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【あの時・ウオッカのダービー制覇】(5)親子2代で紡ぐ新たなドラマ

5/28(日) 9:40配信

スポーツ報知

 ウオッカは現在、アイルランドにある牧場、アガカーンスタッドギルタウンで繁殖生活を送っている。日本では想像のつかない広大な放牧地で、2、3頭の馬たちのリーダー格となり、穏やかに過ごしている。オーナーの谷水雄三は「馬にとっては素晴らしい環境です。頑張ってくれたウオッカへのお駄賃というか、ここに置いてあげたい、と思える場所なんです」と説明した。

 2007年の日本ダービーを勝ったウオッカはその後、予定していたフランスG1の凱旋門賞を故障で断念するなど、1年以上も勝ち星から見放された。その後はG1で5勝を挙げたが、10年にドバイでG2に出走後に鼻出血を発症。ラストランの予定だったドバイ・ワールドCを前に引退が決まった。通算成績は海外を含め、26戦10勝。G1を7勝したが、激動の競走馬生活だった。

 調教師の角居勝彦は「ダービーを勝った時点で、角居厩舎の馬より競馬ファンの馬に近づいていった。結果を早く出さないといけない。そういう馬づくりになった気がします。競馬の面白さと難しさを教えてもらいました」と感謝の言葉を口にした。現役2位の国内G123勝、海外G1でも5勝を挙げているが、ウオッカとともに歩んだ3年半は、何物にも代え難い経験だった。

 谷水は12年にウオッカを生産したカントリー牧場を閉鎖した。「下火になってやめるよりは今だな」と、半世紀の歴史に幕を閉じた。現在はオーナーブリーダーではないが、1世代に4、5頭を所有。ウオッカの子を手放したことは一度もない。預託先は全て角居厩舎。初子、2番子は未勝利だったが、3番子のタニノアーバンシーは今春に500万、1000万特別を連勝。親子2代で紡ぐ新たな血のドラマが再び芽生えつつある。

 ウオッカの引退後、谷水はJRAから大きな段ボール箱をもらった。その中に数百通のファンレターが入っていた。「JRA ウオッカ様」の宛名で届いた手紙に驚いた。「(日本で)会えないのは寂しい」。突然の別れを惜しむ声に、心が痛んだ。今も自宅に保管している全ての手紙から、ファンの愛情が伝わった。

 あのダービーで多くの人々がウオッカの衝撃に触れ、その強さに酔いしれた。谷水は「ウオッカといえば、やはりダービーだろう。あれが出発点だったんだ」。記録と記憶に残る名牝は今でも人々の心のなかで走り続けている。(山本 武志)=敬称略・おわり=

 ◆ウオッカの子供 引退後はアイルランドで繁殖生活を送るため、欧州産馬と配合されている。初年度の2010年から3年連続で父親となったのが英クラシック2冠と凱旋門賞を勝ったシーザスターズ。13年に生まれたタニノアーバンシー(牝4歳)が3勝を挙げている。4番目の産駒となる現2歳(15年生まれ)は、父が現役時代に14戦14勝のフランケル。母と同じ角居厩舎からのデビューを目指して調整中。今年5月22日には同じくフランケルを父に持つ牡馬が誕生した。

最終更新:5/28(日) 9:40
スポーツ報知

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