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「清宮前敬遠」あり?なし?明徳・馬淵監督、開星・野々村元監督の見解は

5/29(月) 14:00配信

デイリースポーツ

 「いけないんですかねぇ…」

 5月14日、熊本で開催されたRKK招待試合、早実-秀岳館戦で起きた「清宮前敬遠」(清宮と対戦したいがために前の打者を敬遠した)で、秀岳館は少なからず、批判的な視線にさらされた。監督の鍛治舎巧は敬遠の理由として「ファンサービス」と「夏の甲子園で対戦するかもしれないから」と2つの理由を挙げた。

 その後、何人かの関係者が冒頭のようにつぶやくのを聞いた。そこで改めて、あの作戦はありなのかなしなのか、いや、そもそも「作戦」と呼んでいいものなのかを考察したい。

 かつて、選抜大会で21世紀枠のチームにやぶれ、「末代までの恥」「切腹したい」と発言し、大バッシングを浴びた開星(島根)の元監督・野々村直通は言う。

 「あれを報道で知って、僕はかつて帝京がわざとタッチアップしなかった事件を思い出しましたね。相手チームは、実験に使われたような気分になっただろうね」

 ずいぶん昔の話だが、帝京は東東京大会で、コールドゲームになるのを避けるために外野フライでタッチアップできる状況で、意図的にしなかった。試しておきたいピッチャーがいたためだ。そのことで監督の前田三夫は高野連から厳重注意を受けた。

 前田はあのときのプレーについて、こう語っていたことがある。

 「あれは僕がいけなかった。僕は自分のチームを仕上げることしか考えていなかった。相手の気持ちを考えないでね。相手も一生懸命なんだから」

 要は、相手に対する礼儀の問題だ。今回、秀岳館のケースは、采配を肯定する理由として、「招待試合だから」「練習試合だから」という声が挙がった。しかし、事前に打ち合わせがあったのならともかく、練習試合でも踏み越えてはいけないラインはある。

 野々村は、02年の夏の甲子園で起きた明徳義塾の「松井5連続敬遠」を引き合いに出し、こうも語った。

 「明徳は勝負なのに対し、秀岳館はショーでしょ。スポーツは勝負を抜きにしたら、プロレスになっちゃう。明徳はわかるけど、秀岳館は違和感があるな」

 明徳義塾の監督、馬淵史郎にも意見を求めたが、こう言うだけにとどめた。

 「秀岳館の気持ちもわかるけど、球場の雰囲気もわからんし、俺は何とも言えんな。ただ、俺はやらんだろうね」

 21日の関東大会の1回戦、早実は花咲徳栄と対戦した。6-7と1点ビハインド迎えた最終回。2アウト一塁で、2番・雪山幹太を迎える。出れば清宮まで回るという、秀岳館戦と同じ状況だった。

 監督の和泉実に「おまえ次第だぞ」と発破をかけられた雪山は、見事ライト前ヒットでつなぎ、続く清宮の同点打を引き出した。野々村は言う。

 「清宮に回るかどうか。ドキドキしながら雪山君の打席を見守る。それが本当のファンサービスなんじゃないかな」

 結論は簡単には出ないが、スポーツとは何なのかということを改めて考えさせてくれた出来事だった。=敬称略=(ノンフィクションライター・中村計)

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