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[寄稿]ワシントンの「狂人」をどう理解すべきなのか

5/29(月) 17:18配信

ハンギョレ新聞

 米国の外にいる人にとって、最近ワシントンで起きていることを理解するのはとても難しいだろう。米国の大統領らがいつも立派な知性の持ち主だったわけではないが、大抵は少なくとも米国と世界に影響を与える主な事案について理解しているものと思われてきた。また、歴代の大統領は政治的偏向に関係なく、各分野の専門家らを周囲に置き、政策を作ったり公式的な発言をする場合も彼らに依存してきた。

 このような歴史は必ずしも栄光に満ちたものではなかった。ジョージ・ブッシュ大統領の専門家たちは、米国を必要もなくで終わりそうにもないイラク戦争に巻き込んだ。ビル・クリントンとブッシュ大統領の最高位経済補佐官らは住宅バブルの土台を提供し、そのバブルの崩壊は70年ぶりの最悪の経済危機を米国にもたらした。

 しかし、これらのひどい失敗を犯したとしても、大統領らは主要政策分野ではそれなりに目に見える努力をしてきた。(ところが)ドナルド・トランプはそうではない。彼は対外および国内政策のほとんどの分野について、本当に何も知らない。70年間この国で生きてきたにもかかわらず、基本的な政策事案について驚くほど無知だ。もっと深刻なのは、彼が(それを)気にも留めないということだ。

 彼の信じられない無知はほとんど毎日明らかになっている。トランプは選挙運動の間、中国を為替レート操作国だと激しく非難し続けた。ところが先月、習近平主席に会った際には、彼と良い関係を結んだと話した。為替レートに言及してその関係を壊したくないと言いながら、韓国が中国の一部だったという興味深い話もした。

 国内問題に対する知識も、(国外に関するものと)あまり変わらない。米国の黒人の歴史を称える期間である2月には、偉大な奴隷解放家であり、民権活動家のフレデリック・ダグラスをまるで今でも生きている人物のように話した(彼は120年前に亡くなった)。また、300万近く得票数が少なかったにもかかわらず、大統領選挙で自分を勝たせてくれた選挙人団制度についても、まったく理解していないようだ。自分をインタビューする記者たちに、まるで新しい情報でも提供するかのように、50州の選挙人団投票地図を見せている。その記者たちにはすでにその地図についてよく知っている。

 共和党は、富裕層ができるだけ多く所有し、早く所有できるようにする手段となった。それに関したイデオロギーや哲学的約束はない。これは単に彼らの懐を満たそうとする問題だ。健康保険改革案の中心は今後10年間にわたり6千億ドル以上の税金を削減することだ。このような削減のほとんどは最上位1%を排他的な対象にするものだ。彼らの健康状態がよければ、健康保険料をより少なく支払うボーナスも付いてくる(この健康保険案で2400万人が保険を失うことになる)。トランプが概要を明らかにした税金改革案が実現すると、最富裕層は毎年数百万ドルを節約できるようになり、彼らの死亡後もその家族は数十億ドルの不動産税を納めなくて済む。

 金持ちをより裕福にするのは税金だけではない。トランプと共和党は、学資金の融資や年金口座からクレジットカード決済まで、金融業界がすべてに課す手数料を低く抑える金融規制の撤廃を目指し、戦っている。温室効果ガス削減努力を廃棄しようとすることに加え、他の環境規制も弱体化させている。その代表的な例が、鉱山から採掘した後、土地の復元を義務付けた規制を翻す行政命令の発動である。この措置は鉱夫の雇用を保護するための対策として宣伝されたが、その反対の効果を生み出すだろう。トランプは石炭会社が労働集約的な地下採掘作業をもっと少ない労働者で行うことを可能にした。

 共和党は明かに能力不足の大統領を追い出せる力を持っているが、彼が最富裕層のための成果を出す限り、いかなる措置も取ろうとしないだろう。彼らが関心を持っているのは再選だけだ。議会での経歴が終わる頃、彼らには高額のロビイストという第2の経歴が加わるだろう。共和党がトランプを見捨てる唯一の場合は、トランプが実際に大衆を当惑させて、かなりの上院・下院議員の再選の見通しが危うくなる時であろう。(しかし)まだそこまでは来ていない。これは、トランプがこれからもとんでもないことをやらかし、腐敗し続けることを意味する。

ディーン・ベーカー米国経済政策研究センター共同所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:5/29(月) 17:18
ハンギョレ新聞