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「技適」の話をあらためて整理する

5/29(月) 6:25配信

ITmedia Mobile

 SIMロックフリー端末を選ぶ際に、必ずチェックしていただきたい項目として「技適マーク」があります。技適マークとは何かご存じない方であっても、記号を見れば「あれ、どこかで見たことが…?」と思っていただけるかもしれません。今回は、SIMロックフリースマートフォンを選ぶ際に避けて通ることができない技適マークについて、ご説明しようと思います。

【iPhone 7 Plusの技適マーク】

●実は2種類ある「技適」

 技適マークとは、「技適」という略称で呼ばれる、よく似た名前の2つ制度によって公的な認証を受けたことを示すために、端末へのシール貼付、もしくは画面表示にて示されているマークです。


1. 電気通信事業法に基づく「技術基準適合認定」
2. 電波法に基づく「技術基準適合証明」

 スマートフォンの技適マークをよく見ると、2つの数字列が確認できると思います。このうち、頭に「T」が付くのが電気通信事業法に基づく技術基準適合認定を示し、頭に「R」が付くものが電波法に基づく技術基準適合証明を示します。

 このうち、電気通信事業法に基づく技術基準適合認定(頭がTの認証番号)は、電気通信事業者の設備に接続して良い端末であると技術的に認証された電気通信機器であることを示すもので、携帯電話の他、例えばアナログ電話機やファクスなどさまざまな通信機器が対象となります。

 この技術基準適合認定を取得していない端末は、電気通信事業者の通信設備や通信サービスに、混信や通信不能などの影響を与えてしまう恐れがあります。このような機器を日本国内で使うことは、法令で禁止はされていないのですが、各電気通信事業者の約款(契約)において特別の義務が課せられている場合があります。

 例えばNTT東日本の電話サービス契約約款では、海外で購入した電話機など、技術基準適合認定の認証を受けていない機器を利用する場合には「当社所定の書面により接続の請求を」しなければならないことになっています。

 もう1つの、電波法に基づく技術基準適合証明(頭がRの認証番号)は、電波を発する比較的小規模な無線機器に対し適用されるものとなり、例えば携帯電話の他、タクシー無線や船舶無線、アマチュア無線などが対象となっています。

 電気通信事業法に基づく「技術基準適合認定」の方が、必ずしも未認証の端末を日本国内で使うことまでは禁止してはいないのに対し、電波法に基づく技術基準適合証明は、未認証の無線機器を日本国内で使うことが法令で禁止されるという、より厳しい制度となっています。

 日本で販売されているSIMロックフリースマートフォンを含む携帯電話は、これら2つの認証をどちらも取得していることが多いため、技適マークには、頭がTのもの、頭がRのものの2つの認証番号が記載されていることが当然となっています。

●「技術基準適合証明」とは

 今回は、より厳しい制度である、電波法に基づく「技術基準適合証明」を詳しく見ていきましょう。

 技術基準適合証明を取得していない無線機器を使用することが禁止されているのは、どういう理由からなのでしょうか? 

 電線の中に電気信号が閉じ込められている有線通信や、光ファイバーの中にレーザー光が閉じ込められている光通信と異なり、四方に拡散していく無線の特性として、許可されていない周波数の電波をみだりに発信すると、他の電波と混信してしまい、その影響が広範囲に及び、かつ被害が甚大になる恐れがあります。

 そのため、無線機器(無線局)は、許可されている周波数や出力以外の電波を出すことがないよう、検査に合格し無線局免許を受ける必要があると厳しく電波法で定められています。この無線局免許は携帯電話でも例外ではありません。

 しかし、既に国内に1億6千万台を超える携帯電話が存在する中、1台1台の携帯電話を検査し無線局免許を交付するというのはちょっと非現実的です。

 そのため、技術基準適合証明を取得している携帯電話(=特定無線局)に限り、キャリアが包括的に無線局免許を取得できる規定が設けられています(電波法第27条の2)。つまり、技術基準適合証明を取得していない携帯電話端末をもし国内で利用すると、無線局免許を受けていない無線設備により電波を発することになってしまうため、利用してはダメということになります。

