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【あの時・ウオッカのダービー制覇】(3)桜花賞で完敗…初めての挫折

5/28(日) 9:20配信

スポーツ報知

 2006年春、ウオッカは栗東トレーニングセンターへの入厩に備え、福島県のテンコー・トレーニングセンターで最終調整を行っていた。全長950メートルの坂路などで調教を積んだが、同世代の2歳馬50頭はもちろん、1歳年上の3歳馬がウオッカについていくことができなかった。

 「これはすごい。早く(栗東へ)入れた方がいいですよ」。現地から興奮ぎみに報告を受けたのは、栗東所属の調教師、角居勝彦だった。すでにウオッカを手がけることが決まっていた。その秋に入厩すると、角居は厩舎にG1初勝利をもたらした04年の菊花賞馬デルタブルースや、05年マイルCSを勝ったハットトリックなどと一緒に走らせて鍛えた。異例の「英才教育」を施した。

 10月29日のデビュー戦を前に、角居はオーナーの谷水雄三に連絡を取った。事前の登録が必要な「クラシック登録」の締め切りが迫っていたからだ。「牝馬は牝馬のレースに登録すると思っていた」。角居の想定と違って、谷水のプランは壮大なものだった。「5つ全てやっておいてくれ」。角居は耳を疑った。思わず「何を5つですか」と聞き返した。牝馬を皐月賞、日本ダービー、菊花賞に登録する考えは全くなかった。

 オーナーの意向に従って、5大クラシックに登録を済ませたが、角居は半信半疑だった。「正直、果たして…という気持ちがありました」。全ては杞憂(きゆう)に終わった。初陣を快勝し、デビュー3戦目で2歳女王を決める阪神ジュベナイルフィリーズを2歳レコード勝ち。「こんな強い勝ち方をするなら、皐月賞やダービーという話になるよな」と感じた。

 年が明け、ウオッカはエルフィンS、チューリップ賞を勝ち、牝馬クラシック第1弾の桜花賞へ駒を進めた。レース当日は単勝1・4倍の1番人気。ウオッカ一色ムードだったが、ダイワスカーレットの主戦騎手、安藤勝己の見方は違った。「あのレース(チューリップ賞でウオッカの2着)は力負けじゃない。一瞬でウオッカに前に出られたが、その後は離されていない」と、十分に勝算があるとみていた。

 ゲートが開いた。道中7番手のウオッカに対して、3番手のダイワスカーレットは直線手前から早めにスパートをかけた。ウオッカの持ち味である切れ味を封じる作戦だった。予想外の早仕掛けが功を奏し、直線で両者の差が詰まらない。ラスト100メートルでダイワスカーレットに突き放された。

 ウオッカは1馬身半差の2着だった。桜花賞を勝てば、日本ダービーへの参戦を決めていた谷水の心が揺らいだ。「オークスで巻き返すか」。完敗に近いレース内容に、全てが白紙に戻った。初めての挫折だった。(山本 武志)=敬称略=

 ◆クラシック登録 皐月賞、日本ダービー、菊花賞に加え、牝馬限定の桜花賞、オークスの3歳馬だけが出走できるG1を総称して「5大クラシック競走」と呼ばれる。この5競走に出走するためには事前登録が必要で、1次登録は10月4週目、2次登録は1月4週目が締め切りになっている。牝馬ではエアグルーヴ(93年生まれ)、トゥザヴィクトリー(96年生まれ)が5大クラシック競走にすべて登録した。

最終更新:5/28(日) 9:20
スポーツ報知

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