ここから本文です

マツダ社長、スズキ会長も駆けつけたシートメーカーのルネッサンス!

5/28(日) 10:20配信

ニュースイッチ

東洋シート、100周年に向けての危機感と自己変革

 東洋シート(広島県海田町、山口徹代表)は、創立70周年の記念式典を広島市で開き、マツダの小飼雅道社長、スズキの鈴木修会長をはじめ取引先など約300人が列席した。

 山口徹代表は「創立100年に向けて、規模を追うよりは“いい会社”になりたい。量から質へ、モノづくりから人づくりへと転換したい」とあいさつ。

 鈴木会長が「ハンガリーに進出した時にシートメーカーが出てきてくれず困っていた。山口清蔵会長にお会いして、とんとん拍子に進んだ」と披露。マツダの小飼社長が「東洋シートさんのモノづくりへの姿勢に敬意を表する」と述べ乾杯の音頭を取った。

<「それはショックだった」>

 「それはショックだった」。そう振り返る山口徹代表が、会社を変えなければと強く思うきっかけとなったのが、マツダが2012年に発売したスポーツ多目的車(SUV)「CX―5」だ。

 マツダ車のシートは長らく、東洋シートと競合するもう1社が供給してきた。CX―5の前身車種は東洋シートが供給。後継新型車も同社が手がけると思われていたが、受注したのは競合先だった。

 さらに、同車を皮切りにマツダが投入した新世代技術「スカイアクティブ」の採用車では、シート機構部品は競合社が受け持つことになった。東洋シートがシートを供給する場合でも機構部品は競合社製を使う。

 「力がおよばなかった」。山口代表はそう認めながらも、着々と巻き返しを図る。小型車「アクセラ」のシートは、着座時に骨盤をしっかり支える座り心地のよさが好評。ぎりぎりまで実験と改良を繰り返すマツダの技術陣の熱意に、東洋シートの社員もねばり強くついていった。

 このねばり強さ、まじめさこそ、東洋シートの最大の強みという。「お客さまからの要求に細かく答えるため、最大限努力するのが当社のやり方」(山口代表)だ。

 他メーカーとの取引拡大にもその社風は生きた。同社にとってマツダに次ぐ大口の取引先がスズキ。ハンガリーに進出していた同社にスズキから声がかかり、合弁会社を設立。スズキのハンガリー工場に向けては同社のハンガリー工場からシートを全量供給する。

 メキシコでは供給責任を果たすためにライバルとも手を組んだ。競合先にマツダも交えて合弁会社「アキシート」を設立して進出した。しかしマツダは「スカイアクティブ」と呼ぶ商品群以降は、調達方法を大きく変更。その他の車メーカーもこぞって調達改革と海外展開を進める中で、自動車シートをめぐる経営環境は厳しい。

<「会社は2020年までもたない」>

 「このまま悪いシナリオで行った場合、会社は20年までもたない」。同社は2015年から2020年までの中期経営計画を推進中。中計策定チームに加わった経営企画室の藤井武志氏は当時を振り返る。

 策定に当たっては、受注が取れず仕事が減る悪いシナリオと、受注を積極的に増やす良いシナリオの2パターンをシミュレーションした。悪いシナリオでは売上高、利益とも落ち込みが大きく、目標とする「1世紀経営」が実現できないことが分かったという。

 そこで中計には、良いシナリオを実現するための施策を盛り込んだ。技術面では、車メーカーの要求を満たすことを主眼とする従来の姿勢から踏み込み、シートに座る最終ユーザーの満足度を高めるため、基礎研究を強化する。

 「“座る”とはどうあるべきかなどの研究を通じ、東洋シートならではの独自性を追求する」(藤井氏)。将来は医療福祉分野のような自動車以外の新事業の創出につなげたいという。

 海外の体制も強化する。米国、中国、フィリピン、ハンガリー、メキシコ、インドと6カ国に生産子会社があるが、客先の求めに応じ随時進出してきた。

 ただ現地の新規顧客へ営業活動をしたり、海外工場間で部品を融通したりといった柔軟な体制になっていない。これを見直し、国や顧客の事情に合った最適な体制を作る。欧米での営業力強化や、新興国での生産強化が焦点になる。

 一連の取り組みで「晴れコース」と呼ぶ良いシナリオを実現。社員満足度・顧客満足度向上とともに、最終年度の20年12月期には売上高800億円、経常利益率5%を目指す。

 もともと同社は、目の前の仕事に全力投球して顧客の要求に応えることを重要視する社風。中期経営計画や、そのベースとして策定した中期ビジョンなどは作ったことがなかった。

 ビジョンは「互いに成長する喜びを知り、世界で愛されるチームになる」ー。広島には同社のような有力オーナー企業が多く自己改革の試みは注目を集めそうだ。

最終更新:5/28(日) 10:20
ニュースイッチ