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“大人”にも人気! 「ベイブレード」が再び大ヒットした理由

5/29(月) 7:10配信

ITmedia ビジネスオンライン

 1999年に発売されたタカラトミーの玩具、「ベイブレード」――。20代男性の読者なら、子どものころにベイブレードで遊んでいたという人も多いはずだ。

【安全性をクリアし、「相手のコマを破壊する」という新ルールを加えた】

 ベイブレードとは、昭和に国内で流行した「ベーゴマ」をより手軽るに楽しめるようにした、現代版のベーコマである。ベーゴマは、コマにひもを丁寧に巻かなければならないため、初心者や不器用な人は遊びづらいという課題があった。そこで同社は「ランチャー」と呼ばれるコマを回転させる装置を使用することで、誰でも簡単に遊べるようにしたのだ。

 ベイブレードは発売後、その手軽さが受けて大ヒット。2008年には、コマの素材をプラスチックから金属に変えて迫力を追求した「メタルファイト ベイブレード」(シリーズ第2弾)も発売し、累計販売数は世界で35億5000万個を超える主力商品となった。

 このベイブレードがいま、再び大ヒットしている。15年7月に発売したシリーズ第3弾「ベイブレードバースト」(以下、バースト)が既に1000万個以上を販売するなど、快進撃を続けているのだ。

 また、もともとベイブレードは小学生を対象とした玩具だが、バーストは20代男性を中心とする大人のユーザーからも人気が高いという。10年以上も前に誕生した玩具がなぜ、再び人気を集めているのか。どのようにしてユーザーの心をつかんだのか。再ブームの仕掛け人であるタカラトミーのボーイズ事業部、堀川亮氏に話を聞いた。

●「破滅は男のロマン」

 堀川氏は08年に入社。営業部を経て、15年にベイブレードの担当となった。バーストの開発背景について堀川氏は「ベイブレードのポテンシャルなら、再び大ヒットを狙える自信がありました。12年にシリーズ第2弾の販売が終了したときから、第3弾を作りたいと考えていました」と話す。

 しかし、どのジャンルおいても前作の大ヒットを超える商品を生み出すのは難しいもの。第3弾のコンセプトは簡単には決まらなかったという。

 「第1弾と第2弾には『バトル』『コレクション』『カスタマイズ(改造)』といった売れる要素のほぼ全てが盛り込まれていました。どうすればそれを超えるベイブレードを作れるのか、かなり悩みました」

 悩み抜いた末、たどりついた答えは「相手のコマを破壊する」というコンセプトだった。

 これまでのベイブレードでは、ベーゴマと同じように、相手のコマをリングから弾き飛ばすか、相手のコマより長く回り続けることが勝利の条件であった。バーストではそこに、相手のコマを破壊するという新ルールを加えたのだ。

 もちろん、本当に“壊れる”わけではない。取り外し可能な部品と部品の接続部分に、繰り返し衝撃を与えることで、コマが分解されるという仕組みだ。

 「相手の武器を破壊するって男子のロマンですよね。どんな勝ち方よりも爽快感があると思うんです。漫画やゲームの世界ではよくある話ですが、それをリアルの遊びでもそれを実現できれば売れるかもしれないと考えました」

●“逆転ドラマ”が生まれるようになった

 しかし、堀川氏が企画会議でバーストを提案した当初、社内では受け入れられなかった。破壊して飛び散ったコマの部品がユーザーにぶつかり、ケガをさせてしまう危険性があったからである。

 「私の企画は、検討の余地もなく却下されました。『そんな危ない玩具を作ることはできない』と。しかし、今までにない突き抜けたアイデアでなければ、これまでのベイブレードを超えることはできません。私は諦めず、周囲に納得してもらえるように課題(危険性)をクリアしようと考えました」

 堀川氏はバーストの安全性を高めるため、取り外せるコマの部品数を3つまでにし、ある程度の重さを持たせた。破壊した際の部品の飛距離を抑えるためだ。また、コマ同士がぶつかり合うスタジアム(リング)も改良。部品がリングから飛び出ないよう、リング上部に安全カバーを設置した。問題視されていた危険性をクリアし、バーストの開発を実現させた。

 バーストは発売後、シリーズ第1弾・2弾と同様の初速で販売数を伸ばした。堀川氏は「破壊の要素が加わったことで、ゲーム性が格段に高まった」とヒットの要因について語る。

 「これまでのベイブレードでは、回転数に依存した戦いになるため、腕力の強い子どもが有利でした。しかし、破壊がルールに加わったことで例え回転が弱くても、コマのぶつかる角度次第で相手を倒せますし、回転が止まりそうになっても逆転することができます。つまり、運の要素が強くなり、最後の最後まで勝負を楽しめるようになったわけです」

 ある程度回転が弱まってくると勝敗が見えてしまうため、勝負の途中に諦めてしまうケースも多かったが、バーストでは“逆転ドラマ”が生まれるようになった。実際、同社や小売店が毎月開催するバーストの大会(ユーザー同士の対戦イベント)では「驚きの歓声」が飛び交うようになったという。

 このほかにもバーストでは、4つのコマのタイプを用意し、ゲーム性をより高めた。用意したのは、動きが大きい「アタックタイプ」、破壊されにくい「ディフェンスタイプ」、長く回ることに特化した「スタミナタイプ」、攻めと守りのバランスを重視した「バランスタイプ」である。

 ディフェンスタイプはアタックタイプには強いが、スタミナタイプには弱い――とった具合に、それぞれのタイプには相性があるため、どのタイプのコマで勝負するかという駆け引きも楽しめる。また、仮に相性の悪いコマを出してしまったとしても、前述したように破壊による逆転の要素があるため、勝てる可能性も残るので諦めずに勝負を楽しめる。

●ベイブレードを文化にする

 もう一つ、バーストの特徴として挙げられるのは、これまでのベイブレードと違い、“大人のユーザー”からも支持されていることだ。堀川氏はベイブレードの対象年齢を「小学生対象」から「全年齢対象」に広げるという新しい挑戦に打って出たのだ。

 「本当にベイブレードは小学生だけしか楽しめないのか、その常識を疑ってみました。やりたい大人のユーザーもきっといるはずなのに、メーカー側が自ら壁を作っているのではないかと」

 ベイブレードの対戦イベントへの出場にも年齢制限があったが、バーストではそうした制限を設けていない。また、シリーズ第1弾のデザインを復活させるなど、当時ベイブレードで遊んでいた20代のユーザーに積極的にプロモーションを仕掛けたことで、多くの20代ユーザーを獲得できたという。

 17年の1月には、お酒を呑みながらベイブレードが楽しめる「ベイブレードバー」を期間限定でオープン(17年1月29日で終了)。ベイブレードバーは大盛況で終わり、多くの大人が来店した。

 「20代のユーザーは子どもころにベイブレードで遊んでいた世代。なら、もう一度楽しんでもらえばいいわけです。実際、バーストを購入してくれた20代のユーザーは想定以上にたくさんいました」

 ベイブレードには、大人も楽しめるポテンシャルがある――。そう語る堀川氏には、実現したい大きな目標があるという。

 「いまの20代が30代や40代になってもベイブレードを楽しんでいただきたい。最終的には全世代に普及し、文化になればいいと思っています。ビリヤードやダーツに年齢制限はありませんよね? それと同じように、みんながベイブレードで遊ぶことが当たり前の存在に育てたいと思っています。飽きられないように、これからもベイブレードを進化させていきたいですね」


(鈴木亮平)

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