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改憲・経済界から 政権に寄り添う榊原経団連、同友会は先行発言

5/29(月) 10:00配信

ニュースソクラ

安倍首相の改憲発言、経済界でも温度差

 安倍晋三首相が5月3日に2020年には改憲施行を、と求めたことで改憲が改めて現実味を帯びている。首相は9条の1項、2項はそのままに3項を設けて自衛隊の存在を認めるとの考えを表明した。各界に波紋を呼んでいるが、経済界の反応はどうだろうか。改めて振り返る。

 経済同友会は首相よりも一足早く、小林喜光代表幹事が4月末に「憲法改正に向け、議論を始める」と表明した。経団連は安倍首相の考えに呼応する形で、憲法改正に向けた提言を行うという。しかし、改憲に慎重な日本商工会議所は、提言などは行わない方針で、経済3団体の対応には温度差がある。

 経済3団体には大企業が中心の経団連、経営者が個人で参加する経済同友会、全国の中小企業が中心の日本商工会議所の三つがある。いずれも安倍政権とは緊密な関係にあるが、憲法問題をめぐっては、最も改憲に積極的な同友会と、安倍首相に追随する姿勢が目立つ経団連、会員企業の多さゆえに憲法問題では積極発言を控える日商の間にはスタンスの違いがある。

 経済3団体でこの間、最も早く「改憲」に触れたのは、同友会の小林喜光代表幹事で、4月27日付の毎日新聞、産経新聞朝刊に「今の憲法には矛盾する部分もある。安全保障や憲法について議論を深める必要がある」などと発言したインタビュー記事が載った(産経新聞の記事、http://www.sankei.com/economy/news/170427/ecn1704270003-n1.html 毎日新聞の記事、https://mainichi.jp/articles/20170427/ddn/008/020/040000c)。この発言は読売新聞が安倍首相のインタビューを掲載した5月3日の前の週だが、小林代表幹事が事前に首相の発言を知っていたとは考えにくく、憲法9条や自衛隊について具体的な発言はなかった。

 これに続く形で、経団連の榊原定征会長は5月8日の記者会見で「今の憲法は70年を経て日本を取り巻く状況が変わってきている。経済界としても憲法がどうあるべきか、しっかりした見解を持ちたい」と述べ、年内をめどに憲法改正に向けた提言をまとめる考えを表明した。

 榊原会長は「憲法の下で日本は平和を享受してきた。憲法9条は十分尊重したうえで、自衛隊の位置づけや教育問題を議論したい」と述べた。事実上、安倍首相の憲法9条見直しを支持する姿勢を示した。

 これに対して、日本商工会議所の三村明夫会頭は5月11日の記者会見で、「憲法には変えるべきものと変えざるべきものがある。自衛隊の存在を明確化することは、国際情勢を考えれば変えるべき対象と思っているが、どういう風に変えるかはこれからの議論だ」と述べたうえで、日商として安倍政権に政策提言などは行わない考えを示した。

 経済3団体のうち、これまで最も改憲に積極的なのは同友会だ。同友会は2003年4月、「わが国が消極的な一国平和主義を脱し、国際的な平和構築の主体的な参画者となるべきだ」などと、憲法改正を求める提言を行っている(同友会憲法問題調査会活動報告書4月22日、https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2001/020422a.htmlv)。今回は2009年度以来、8年ぶりに憲法に関する委員会を設け、憲法改正に向け議論するという。

 経団連は2005年1月、憲法9条に関連し、「自衛隊の役割を明確にすべきだ」とする提言をまとめたことがあるが、これまでどちらかと言えば憲法改正には慎重で、距離を置く姿勢を貫いてきたが、安倍政権と緊密な関係を維持したい榊原会長は今回、いち早く首相の考えを支持した。今後、夏の経団連のセミナーなどで議論するというが、9条と自衛隊をめぐっては慎重な対応を求める声も予想される。

 日商も2005年6月、集団的自衛権について「日本も当然保有していると考えるべきだ」として、憲法改正を求める報告書をまとめたが、経団連同様、政府に強くは働きかけてこなかった。日商は全国の商工会議所に中小企業はじめ多くの会員を抱え、憲法問題で意見を集約するのが難しいからだ。

 事実、日商は2013年にも憲法問題を議論したことがあるが、自衛隊の位置づけなどをめぐり会員から多様な考えが出て意見集約ができず、結論の公表を見送った経緯がある。

 いずれにしても憲法改正はデリケートな問題だ。戦後、軍事費負担の軽いことが経済成長の大きな要因の一つとされ、経済界にもいわゆるハト派や護憲派は少なくなかった。他方、安倍内閣が武器輸出の制約を大幅に緩めたり、軍産学の共同研究を推進することで、直接の恩恵を受ける大手重工を筆頭とする軍需産業もある。経済界が憲法改正を支持する見返りに税制改正など経団連が求める経済政策が有利に働く可能性を指摘する声もある。

 安倍首相の提案を受け、自民党への献金額の大きい経団連や同友会がどんな意見を改めて表明するのか。憲法改正ムードの盛り上げに一役買うことになるのだろうか。

長谷川 量一 (ジャーナリスト)

最終更新:5/29(月) 10:00
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