EZ1000のサウンドはワイドレンジで力強く、声の質感もとても良い。

 しかし、画面下にステレオ・スピーカーがサウンドバーのように横置き配置されているので、音が下から出てくる違和感が非常に大きいのも事実。画面からうーんと離れればその違和感は薄らぐが、そんなに離れて観るのなら高解像度4Kテレビを買った甲斐がないわけで……。

 画面に映し出された人物が、ほんとうにしゃべっている、歌っているという実感が得られるかどうかがAVにおいてもっとも重要と考える筆者は、映像と音像位置が合致しないサウンドバー・タイプを認める気にはならない。欧米では受けないそうだが、やはりこの本格スピーカーは、画面両サイドに配置すべきだと思う。

 EZ950の音は、EZ1000に比べると確かにショボいが、スピーカーユニットが下向き配置されているだけに定位があいまいで、EZ1000よりも画面下から音が聞こえてくる違和感は少ない。テレビのニュースやバラエティ番組を観る分には十分使えるクオリティーだといっていいだろう。

 そう考えると、EZ950を買って、EZ1000との価格差10万円でテレビの両脇に置く質のよい小型スピーカーを購入するというのもうまいやり方ではないかと思う。繰り返し述べるが、EZ1000とEZ950の画質に決定的な差異はないわけだから。

 また65V型と55V型の違いだが、個人的経験を踏まえていわせてもらえば、無理をしてでも65V型を選ぶことをお勧めしたい。部屋に置いた当初は「でかっ!」と思うかもしれないが、ほんの1~2時間でその違和感はなくなるはず。

 そして、UHD BDやNetflixのような良質な4K/HDRコンテンツを65V型の大画面で見る楽しさといったら、もう……である。はっきりいって、低コントラストで暗く、2K解像度が主流の近所のシネコンに出かけるよりも、断然晴々とした気分で映画が楽しめることを太鼓判を押して保証します。

最終更新:5/28(日) 12:10
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