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「13の理由」は、なぜ口コミでヒットしたのか?<シーズン1評>【厳選!ハマる海外ドラマ】

5/29(月) 5:26配信

シネマトゥデイ

 3月31日にNetflixで世界同時配信された「13の理由」。配信と同時にビンジウォッチング(一気に観ること)してから2か月が経った今でも、主人公ハンナ・ベイカーのことを思うだけで、胸が張り裂けそうだ。長くドラマを見続けてきたけれど、こんなに涙を流しながら観たドラマはそうはないし、これほどまでに自分がティーンエイジャーの心に感情移入することができるなんて。プロデューサーでもあるセレーナ・ゴメスがカバーした「Only You」を聞くたびに、パブロフの犬のように涙がこみ上げてくる。

自殺した少女の学園で起きていた壮絶ないじめ

 「13の理由」は、アメリカの作家ジェイ・アッシャーが2007年に発表した同名ヤングアダルト小説のドラマ化。郊外にある高校で、女子高生ハンナが自殺した。物語は、ハンナが死の直前に、その原因となった13人が、何をしたのかを吹き込んだカセットテープを通じて、自殺に至るまでの過程を明かしていく。1話がテープの片面の1人分で、全13話。テープを再生するのは彼女の同級生で、映画館で一緒にアルバイトをしていた情緒不安定気味な青年クレイ。突然、家に届いたテープを聞く彼を通して、自分と周囲の人々が何をしてしまったのか、あるいは“何をしなかったのか”を知ることになる。

 若手キャストはハンナ役のオーストラリア出身のキャサリン・ラングフォードを筆頭に、有名スターはほとんどいない。「ハウス・オブ・カード 野望の階段」などに比べればNetflixの推しのタイトルでもなさそうで、事前のプロモーションもあまり見なかった。一早く視聴したのは、オスカー受賞作『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)のトム・マッカーシー(2エピソードを監督)がプロデューサーとして参加していることと、何よりセンセーショナルな題材に興味を惹かれたから。つまり割と軽い気持ちで見始めたのだが、これがまさかの社会派! SNS時代のいじめ、自殺、不安、性的暴行、自傷行為、うつ病、そして古い女性観に基づく非難や偏見(スラット・シェイミング)といった要素から目をそらすことなく、きっちりと描き切っている。それが出来ている作品は、間違いなく社会派と言えるはず。

 最初は、学校の複雑な人間模様や親の事情なども絡み合い、ミステリーの要素に引っ張られる。ハンナは嘘をついているんじゃないのかとの疑念も湧いたり、目的はリベンジなのか、ほかにあるのかも不明だ。とりわけ序盤は、クレイは原作(鑑賞後に読んだ)では一晩でテープを聞き終えるが、ドラマでは13話あるのでそうもいかず、歩みののろさにイライラしつつも引き込まれていく。何より、ハンナが語る過去を追体験しながら、もうこの世にはいないハンナとクレイが対話するスタイルは、視聴者とハンナのシンクロ率をこの上なく高めるのに効果的だ。これは原作も同じで、しばらくすると本もドラマも、本当にハンナが自分に向かって問いかけているような不思議な感覚。誰かのちょっとした悪意が湖面のさざ波のように広がっていき、徐々に明かされていく思いもかけないバタフライ効果を生む過程は、ミステリー、青春ドラマのノリからより深刻なものとなっていく。

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最終更新:5/29(月) 12:18
シネマトゥデイ