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ハーバード大、ラップのミックステープを卒論として認める

5/29(月) 21:21配信

bmr.jp

ハーバード大、ラップのミックステープを卒論として認める

ハーバード大、ラップのミックステープを卒論として認める

無料ストリーミング形式で配信されているチャンス・ザ・ラッパーの『Coloring Book』が今年のグラミー賞に選ばれるなど、「ミックステープ」と呼ばれる作品形態への注目が改めて集まる中、名門ハーバード大学が、学生によるミックステープ作品を学位論文として認めたことが話題になっている。

米大統領を始め、ノーベル賞の授賞者など数々の人材を輩出し、世界的に知られるハーバード大学のとある発表が、大きな話題となっている。それは、20歳の学生オバシ・ショウによるミックステープ『Liminal Minds』を、「ラップによる学位論文」として受領し、同学生は卒業資格を得たというもの。ハーバード大は、「(アフリカ系アメリカ人は)自由なのに、奴隷制の影響は今なお残っている。このミックステープの曲はいずれも、奴隷であることと自由であることの状態について探求したもの」とのショウの発言と共に、このミックステープを、中世に使われた中期英語の詩と、アメリカにおける人種的アイデンティティを結びつけた作品だと紹介している。

ハーバード大の公式ニュース・メディア Harvard Gazetteによると、両親ともにハーバード卒というオバシ・ショウは、クリスチャンである親の影響で昔からクリスチャン・ラップばかりを聴いて育ったが、ここ2年で初めて、黒人のアイデンティティや、貧困、暴力、差別など米社会の問題についてもラップしているケンドリック・ラマーやチャンス・ザ・ラッパーの作品に触れたことで、「人種とは、宗教とは、黒人のアイデンティティとは、という疑問」を改めて持ったとのこと。だが、以前からラップをしていたとはいえ、当初から卒論をラップにするというアイディアがあったわけではなく、提出日が近づいてきたある日、母親に「ラップの卒論を書いてみたら」と提案され、このミックステープ『Liminal Minds』が生まれたのだとか。

ハーバード大はこれまで、脚本、回想録、小説、詩集などを論文として認めたことはあるが、ラップ作品を受領したのは同校初となるという。なお、チャンス・ザ・ラッパーは2015年にハーバードで特別講義を持ったことがある。また今年始めには、ケンドリック・ラマーのグラミー受賞作『To Pimp A Butterfly』を始めとするラップ・アルバムの名作が、その文化的功績を讃えられてハーバード・ライブラリに収蔵されたばかり。

高評価を得たというこのミックステープについて、彼の論文の指導教官は、「オバシのアルバムは非常におもしろいものでした。なぜなら、(14世紀のイングランドの詩人)ジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』を重ね合わせた作品でしたから。それぞれの曲において、彼は異なる視点からストーリーを語り、それがアメリカ社会や人種に関わる政策に対する批評となっていたのです。しかし何より、楽しく、おもしろいアルバムでした」と語っている。また作者のオバシ・ショウは、この『Liminal Minds』というタイトルについて、「犯罪者の心理」を意味するクリミナル・マインド(criminal minds)を踏まえたものであり、かつ、「光などを感知できるかどうかの境、目立たない」といった意味のliminalを使ったことについて、現代のアメリカ社会のおける黒人の立ち位置を示唆する意味を込めたと話している。

DJやラッパーたちが自分のスキルを示すためのプロモーション・ツールとして定着した「ミックステープ」は、元々は、DJミックスや非公式のリミックス音源などを収録したカセットテープやCDを指すが、現在はデジタル・ダウンロードが主流となっている。近年はオリジナル楽曲のみで構成された作品も増えており、有料で販売されるものもあるため、実質的にアルバム作品と変わらないものも多い。オバシ・ショウの『Liminal Minds』は彼のsoundcloudで無料ダウンロードできる。

多くのメジャー・レーベルから契約オファーを受けるも断り、インディペンデントで活動を続けているチャンス・ザ・ラッパーは昨年、最新作『Coloring Book』をApple Musicを始めとし定額制たストリーミング・サービスおよび、音声ファイル共有サービスのsoundcloudといったプラットフォームにおけるストリーミング配信のみという形式でリリース。同作は様々なメディアでほぼ満点を獲得するなど絶賛され、またチャンスのファンによる署名運動といった動きも起こり、グラミー賞は昨年、これまでの有料で販売された作品に限るといった規定から、「ストリーミングのみの作品も、グラミー賞のノミネート資格に値する」と改訂した。これにより、チャンス・ザ・ラッパーは今年2月の第59回グラミー賞で7ノミネートを受け、『Coloring Book』が最優秀ラップ・アルバム賞に輝いたのを始め、最優秀新人賞など3部門を授賞。「音楽を販売しないアーティスト」による快挙として大きな話題となった。

最終更新:5/29(月) 21:30
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