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破竹の7連勝でついに首位浮上…好調・柏を牽引する中川寛斗と武富孝介が持つ“共通点”

5/28(日) 13:38配信

SOCCER KING

 一度もマイボールにならないまま、開始わずか2分でCKから先制されても、柏レイソルは動じなかった。前節まで積み重ねてきた6連勝の中では、相手にリードを許した時間は1秒たりともない。それでも下平隆宏監督は、全幅の信頼を寄せながらベンチで戦況を見つめていた。

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「先制されてもバタつかずに、自分たちの力で返していこうという雰囲気がピッチから伝わってきた。選手たちが1試合ごとに成長している証拠なのかな、と思いました」

 ホームの日立柏サッカー場に大宮アルディージャを迎えた、27日の2017明治安田生命J1リーグ第13節。ビハインドを背負いながらもボールを握り続け、40分に相手のミス絡みで追いつくともう止まらない、止められない。

 後半に入って武富孝介の連続弾など、怒涛の3ゴールを積み重ねる逆転劇で3シーズンぶりとなる7連勝を達成。今節試合のないガンバ大阪を抜いて暫定首位に立った要因を、指揮官は前線からの守備に帰結させた。

「前線からの守備が良くなって、そこから連勝が始まりましたけど、前線からプレスをかけたい、ガンガンいけと僕がやらせているのではなくて、相手のビルドアップを阻止したいという意思のもと、選手たちが率先してプレッシャーをかけに行っている。元々はボールを持ちたいチームですし、その意味で早くボールを奪い返したい、自分たちがボールを持っていたい、というところが当然あるので」

 ここまでの軌跡を振り返ると、ターニングポイントになっている試合があることが分かる。ベガルタ仙台をホームに迎えた3月18日の第4節。2トップの一角に、身長155cmと今現在では最小兵のJリーガーとなる中川寛斗が初めて先発として起用された。

「僕たちが勝利する確率を上げるためには前線からプレッシャーをかけて、ボールを早く回収して、いい攻撃につなげる、というサイクルができている時なので。それは選手みんなが理解できていると思う」

 こう語る中川は、小さな体に旺盛な闘争心と無尽蔵のスタミナを搭載。プレス“一の矢”として献身的に走り回ることで、攻撃陣を外国人選手で固めながら、車に例えればノッキング状態を起こしていた柏を変えた。キャプテンのMF大谷秀和が振り返る。

「最初はディフェンスがなかなか良い形ではまらなかった。外国人選手を攻撃でも生かすことができず、チームとしてどう戦うかがしっくり来なかった中で、中川と武富が入り、いい守備からというところで前からどんどん追ってくれるし、今はその形がはまっていると思う」

 仙台戦は0-1で苦杯をなめたが、中川を切り込み隊長とする形で戦い方は逆に定まった。登録されているFWではなく、2列目の左で武富が先発に復帰した6日のセレッソ大阪との第10節からは、さらに鮮明になった。

「単純に言えば走るということですし、無理をするとか、自分たちが得意としないプレーをしようとは思っていないので。自分たちに求められることをできているというか、自分たちが出ている意味を理解しているのが大きい。僕が左サイドで使われる意味は、間違いなくハイプレスやハードワークすることにあると思っているので」

 胸を張る武富は2013シーズンから2年間、湘南ベルマーレへ期限付き移籍している。当初はDFクォン・ハンジンと2人で移籍するはずが、柏レイソルU-18から昇格した中川も急きょ加わった。

 実は当時の柏を率いていたネルシーニョ監督(現ヴィッセル神戸監督)が、身長が低いという理由で、中川の昇格に難色を示していた。だからといって、手放すにはあまりにも惜しい存在ということで、柏の強化部は中川とプロ契約を結んだ上で湘南へ武者修行に送り出した。

 それまでの中川は卓越したテクニックと、体の小ささを逆手に取った俊敏さを武器にしていた。もっと言えば、自分にはそれしかできないと勝手に天井を設定していた。他の選手よりも走り、戦い、チームのために献身的に動き回ることの尊さを、湘南の曹貴裁(チョウ・キジェ)監督は叩き込んでくれた。

「サッカーだけじゃなくて、すべての面で僕をプロフェッショナルにしてくれた人なので」

 こう語る中川は、今も曹監督に畏敬の思いを抱く。それは武富も変わらない。湘南での2年間が「サッカー人生のターニングポイントになった」と笑顔で振り返る。

「曹さんに厳しく教えられたおかけですよね。(中川)寛斗もそうですけど、昔から走る選手でも、戦う選手でもなかったと思うので。それらを湘南で培ったのは、間違いのないことなので」

 大宮戦でも2人はフル出場し、走行距離で中川はチーム1位の12.380kmを、武富は同2位の11.969kmをマーク。スプリント回数は中川が2位の30回、武富は3位の27回を数えた。ちなみに、1位は34回のクリスティアーノ。2人の献身的な姿勢が、外国人選手にも相乗効果をもたらしている。

「失点したのが早い時間帯だったことが、不幸中の幸いだったかなと。大宮さんの堅いブロックをどのようにして崩すか、どうすればスペースを作れていい攻撃ができるかを考えた時に、裏へのランニングは欠かせないと思ったので、とにかく90分間続け通しました。そういうジャブが効いて、大きな穴ができてきたというのはありますね」

 今もなお湘南イズムが脈打っているがゆえの以心伝心なのか。11km以上を走った試合では8戦全勝中の中川が力を込めた「ジャブ」という言葉を、図らずも武富も口にしている。

「以前だったら、先制されるとバタバタしてしまいましたけど。ジャブを打ち続けたことで、今日は勝てたと思う」

 武骨に、そして愚直にジャブ、つまりハードワークを繰り返せるところに、今の柏の強さが凝縮されている。チームのために粉骨砕身する2人の背中は浦和レッズをホームに迎える、来月4日の大一番でも勝利への羅針盤となる。

文=藤江直人

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最終更新:5/28(日) 13:38
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