 携帯電話の包括免許が適用されうるのは、通信相手となる基地局を運用しているキャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク等)で、MVNOは含まれません。ただ、もしMVNOのSIMカードをスマートフォンに挿して利用している場合は、そのMVNOにSIMカードを提供しているキャリア(厳密には、そのSIMカードで接続可能な基地局を運用しているキャリア)の包括免許によりカバーされるため、電波を出しても良いということになります。

 また、無線局をみだりに操作して社会を混乱させることがないよう、電波法では無線局を操作できる人に対する免許制度も定義しています。最近ではあまり流行していないかもしれませんが、筆者が子供の頃にはアマチュア無線を趣味にしている友人が何人もいました。このアマチュア無線を使うためには、電話級、電信級(※)などの「アマチュア無線技士」の国家試験に合格する必要がありました(※現在は第4級、第3級に改称)。これが無線局を操作できる人に対する免許(無線従事者免許)となります(電波法第40条、第41条)。

 では携帯電話ではどうかというと、携帯電話を使うため試験を受けさせるというのはちょっと非現実的ですから、包括免許の対象となっている端末(特定無線局)については、無線従事者の免許がなくとも誰でも操作することが法令で許されています(電波法第39条、電波法施行規則第33条第2項)。つまり携帯電話の利用に試験や免許は要らない、ということになっているのですが、これも技術基準適合証明を取得した携帯電話であることが条件となります。

 このように、携帯電話には利用者利便性のために電波法の中での、いわば特例的な扱いが設けられているのですが、その「特例」を受けられる端末を定義し、電波環境の安心を技術的に担保している仕組みこそが技術基準適合証明、ということになります。

●「技術基準適合証明」とWi-Fi、Bluetooth

 最近の携帯電話(スマートフォン)は、無線LAN、Bluetoothなどの電波を送受信する能力も持っています。これらの電波を日本国内で送信する際は、やはり電波法に基づく必要があります。無線LAN、Bluetoothに関しては、技術基準適合証明を取得した無線機器に限り、無線局の免許が必要ありません(電波法第4条第1項第3号)。また同じく技術基準適合証明を取得した端末については、無線局を操作するための免許(無線従事者免許)も不要です(電波法第39条、電波法施行規則第33条第1項)。

 無線LAN、Bluetoothについては、「もともと家の中で使うものだし……」「技適マークなくても大丈夫だよね」と思ってしまいがちなのですが、免許が不要である条件は技適マークの取得が条件となっていますので、技適マークのない端末では無線LAN、Bluetoothも利用することは禁止されています。

 時折、技適マークのない端末について「SIMカードを挿さず、無線LANで使用してください」的な売り方をされているケースがあるようですが、無線LANであっても電波を出すことは電波法違反となりますので注意が必要です。

●技適マークの取り方

 技術基準適合証明を取るためには、国の認証を受けた審査機関(登録証明機関)に検査をしてもらい、パスする必要があります。代表的な登録証明機関として一般財団法人テレコムエンジニアリングセンター(TELEC)が有名です。このような登録証明機関にハードウェアを持ち込み、1台ずつ検査してもらうことも可能です。

 携帯電話のように同一の設計書面に従って量産されるような無線機器については、設計書面をベースに製品全体を包括的に審査してもらうことも可能で、広く行われています(工事設計認証)。

 このようにして技術基準適合証明を取得した端末は、総務省の「電波利用ホームページ」に登録され、誰でも検索できます。当然、登録証明機関での検査を経ず、勝手に技適マークを貼付してはいけません。

 また、海外の端末メーカーが日本で携帯電話を発売するといった場合は、日本における検査ではなく、日本が「MRA」と呼ばれる相互承認協定を結んでいる外国(欧州・米国・シンガポール)の評価機関で検査を受け、その結果により日本の技適マークを取得することも可能です。

●技適マークの調べ方

 お手持ちの端末の技適マークを見てみたい場合は、端末の裏やバッテリーパックを外した部分などを調べてみてください。技適マークが印刷されたシールを見つけることができます。

