ここから本文です

俳優・市村正親さん、蜷川さんを語る 一周忌公演で主演「魂を心に」

5/28(日) 10:30配信

埼玉新聞

 2人は「ニーナ」「いっちゃん」と呼び合う仲だった。埼玉県川口市出身の世界的演出家、蜷川幸雄さん(享年80歳)が亡くなって1年がたった。一周忌追悼公演「NINAGAWA・マクベス」が、6月の香港を皮切りに埼玉、英国、シンガポールで上演される。マクベス役として出演する川越市出身の俳優市村正親さん(68)は「蜷川さんの魂を心の中に焼きつけて行ってきます」と語る。また、「川越まつり」が舞台人生の原点にあると「川越っ子」の一面も明かした。

■「ニーナ」への思い

 「NINAGAWA~」はシェークスピアの「マクベス」のせりふ、人物設定はそのままに舞台を日本の安土桃山時代に移した作品。英国などで高く評価され「世界のNINAGAWA」と呼ばれるきっかけをつくった伝説的舞台だ。

 2015年、17年ぶりに上演された際に市村さんが主役を演じた。あと1週間ほどで公演が終わる頃、蜷川さんが「市(い)っちゃん 頑張った」という言葉を添えて台本にサインをくれた。その台本はお守りのような存在という。「今回は『よく頑張った』と書いてもらえるマクベスにしたい。(前回の)駄目出しがあるので蜷川さんが『こう怒っている』と考えながら稽古ができるのが幸せ」と意気込む。

 灰皿を役者に投げつける激しい指導で知られた蜷川さん。「今回は魂だけが残っている。怒鳴られることはないので、みんな伸び伸び演技ができると思う。そして蜷川さんから『何だよー、俺いなくなったらいい芝居すんのかよ』と言われる気がする」。次々と飛び出す天国の蜷川さんとの「会話」が、2人のつながりの強さを感じさせる。

 蜷川さんと組んだのはこれまでに「リチャード三世」をはじめ4作。そのうち01年、彩の国さいたま芸術劇場で上演された「ハムレット」で恋人役だった女優篠原涼子さんと共演し、05年に結婚。市村さんにとって蜷川さんはキューピッドでもあるのだ。

■原点は川越に

 「小江戸川越大使」として5月から川越市のPRポスターの「顔」を務める。市村さんは父・信行さん(享年70歳)と母こうさん(享年87歳)の間に生まれた。大好きだったのは「川越まつり」。「子どもの頃から、いつか自分も山車の上で(舞い手のように)踊りたいと思った。テンテンツクツク、テンツクツク…」。おはやしを口ずさみながら、独特のリズムで手や肩を動かす。

 市村さんの代表作は20年以上演じたミュージカル「ミス・サイゴン」のエンジニア役。「おはやしを聞くと自然と体が動いちゃう。それがエンジニア役にもつながっている。山車じゃなくて舞台に立つようになったんだ」

 川越商業高校(現市立川越高)に進学、体操部に所属していたが、2年生で大けがをして退部。3年生で演劇部に入部して演劇に目覚め、役者になるための方法を探り始めたという。

 「NINAGAWA~」は7月13日から彩の国さいたま芸術劇場大ホールで上演する。5月には蜷川さんの一周忌法要で同ホールを訪れた。「改めていい小屋だと思った。蜷川さんのホームグラウンドでもあるし、(埼玉は)僕の生まれ故郷でもある」と「蜷川」の冠が付いた作品を演じる喜びをかみしめた。

■いちむら・まさちか

 1949年川越市生まれ。川越商業高校、舞台芸術学院卒業後、西村晃さんの付き人を務める。劇団四季の看板役者として活躍したが1990年に退団。「ミス・サイゴン」をはじめミュージカル、舞台などで活躍。2007年に紫綬褒章を受章。

最終更新:5/28(日) 10:30
埼玉新聞