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史上最高感度のダークマター検知実験、結果発表

5/29(月) 23:10配信

ギズモード・ジャパン

まだ見つかってはいないものの。

宇宙の物質の85%は、我々が見たり触ったりできないダークマター(暗黒物質)だと言われています。ダークマターの巨大な質量による重力は星の光を曲げ、銀河の回転にも影響を与えると考えられていますが、その存在はまだ誰も確認できていません。科学者たちは今、ダークマターの正体に迫るべく世界各所で実験を繰り広げています。

最先端の巨大タンクの内部画像

でも、見ることも触ることもできないものを検知するってどうするんでしょうか? ダークマターはごく小さな粒子だと考える研究者が多いのですが、その姿を捉えるために編み出された方法が、液体キセノンを入れた巨大なタンクを使う方法です。そんなタンクのひとつ、イタリアのグラン・サッソ国立研究所の地下に設置されたXENON1Tから、初の実験成果が報告されました。まだダークマターの存在は確認できませんでしたが、希望はまったく消えていません。

「一番エキサイティングなのは、検知器が期待通り動いたことです」。チューリッヒ大学Physik Institutの教授、Laura Baudis氏は米Gizmodoに語りました。

液体キセノンって、どんな風に使われるんでしょうか? 現在、ダークマターは普通の物質の原子核とだけ弱い相互作用を持つ何らかの粒子だと考えられています。そして実験では、この粒子がキセノンの核にぶつかり、光の粒子、または電子を発することが期待されています。ぶつかりあったときの最初の光子の信号と、電子が実験から出てくるときの光子のシグナルの間の時間によって、ダークマターが装置のどの部分にぶつかったらしいかを判断します。その信号は光電子増倍管で増幅され、グラフ上にポコッと飛び出すと考えられています。

XENON1T実験の研究チームは、今もダークマターが検知されていないことに関してはそれほど心配していません。彼らの実験結果はarXivで公開されましたが、そこにはまだ1カ月ちょっと分のデータしか反映されていません。ただそれは、庭に大きなバケツを置いて隕石が落ちてくるのを待つのに似ています。1カ月待っても隕石が落ちてこないからといって「隕石は存在しない」とは言えません。しかもダークマターはそのタンクを透過してしまうはずなので、検出する手段はカメラに映るかどうかという、かすかな光が頼りです。

こういう大がかりな物理実験って、だいたいそんな感じです。もし「ダークマターは小さすぎてこの実験では検知できない」と判断されたら(それを判断するだけでも普通何年もかかりますが)、検知器の感度をより高く(つまりサイズを大きく)するんです。実験規模を大きくすれば、何らかを検知できる確率が高まりますが、そのためにはキセノンがもっとたくさん必要になります。

「検知器をより長く動かしたり、規模を大きくしたりするたびに、我々はより多くのパラメーター空間を探索しているのです」。シカゴ大学のカブリ宇宙物理学研究所のフェローChristopher Tunnell氏は語りました。「(それによって)これはダークマターではないとか、それは違うとか言えるようになるのです」

そんなに感度の高い検知器だと、何でもかんでも反応して、違うものをダークマターと勘違いすることはないんでしょうか? カリフォルニア大学サンディエゴ校のXENON1Tの研究者Kaixuan Ni氏は、XENON1Tが地下深くにあるのはまさにそのためだと教えてくれました。というのは、放射線はどこからでもやってきて検知器に信号を送りうるのですが、地下であればそんなノイズは届かないそうです。また、自然に存在する放射性物質の原子が検知器の中でどう見えるかもわかっているので、データを分析する段階でこれらの信号の影響を排除していきます。XENON1Tは周りを水で囲まれているうえに、今回発表した観測結果データは実験施設の中心から取得したもののみとなっていて、外側にあるキセノンがさらなる壁になっているんです。

ちなみにXENON1Tは「キセノン1トン」という意味ですが、実際使われている液体キセノンの量は3トンちょっとあります。同様の検知器は他にもあり、米国のLarge Underground Xenon(LUX)実験は2016年夏にダークマター探索を終え、LUX-Zeplin(LZ)実験へとアップグレード中です。中国のPandaX実験でもキセノンを使っているし、別の希ガスであるアルゴンを使う実験もあります。

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