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マタニティーマーク、あなたはどうする?

5/29(月) 21:00配信

STORYS.JP

妊婦であることを示す「マタニティーマーク」
”妊娠・出産の安全性と快適さの確保”を目指して生まれたこのマークは、
所持者が妊婦であることを周囲に示し、交通機関をはじめ公共の場で妊婦さんへの配慮を示しやすくするもの。

しかしながら、マタニティーマークを付けていることで、
乱暴な言葉を投げかけられたり、手を上げられたりなど、耳を疑うような事も起こっている。

新しい命の証を喜ばしく思う人もいれば、
境遇によってか、なかなかそうとは思えない人もいる。

他人との関わり。

満員電車の中、マタニティーマークを付けた人を見かけたら、あなたはどうするか?
また、あなたが同じ立場であればマタニティーマークを付けたいか?

本日はその問いについて考えさせられる、あるエピソードをご紹介したい。

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マタニティマークをつけていると、いろんなドラマがある。
私が十月十日の妊婦生活の中で印象に残った、あるオジサマの話をしたい。

自分がなってみて初めて分かったけど、妊婦は本当に身体がしんどいことが多い。
個人差があるけど、多くの人が初期はつわりでツライし、
安定期を越えると今度はだんだんとお腹が大きくなってきて、立っているのが物理的にツライ。

私は自宅から職場まで、乗り換え1回、トータル50分くらい電車に乗っている。
しかも殺人的に混んでることで有名な路線なので、朝のラッシュ時間帯は乗車すらできないこともよくあった。
妊婦だとお腹をギュウギュウ押されるのはかなり怖い。

上司に相談して、なんとか出勤時間を1時間遅らせてもらうことができた。
10時出社にしてもらったおかげで、少しは空いている電車に乗れるようになった。

朝1時間変わるだけで、乗車率は120%から、70%位にはなっただろうか。
席はすべて埋まっていて立っている人も多いけど、隣の人と押し合うほどではない。

どうやら私はつわりが乗り物酔いにでるタイプだったようで、ともかく妊娠初期は朝の通勤電車に酔ってしまっていた。
ずっと立っていると、もれなく吐き気がしてくる。
そして後期になってからは子どもの発育が良すぎたせいか、かなりお腹が重い。
立っているだけで腰が痛いし、息も上がってくる。

通勤途中で気持ち悪くなり、1回や2回降りることもあった。
幸いにも電車を止めたことはなかったけど、その寸前で電車を降り、ホームのベンチでぐったりしていることがよくあった。

マタニティマークを付けていると、ありがたいことに席を譲ってくれる人がたくさんいる。
だいたい6~7割くらいの確率だろうか。
女性も、男性も、年齢問わず、気がついたときに譲ってくれることが多い。
特に体調が悪いときは本気で拝みたくなるほどありがたかった。

スマホを見てたり寝てたりすると気づかないけど、ときどき
「あっ!いま気づきました!!スミマセン!!」となぜか謝りつつ慌てて立ってくれる人もいて、
「いやいや、むしろこちらがスミマセン!!」となることも。
申し訳ないけど、ありがたい。

ふと考えてみると、妊娠するまでの私は目の前の人がマタニティマーク付けてるかどうか、
体調悪そうかどうかなんて、あんまり意識したことがなかった。
こんなに電車の席を欲してる人がいるなんて、知らなかった。
子どもが生まれて落ち着いたら、いま譲ってもらっている分を次の妊婦さんや体調悪そうな人にちゃんと返していこう。
そんなことを思った。

さて、本題のオジサマの話。
マタニティマークを見て席を譲ってくれるのは、女性だけでなく、意外に男性も多い。
女性は若い人も多いが、男性の場合、若い人より30~40代以上の方が多い気がする。

この間は、厳しい表情をした50代位のスーツの男性が、無言でスッと譲ってくれた。
「ありがとうございます!」と言ったら、ニコっと嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
会社にいたらちょっとコワモテで話しかけにくそうな人なのに、
ギャップがカッコ良くてビックリした。笑

ある時は、中国人男性が2人組で座ってたのに、2人とも競うように席を立ってくれたりもした。
中国の人もマタニティマーク知ってるんだー! となんだか嬉しかったり。

いろんな人がいたけど中でも特に印象的だったのが、ある素敵なオジサマのことだ。

ある日私が朝の電車に乗ると、座席はすべて埋まっていた。
私は体調も悪くなかったので、特に気にせずつり革に捕まって立っていた。

目の前には2人の男性。
大学生くらいの男の子と、70代くらいのオジサマが座っていた。

大学生はイヤフォンをしてゲームか何かをしている。
オジサマの方は70代位だろうか。
杖をついていて、どこか品のいい、明るい雰囲気の人だ。

ふと私のカバンについてるマタニティマークに気づいたオジサマが、隣の大学生を肘で突っついた。
イヤフォンを外す男の子。オジサマは、コソコソ小声で言った。

「私ね、ちょっといま体調悪いのよ。君、よかったら譲ってあげてよ」

目の前で見てる私はビックリしたけど、
ニコニコしながら明るい調子で大学生にお願いしていた。
大学生も優しくて、ゲームを中断されたのに怒るでもなく「スイマセン、どうぞ!」とすぐに席を立ってくれた。

