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クビトバが復帰戦に勝利、目には涙 [全仏テニス]

5/29(月) 17:02配信

THE TENNIS DAILY

 フランス・パリで開幕した「全仏オープン」(本戦5月28日~6月11日/クレーコート)。

負傷から復帰のクビトバがセンターコートのオープニングマッチに勝利 [全仏オープン]

 センターコートを離れ、大会のプレーヤーズ・ラウンジに入っていったとき、第15シードのぺトラ・クビトバ(チェコ)は試合の際の汗に濡れたウェアのまま、抱擁すべき人物を探していた。

 彼女は父のイリと、やはりイリという名の兄を見つけた。

 兄は彼女を、温かい抱擁と喜びに満ちた頬へのキスで迎えた。クビトバの家族が、彼女の試合を観るため大会に出向くことは稀で、今回はいつもと違っていた。『特別な』という言葉を、彼女も、ほかの家族のメンバーたちも使い続けていた。

 自宅でナイフを持った暴漢に襲われてから、6ヵ月を待たずに大会復帰を遂げたクビトバは、大会初日、フィリップ・シャトリエ・コート(センターコート)の第1試合に登場し、復帰初試合を戦った。

 2度ウィンブルドンで優勝しているクビトバは、世界ランキング86位のジュリア・ボーズラップ(アメリカ)を6-3 6-2で下す過程(試合時間74分)で、これといった困難には遭遇しなかった。

「もちろん、プレーには満足している」と、クビトバは言った。「でも今日重要なのは、プレー内容云々ではなかった」。

 フィリップ・シャトリエ・コートの、雲に覆われた空の下にいること自体が、クビトバにとって勝利だったのだ。彼女は昨年12月にチェコの自宅で、ナイフを持った侵入者によって利き腕である左手に傷を負わされ、手術を受けなければならなかった。クビトバは先週の後半まで、全仏オープンでプレーするか否か、決めかねていた。

「私たちにとって本当に驚くべきこと、奇跡です。私や、ぺトラ自身でさえが、こうも早く復帰できるとは思っていなかった」と、彼女のコーチであるイリ・ノバクは言った。「治療後の経過予想は、まあ言ってしまえば、そう楽観的なものではなかったんです」。

 コート上のインタビューの際に、クビトバは「ここにいられること自体が喜びよ。ここでプレーするという決断を下してよかったと、心から思う」と、観客たちに向かって言った。そして、ノバクや家族、ゲストボックスにいたほかの人々に、「厳しい時期を通して私を助けてくれて、本当にありがとう」と言った。

 この日曜日、クビトバに近しい者たちの何人かは、黒地に白い文字で『Courage(勇気)・Belief(信じる心)・Pojd』と書かれたTシャツを身につけていた。チェコ語で『カモン!』に当たる意味を持ち、Tシャツ上では「O」の代わりに赤いハートマークで描かれていたその最後の言葉、『POJD』を、クビトバは特にいいショットを放った際によく叫んでいる。

「信念、精神、そしてハートは、本当に重要だわ」と、クビトバは試合後に言った。「それが、私たちが皆に見せようとしていたものなの。それがほかの人々にとっても、ある種のインスピレーションになればと願うわ」。

 ボーズラップに対する試合では、拳を握り締めて『POJD!』と叫ぶチャンスはたくさんあった。ボーズラップは全仏オープンの本戦出場も、左利きの選手と対戦するのも、これが初めてだった。

「彼女は、とても感じのいい選手のひとりなの。私たちは皆、彼女の復帰を目にできてうれしいと思っているわ。彼女が通り抜けてきた出来事を考えると、本当に信じられないほど素晴らしいことよ」と、ボーズラップは言った。「だから彼女にとって、コートに戻れたことが勝利だった。本当に特別なことだった」。

 第1セットのクビトバはフォアハンドのウィナーで、ことを始めた。

「自分でも驚いたわ」と彼女は言った。

 クビトバのウィナーの総数は、ボーズラップの9本に対して、31本を記録した。彼女は3-0とする過程で、最初の20ポイントのうち15ポイントを取り、3-1から3ブレークポイントをセーブしたときを例外に、これといった抵抗にも遭遇しなかった。

 試合が終わるとクビトバは、ベースラインの近くでラケットを落とし、青いヘアバンドを外した。それから彼女はボーズラップと握手をするため、ネットに歩み寄ったが、その目は涙で濡れていた。

「我々は、彼女が健康になったことをうれしく思います。手はもう治りました----そして精神も」と、兄のイリは言った。「精神的に、彼女は戻ってきたのです」。(C)AP (テニスマガジン/テニスデイリー)

最終更新:5/29(月) 17:02
THE TENNIS DAILY