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経産省ペーパー作成の若手官僚を直撃ーなぜ彼らは結論部分を削除したのか

5/29(月) 7:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

ネット上で大きな話題となった経産省の若手官僚たちによる文書「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」は、賛否含めてなぜここまで反響を呼んだのか。「具体的な対策がない」との声も多かった文書には、実は削除された最後の数ページがあったという。なぜ、若手官僚たちは結論部分を削ったのか。実際に文書の作成に当たった中心メンバーに本音を聞いた。

【画像】「不安な個人、立ちすくむ国家」の資料内のあるページ

「いつものように、ネットに埋もれて読まれないんだろうなと思っていたのが、翌朝に見てバズっていたので驚きました」

経産省の次官・若手プロジェクトのコアメンバーのひとり、産業資金課の須賀千鶴・総括補佐(36)は、産業構造審議会総会でのペーパー公開後の金曜日をそう振り返る。

霞が関ではパワーポイントを駆使し、あらゆる統計や情報を詰め込んだクオリティ高い資料が日々、量産される。その大半はインターネット上で公開されていても、ほとんど話題になることはない。

「正直、どうしてここまで話題になったんだろうと、逆に聞きたいくらいです」

自身もSNSで発信したとはいえ、産業人材政策室の藤岡雅美・室長補佐(29)も、賛否含めたここまでの盛り上がりは想定外だったという。

官僚たちのジレンマ

ロジェクトの始働は、昨年10月に遡る。公募で集められた男女30人の「次官・若手プロジェクト」に与えられたミッションは、「中長期的な政策の軸を考える」という非常に漠然としたものだった。

ただし、「次官」、つまり官僚組織のトップである事務次官の名前を掲げていることはつまり、霞が関の組織では「誰も反対しない、省内で認められた」プロジェクトを意味している。

こうして自由で機動力の高い議論の場が設けられ、あらゆる部局をまたいで、25歳から最年長で須賀氏の36歳という「役所では若手の部類に入る世代」(須賀氏)が集結した。

公募に手を挙げた根底には、既存システムや規定路線を踏襲することで乗り切れてしまう、日々の仕事へのくすぶる違和感があったという。

従来、官僚の政策立案は「何が将来のためなのか、国民的合意は得られるのか」を考える際に、「ある程度、事前に評価できた範囲でやる」というのが“常識”だった。

「ただ、本当は合意があるかどうか、わからないエリアがものすごく広くなっている気がしていました」

須賀氏はゆっくり言葉を選びながら話した。

高齢者だったり中小企業への減税だったり、規定路線にリソース(財源)を割くことについて、大きなハードルはない。しかし、いったん貼ったリソースをはがしたり、若者や人材投資など新たな分野だったりについては、

「どうしても及び腰になるし、霞が関でも永田町でも喧々諤々(けんけんがくがく)があって、通る確率は低くなる。そうするとみんなそこにリソースを貼らなくなってしまう。目の前のことや、みんなが賛成するのが明らかなことをやった方がラクなんですね」

須賀氏は霞が関の「現実」についてそう明かす。

「でも、やはりそれは逃げだと思っていて、本当に重要なことはやりたい。ここについてみなさんは本当はどう思っているの? 合意は本当にない? と、ずっと問いたかった」

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