「すみません! ありがとうございます」
2人にお礼を言って座るのを、隣のオジサマは嬉しそうにニコニコしながら見守っていた。

人に譲らせちゃうなんて面白いおじさんだなぁ。
そんなことを思っていたら、次の駅でなんとまた妊婦さんが乗ってきた。
しかも私より確実にお腹が大きい。

「こりゃあ、私が譲らないとだな!」なんて言いながら、
そのオジサマはその妊婦さんに席を譲った。
私と大学生はちょっと笑って見ていた。

その日から私は、オジサマと朝の通勤電車で時々会うようになった。
というか、たぶんよく同じ車両に乗り合わせていたんだろうけど、
「あ、あのオジサマだ」と気づけるようになった。
だいたい同じ時間、同じ車両に乗ると会える。

とはいえ、お互いズレることもあるので、目の前で顔を合わせるのはだいたい週1回位だろうか。
オジサマは私を見つけると、必ず嬉しそうに席を譲ってくれた。
(人に譲らせたのは初回だけだった。笑)
そこから何を話すわけでもないけれど、朝オジサマに会えると私もなんだかちょっと嬉しかったりした。

オジサマは薄いサングラスをかけていて、杖をついている手が少し震えている。
身体があまりよくなさそうなのに席を譲ってもらうのは申し訳なかったけど、
なんだかとても嬉しそうに譲ってくれるので、私もありがたく受け取ることにしていた。

だいぶ顔見知りになってきてからは、少し離れた所にいても、
無言で (おーいおーい!)と手を振ってくれて、わざわざ私を呼び寄せて席を譲ってくれたりするようになった。
ほんと明るくて、おもしろい人だ。

そのオジサマと、ここ2週間位会えていなかった。
私は早く会いたくて、できる限り同じ時間の同じ車両を狙って乗るようにしていた。

というのも、私は今月いっぱいで産休に入ってしまう。
休みに入る前に、ちゃんと今までのお礼を言いたかったのだ。

狙って狙って、ようやく会えたのは2週間以上経っていたと思う。

いつもの電車に乗って (今日もいないかな…) と思ったら、
人と人の間から、オジサマがひょいっと顔を覗かせた。
お互い、久しぶりの友だちに会ったみたいに手を振っていた。

いつも通り席を譲ってくれたオジサマを見上げた。

「あの、来週から産休に入るんです。
今までいっぱい席を譲ってくださって、ありがとうございました!」

オジサマはそうかぁ、と嬉しそうにうなずいた。
「いつ産まれるの?」
「8月の予定です」
「そうかぁ、もうすぐだね。元気な子が生まれるといいねぇ」
目を細めてニコニコしてくれた。

「あ、それとね」とオジサマ。
「あなたと会ってからね、いいことがいっぱい起こったんだよ。こちらこそありがとうね」
そう言って、オジサマはウフフと、また嬉しそうに笑った。

どんないいことがあったのかわからないけれど、なんだか私も嬉しくなった。
また会えるといいねと言って、オジサマはいつもの駅で降りていった。
ちょっとほっこりした、産休前の出来事でした。

* * * * * * * * * * * *

ふと思う。

朝の通勤電車は殺伐として、みんな赤の他人の顔をしているけど、
実はみんな多かれ少なかれ、このオジサマみたいな優しさを持っていたりするんじゃないか。
たまたま表現できてないだけで、ちょっとしたきっかけがあれば
みんな本来持っている優しさ、あたたかさを表現することができる。

そして、人が生まれるというのは体力的にも精神的にも本当に大変なこと。
こんな風に名前も知らない人にあたたかく支えてもらったり、
いろんな人に守ってもらって初めて、1人の人が生まれることができる。

いま私たちは当たり前のように生まれて生きて生活しているけど、
自分がお腹にいた時のことを知らないだけで、実はそんな風に支えてくれた人がまわりにたくさんいたんじゃないか。

そんなことを思ったりした。

━━ マタニティマークの話。/ STORYS.JP より引用

最終更新:5/29(月) 21:00
STORYS.JP

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