 最近のスマートフォンでは、シールを貼れる場所が少なくなっていることもあり、設定画面を開くことで液晶に技適マークを表示できるスマートフォンも増えてきています(iPhoneの場合は「設定」→「一般」→「認証」)。

 国内で販売されているSIMロックフリースマートフォンは、基本的に全て技適マークは取得していますが、海外で発売されている端末には、必ずしも技適マークがあるとは限りません。海外のSIMロックフリースマートフォンを購入して、MVNOのSIMカードとセットで使うことを想定している場合、スマートフォンに技適マークがあるかを必ず確認しましょう。

●訪日外国人と電波法

 このように、本来は厳しい電波法ですが、携帯電話にはいくつかの特例的な条文により誰でも操作できるようルールが緩和されており、そのための条件として技術基準適合証明という制度が運用されていることが分かります。加えて、携帯電話の全世界的な普及に伴って、訪日外国人が日本国内に持ち込む海外の携帯電話の扱いについて問題となるようになってきました。

 日本に訪問する観光客やビジネス客などの訪日外国人は、彼らが母国で利用していた携帯電話を(SIMカードごと)日本国内に持ち込み、国際ローミングで利用することができます(ただしLTEやW-CDMAなど日本で使われている携帯電話の通信規格や周波数に対応したものに限ります)。

 このような携帯電話には、日本の技術基準適合証明を取得していないものも多く存在します。そのため、本来であれば無免許での無線設備運用となってしまい、電波法違反となってしまいます。しかし電波法第103条の5の規定により、海外で契約され、かつ日本の技術基準適合証明に相当する海外の技術基準に適合している端末については、日本のキャリアがその包括免許の中で運用できることになっています。

 2016年5月21日に施行された改正電波法において同条文も改正され、SIMカードを日本で販売している日本のキャリア(MVNO含む)の訪日外国人向けSIMカードに差し替えた場合にも適用されるようになりました。

 無線LANやBluetoothについては、同じ改正電波法において、日本の技術基準適合証明に相当する海外の技術基準に適合している端末に限り、また入国の日から90日以内に限り、技適マークがある端末と同じ扱い(無線局免許不要、無線従事者免許不要)で運用することが可能となりました(電波法第4条第2項)。

 「え、外国人がいいなら何で技適マーク無しの端末を日本人が使っちゃダメなの?」と思われるかもしれません。実際に、2015年に電波法改正が議論された際には、訪日外国人であれば技適マークのない海外製の端末を日本で使えるのに、日本人はなぜ技適マークのない海外製の端末を国内で使ってはいけないのか、議論が沸騰したと記憶しています。

 ここまで説明した通り、電波法は電波を利用した通信その他を安定的に利用可能とすることで社会の利益と守るために存在しています。そのため、電波を使う人に原則的かつ厳しいルールを設ける一方、例外的な規定をも設けることで利用者の利便性も確保してきました。

 実際に、訪日外国人が日本に持ち込む海外製のスマートフォンが日本の電波環境を乱し、社会の利益を損ねることは考えにくいのかもしれません(そう予測されるからこそ、2015年に電波法が改正されたのです)。

 ただ、それはあくまで利用者(この場合は訪日外国人)の利便性を確保するための例外的な規定に過ぎません。電波法がこれまで適切に運用されてきたことは全体として日本の社会の利益を守るための正しい道だったと思われます。

 最近では、海外から多くのスマートフォンメーカーが日本に上陸し、技適マークの付いたさまざまなSIMロックフリースマートフォンを日本国内で販売するようになりました。電波法が適切に運用されながらも、日本の消費者が今日では多様なSIMロックフリースマートフォンを国内で買えるようになってきたことは、喜ばしいことだと私は思います。

●著者プロフィール

佐々木 太志

株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ) ネットワーク本部 技術企画室 担当課長

2000年IIJ入社、以来ネットワークサービスの運用、開発、企画に従事。特に2007年にIIJのMVNO事業の立ち上げに参加し、以来法人向け、個人向けMVNOサービスを主に担当する。またIIJmioの公式Twitterアカウント@iijmioの中の人でもある。

最終更新:5/29(月) 6:25
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