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吉田麻也、飛躍の理由…抱き続ける“変わらぬ思い”とは?【海外日本人総括】

5/30(火) 11:39配信

GOAL

転機は、2016年12月18日に行われたプレミアリーグのボーンマス戦で訪れた。

4−3−3のセンターバックとして、オランダ代表DFのビルヒル・ファン・ダイクとともに先発メンバーに入ったのが吉田麻也だった。それまで不動のレギュラーだった主将でDFのジョゼ・フォンテがベンチにまわり、日本代表DFが先発起用されたのだ。

センターバックとしてプレミアリーグの試合に先発したのは8月13日のシーズン開幕戦以来、約4カ月ぶりのこと。ヨーロッパリーグやカップ戦では先発を任されていたが、リーグ戦では控え扱いから脱却できずにいた。

突然回ってきたチャンス。吉田は敵地での一戦でボーンマスを無難に抑え、3−1の勝利に貢献した。試合後、充実感を漂わせながら語り始めた。

「プレミアリーグの試合は”熱さ”が違いますね。激しさも違うし、アップダウンの回数も多い。その分スペースが空くので、かなりのスペースをカバーしなければいけなかった。やっぱり、(ヨーロッパリーグやリーグカップとは)全然違うなと思いました。後半に入って自分のペースが落ちてしまったので、そこは『まだまだだなあ』と感じますが、1対1の局面でも勝っていたし、全体的に良かったと思う。やっぱり、試合に出るのは楽しいですね」

試合中、アウェーゲームに駆けつけたサウサンプトンのサポーターから吉田を称えるチャントが起きた。「チャントは聞こえた?」と尋ねてみると、「聞こえました。ただ、前回の試合でジョゼ(フォンテ)のチャントが聞こえていたので、(心の中では)複雑でした」と言う。その言葉の真意を次のように説明した。

「フォンテはこの数年、チームを引っ張ってきた選手なので。サポーターもやっぱり彼を信頼していると思うから、僕としては結構プレッシャーになります。ただ、あまり他の人のことは考えずに、自分がいいパフォーマンスをすることだけを意識していました」

■主将の退団と、増しゆく安定感

それから程なくして、フォンテのウェスト・ハム移籍が決まった。以降、12月31日のプレミアリーグ19節のウェスト・ブロムウィッチ戦から最終節のストーク戦まで、吉田はプレミアリーグで20試合連続となる先発フル出場を果たし、サウサンプトンの8位進出に大きく貢献した。吉田が台頭したおかげで、フォンテの退団を惜しむ声はメディアやサポーターから聞こえてこなかった。

とはいえ、その間、吉田がすべての試合でパーフェクトな守備を見せたわけではない。2月4日のウェスト・ハム戦では、相手2トップのどちらかがタッチライン近くまで流れる変則的なアタックに苦戦し、3ゴールを許して敗れた。ホーム&アウェーの2試合を無失点に抑えたリヴァプールとのリーグカップ準決勝のように抜群のプレーを見せた試合もあったが、内容が良くないゲームもあった。レギュラーの座を奪取した直後は、少なからずパフォーマンスに波があったのだ。

しかし、試合を重ねるごとに安定感が増し、パフォーマンスは向上していった。特筆すべきは、リヴァプール(5月7日)、アーセナル(5月10日)、マンチェスター・ユナイテッド(5月17日)の強豪クラブとの3試合。吉田はノーミスで、リヴァプール戦とマンチェスター・U戦ではクリーンシートに大きく貢献した。「試合に出続けていることが大きい。試合勘はやっぱり大きいですね」と本人が語ったように、1対1の局面では力強い守備で、相手の突破には軽快な動きで、最終ラインを支え続けた。

とりわけ、目を引いたのがマンチェスター・U戦の出来だった。ウェイン・ルーニーを完璧に抑え、スピードのあるマーカス・ラッシュフォードにも裏を取らせなかった。好パフォーマンスだったのは、試合終盤に自軍のサポーターから沸き起こった「マヤー!ヨシダー」のチャントが物語る。この3試合のパフォーマンスはサウサンプトン加入以来、ベストと言っていい出来だった。

■今も、昔も、変わらないこと

過去3シーズン、控えに甘んじていた吉田にとって、今シーズンはまさに充実の1年になった。レギュラーの座を掴み、リーダーシップを買われてチームキャプテンを3度任された。日本人初となるプレミアリーグ出場100試合も達成。プレーの質が向上し、4月のクラブMVPに選ばれ、サウサンプトンの年間表彰式では会長賞を受賞した。

特に、シーズン全体で評価されるクラブ年間表彰式で賞を取った意義は大きい。受賞の感想を聞いてみると、「長くいるのに賞を取ってなかったから、『あげとくか?』的な感じじゃない?(笑)」と最初は照れ隠しではぐらかしていたが、少し間を開けてこう続けた。

「毎試合、100%以上のものを出していく。その先は、ひとつ、ひとつ積み重なっていくと思っているので。とにかく、自分自身が向上する。そして、いい結果をチームが出すことだけに集中してやっていくしかない。評価は、その後ついてくる。センターバックのポジションなので、1試合で3点とって急に評価が上がることはない。今シーズンで言えば、そういう小さいことの積み重ねが、賞みたいなものにつながったと思う」

「ハイパフォーマンスを出すために、90分間通して集中力を欠かないようにしないと。あとは自分がプレーに関与していない時間帯でも、コーチングでしっかり存在感を出せるようになりたい。センターラインの選手として、チームを支えていけるような選手に、チームの中心になれるような選手にならなければ」

控え時代も腐らず、一步一步、前へ進もうと努力した。その姿勢は、レギュラーに昇格した今も変わらない。

「ひとつ、ひとつ積み重ねて」。

吉田麻也は今もなお、向上心を胸に、さらに成長しようとしている。

文=田嶋コウスケ

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最終更新:5/30(火) 11:39
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