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宇宙に広がる“産業の星”つかめ、日本政府が打ち上げた2兆4000億円市場戦略

5/28(日) 12:00配信

日刊工業新聞電子版

■新ビジョン、4本の柱提示

 新型ロケット開発や衛星測位システム(GNSS)の産業利用など宇宙開発の機運が高まってきた。政府は宇宙産業利用の拡大を目指した「宇宙産業ビジョン2030」を策定し、日本の宇宙開発力を生かして国内外で宇宙ビジネスの展開を目指す。準天頂衛星「みちびき」の2018年度からの本格稼働、民間ロケット打ち上げや衛星画像の取り扱いなどを決めた宇宙関連2法の成立など、宇宙産業振興の基盤も整ってきた。

 宇宙の産業利用では従来の欧米日に加え、中国、インド、韓国など新興国が台頭。中国はすでに有人飛行に成功し、宇宙ステーションの建設構想を推進する方針を打ち出している。インドも1月に1機のロケットで史上最多の103機の人工衛星を軌道投入して世界を驚かせた。

 日本も宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心に基幹ロケット「H2A」や世界で初めて小惑星に着陸して帰還した「はやぶさ」など先進的実績を積み上げている。しかし産業化や民間との連携はまだ十分とはいえない。政府は新たなビジョンの策定で研究開発だけでなく制度や法の整備、人材育成まで包括的に推進し、激しさを増す宇宙開発競争に打ち勝つ構えだ。

 新たなビジョンは「宇宙利用産業」「宇宙機器産業」「海外展開」「新たな宇宙ビジネスを見据えた環境整備」の四つの柱で構成。宇宙産業を政府が目指すスマート社会「ソサエティー5・0」の実現に向けた駆動力と位置付け、他の産業と結びつけた新たな成長産業の創出を狙う。

 ビッグデータや人工知能(AI)、IoTなどを組み合わせ、ロケットや衛星の小型化など低コスト化も進めて宇宙利用の裾野を拡大。30年代早期にも日本の宇宙産業市場を2兆4000億円程度と現在の規模から倍増させることを目指す。

■衛星データ利用環境を整備

 宇宙分野の産業利用として注目される衛星関連分野は、衛星データの入手経路が分かりにくい点や衛星データを利用したビジネスの立ち上がりの遅れといった課題がある。

 そこで衛星データへのアクセス改善のためデータの種類や保存場所などの一覧化、データ利用拠点の整備などを推進。同時にデータの利活用促進のため、政府衛星データを利用しやすい環境の整備を打ち出した。AI、ビッグデータの解析とその人材の活用、潜在ユーザーである省庁・自治体などと連携し利用拡大と産業化を図る。

 また、「宇宙の利活用で国際的に先駆的な立場にある」(内閣府)というみちびきは数センチメートルレベルの精度の測位能力を生かし、気象や防災、土地利用、海洋資源、交通分野などで活用を進める。

 すでに自動車や農業トラクターの自動走行、飛行ロボット(ドローン)の自立飛行などの実現を目指した実証実験が企業や大学などを中心に進行中。今後はリモートセンシング衛星やみちびきのデータと地上データを統合した新たな活用手法を創出する。

 人工衛星やロケット、地上設備などを製造する「宇宙機器産業」の国際競争力確保には、市場ニーズに応じた継続的な衛星開発や新型基幹ロケット「H3」の開発・推進などが不可欠。

 H3は現行の「H2A」の半額の50億円程度での打ち上げや、製造期間や打ち上げ間隔の短縮などを進める。米国で活発な宇宙機器産業への新規参入支援も重要項目の一つ。小型ロケット打ち上げ用の射場整備について、指針の整備や小型ロケットベンチャーの動向など市場動向を調査し、施策に反映していく。

 欧米を筆頭に強力なライバルがひしめく海外市場の攻略では、政府横断の組織「経協インフラ戦略会議」と連携。宇宙関連機器やサービス、人材育成などとパッケージ化を図るとともに、国際連携を進めてみちびきによる数センチメートルレベルの高精度測位サービスをアジアやオセアニアに展開する。

 またGNSSに関して、日本は3月に測位衛星「ガリレオ」を擁する欧州との協力取り決めに署名している。内閣府宇宙開発戦略推進事務局の高田修三事務局長は「産業の国際競争力向上に結び付く」と大きな期待をかける。連携の輪が広がれば、国際展開も加速していきそうだ。

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