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「北海道版の選手」を卒業したスキージャンプ伊藤有希、平昌で最高の笑顔を!

5/30(火) 16:03配信

スポーツ報知

 「北海道版の選手」-。決してありがたいとは言えない“看板”を、彼女が無事に“卒業”したことが、記者は本当に嬉しかった。

 スポーツ報知には、普段、読者の皆さんが目にする「全国版」の他に、その地域でしか読むことができない「地方版」という紙面が存在する。北海道、東北、静岡のプロスポーツ(北海道なら日本ハムや北海道コンサドーレ札幌、東北なら楽天やベガルタ仙台、静岡なら清水エスパルスやジュビロ磐田)や、高校野球をはじめとするアマチュアスポーツを、全国版以上に詳しく掲載している。

 記者は今年3月末まで北海度支局に4年3か月勤務し、夏場は高校野球、冬場はウインタースポーツの取材に携わってきた。

 スキージャンプ選手の伊藤有希(23)=土屋ホーム=。きっと昨季、多くの皆さんが耳にした名前だろう。今年1月のW杯札幌大会で初優勝を飾ると、来年2月の平昌五輪と同じ会場で行われたW杯平昌大会も制し、年間5勝をマーク。高梨沙羅(20)=クラレ=に次ぐ個人総合2位に入った。

 世界選手権の個人ノーマルヒルでは、高梨を上回る銀メダルを獲得。誰もが知るスポーツ選手となり、平昌五輪のメダル候補として一気にブレイクを果たした。

 冒頭で記した「北海道版の選手」とは、実は2シーズン前までの伊藤のことを指している。国内大会では、毎回と言っていいほど高梨に次ぐ2位。記者は全国版と北海道版の記事がダブらないようにするため、優勝した高梨を全国版へ、2位の伊藤を北海道版へ出稿していた。

 そのため、伊藤の記事が全国版に掲載されたことはほとんどない。もしかしたら、読者の皆さんの中に「伊藤の記事をインターネットで見た」という方がいるかもしれないが、スポーツ報知の新聞紙面としては北海道版のみの掲載ということが多かったはずだ。

 数年前まで全国的に無名だった伊藤だが、北海道では以前から有名なスキージャンプ選手の一人で「スーパー中学生」と言われていた時期もあった。だが、高梨の登場や世界舞台で思うような結果を出せないシーズンが続き(2年前の世界選手権で個人銀メダルを獲得したことはある)、大きな飛躍ができずにいた。

 そんな苦しい時期を乗り越え、昨季、世界の舞台で大活躍。ついに“北海道版の壁”をぶち破り、全国版を華やかに飾った。4年間、身近で取材してきたからこそ、記者も喜びが大きかった。

 伊藤の素顔とは…。取材の時、ハキハキと答える姿が印象深い。「ハッハッハッ」という独特の笑い声も特徴だ。一言で言えば、とにかく底抜けに明るいというのが正しいと思う。

 以前、節分の日に恵方巻きを持ってもらい、「初めて食べます」と笑顔を浮かべる姿を撮影させてもらった。ひな祭りの日に、ひなあられを用意すると「いいですね」とほおばってくれ、違う年には桜餅を食べてくれた。すべて試合後で疲れている中、失礼を承知でお願いしたが、快く引き受けてくれた。報道陣のリクエストに応える姿はスキー部選手兼任監督のレジェンド・葛西紀明(44)の“神対応”を思い起こさせた。

 今年3月、異動にともなう東京への転勤を控えた記者は、最後のスキージャンプ取材を終え、伊藤に異動の話とこれまでの感謝の気持ちを伝えた。「えー!じゃあ今度から誰が桜餅とかを用意してくれるんですか?」。いたずらっぽく笑い、最後は記者と記念撮影に応じてくれた。

 来年はいよいよ平昌五輪が開催される。今月16日から沖縄・宮古島で合宿が始まり、ソチ五輪でかなわなかったメダル獲得へ始動した。東京に異動した記者が取材する機会は無くなってしまったが、伊藤を応援する気持ちは今も変わらずに持ち続けている。平昌五輪で最高の笑顔を-。今から冬の祭典が待ち遠しい。(記者コラム・相川 和寛)

最終更新:5/30(火) 16:03
スポーツ報知