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なぜ経産官僚は働き方改革に危機感を抱くのかーキーパーソンが提唱する「AI格差時代の1億総学び社会」

5/28(日) 7:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

経産省の若手官僚たちがまとめた1通の文書がものすごい勢いで拡散され、話題になっている。「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」。経産省内でなぜ「働き方」や「雇用」に関してこれほどの危機感が募っているのか。

【画像】経済産業省で働き方改革を担う伊藤禎則参事官

「これから『1億総学び社会』が来る。一番大切なのは、生涯学び続けること」

産業政策を担う経済産業省で、働き方改革の中心人物である伊藤禎則参事官は、働き方をめぐる日本のこれからをそう見通す。「不安な個人、立ちすくむ国家」文書をまとめた若手官僚プロジェクトにも相談役として関わってきた、経産省の人材政策の責任者だ。

日本政府が最重要課題に掲げる働き方改革の実行計画が3月にまとまった。そこでは、電通女性社員の過労自殺問題を契機に、世論が一気に高まった「長時間労働是正」が焦点となった。ここからは「働き方改革第2章が始まる」(世耕弘成経産相)という。

「長時間労働是正はドミノ倒しの最初のドミノ」と語る伊藤氏に、過渡期を迎えた日本の働き方を聞いた。

学び続けるべき3つの理由

「一つ目のドミノを倒すことでどんどん別のドミノが倒れていって、最終的にはトータルで新しい日本型雇用モデルをつくっていかなければならない」

伊藤氏は、新卒一括採用に年功序列、終身雇用といった日本型雇用システムの一部が「持続不可能になった」と認めた上で、長時間労働是正に乗り出した働き方改革の行方を、そう言い表す。

「今、日本は大きな変わり目にある。テクノロジーによる第4次産業革命と、人口減少による高齢化・人手不足。大きな波がふたつ来て、新しい雇用モデルを模索している最中だ」

そして、これからの時代のキーワードを「1億総学び社会」だと位置づける。誰もが生涯、学び続けることが求められる社会だ。その理由は大きく3つに集約される。

1. AI到来で生まれる格差

人間の仕事が人工知能にとって代わられるかどうかは近年、世界中で注目のトピックだ。野村総合研究所がイギリス・オックスフォード大学と行った共同研究(2015年)では、10~20年後に日本の労働人口の約49%の職業が人工知能やロボットに代替することが可能との推計結果が出た。

「結論ははっきりしていて、結局のところ『AI対人間』という構図にはならない。むしろ、本質的な構図はAIを利用して付加価値を高める人間と、AIに利用され取って代わられる人間の対立。つまり人間対人間の構図です」

人工知能やIoTがもたらす第4次産業革命の「光と影」については、経産省は有識者を集めた産業構造審議会新産業構造部会で「日本でもっとも詳細に分析した」と伊藤氏はいう。

「AIの登場でなくなる仕事もあるし、新しく生みだされる雇用もある。ハイエンド層(高度技能の仕事)は付加価値を高めていくだろうし、おもてなしなど、人間の相互関係やコミュニケーション分野は(機械に)とって代わられないので残る。しかし(どちらでもない)中間層は影響を受けるだろう」

それを格差と言う人もいるし、伊藤氏も「AIが格差を増大させる可能性はある」という。

影響を受ける中間層の不安にどう対応するかは、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)でも大きな論点としてクローズアップされた。米トランプ政権誕生も、イギリスのEU離脱(ブレグジット)も、中間層の不安と不満が背景にある。

「AIに取って代わられるのではなくて、AIを利用する側に回る必要がある。高度なIT技術者だけでなくて、我々のように普通に働いている人も、AIやデータを使いつつ付加価値を高めることは十分に可能だ」

その鍵となるのが「生涯にわたってスキルをアップしていくこと。教育とリトレーニング」なのだ。

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