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理想の姿追い求め 「世界女王の軌跡-宮里藍引退」 「苦痛 エネルギーに」

5/30(火) 14:10配信

琉球新報

 「まだメジャーのチャンスはある。諦めてない」。引退表明の会見で宮里藍(31)は、今季あと4戦が残る米ツアーでのメジャータイトル初制覇へ強い意欲を見せた。気力の維持困難に苦しんで決めた引退だが、逆に「今年いっぱいと期間を決めたことで今、いいプレーができている」と勝利への気持ちや意欲の高まりという“収穫”を得た。6月8日に開幕するサントリーレディスオープン(神戸市)出場が予定されている。目の前の1試合を丁寧に戦って「早く勝ちたい」。プロ14年、最後の挑戦に挑んでいく決意を表情にみなぎらせた。


向き合う姿勢 最後まで

 飛ばし屋も多く日程の過酷な米女子ツアーを11年戦ってきた宮里藍(31)の強さの源流は、ショットの精度と小技の切れだけではない。“趣味”だと公言してきた「自分と向き合う力」の強さがあった。東京都内で29日に行った引退表明会見で「苦痛をエネルギーに持っていくのが趣味だったので」と語るほど、強いメンタルは武器だった。しかし4年前から目標と動機を見失って立ち止まり、試行錯誤したが結果が伴わない日が続いた。「モチベーションの維持の難しさが一番の決め手だった」。会見で初めて明らかにされた引退理由は、誠実な人柄で知られる宮里の悩み抜いた末の決断だった。

 主戦場を米国に移して3年後、2009年のエビアンマスターズで念願の米ツアー初優勝。10年はツアー開幕戦のホンダLPGAを皮切りに4勝の快進撃で6月に日本人初の世界ランク1位に輝いた。8月にも1試合を制して5勝を挙げ、岡本綾子(4勝)を抜き米女子ツアーで日本人最多のシーズン勝利記録となる。

 11年はエビアン・マスターズを再び制して「プロゴルファーとしてのピークを感じていた」一方、欲しい物はまだ手に入っていなかった。トッププロが競うメジャー大会(当時は年間4回開催)の頂点だ。1977年の樋口久子のメジャー初制覇以来、2人目への期待も大きかった。

 06年の米ツアー参戦以降、今年4月のANAインスピレーションズまで49回のメジャーに歴戦したが、最高成績は06年の全米女子オープンと09年の全英女子オープンでいずれも3位。11年に全米女子オープンで第3ラウンド途中まで首位を走るも悪天候などで6位。そして12年の全米女子オープン6位を最後に、メジャー1桁台は出せていない。

 「『メジャータイトルが取れない』と思ってしまったんですね。そこまで考えなくてもよかったのかもしれないけど」。2012年、米女子ツアーで全てのメジャー参戦を終えた後、カナダであった大会で初めてメンタルコーチに「次に何を目標にしていいか分からない」と心が立ち止まってしまったことを明かした。「自分を見失い、どう立て直すか分からなかった」

 メンタルコーチと話し合い、焦らなくていい、どの選手にも起こり得ることと納得した。そのうち、パターがイップス(緊張から手が自由に動かなくなり、ごく短いパットを強く打ってしまう)になり、それを逆に「乗り越えて終わりたい」という立て直しのきっかけに変え、手探りの時間を過ごした。

 しかしその間、メジャーだけでなく米ツアー優勝からも遠ざかり「4年間頑張ったが、今まで通りの練習やトレーニングで自分を追い込むことができなくなった。それは自分の望む形ではなかった」。本領としてきた自分と向き合う力は戻らず、昨夏に引退を決意した。

 今季の戦いはまだ続く。国内では今季最終のサントリーレディスオープン(6月8~11日、神戸市・六甲国際GC)が最後となる。中京テレビブリヂストンレディス(19~21日、愛知県)を6位の好成績で終え「(引退すると)期間を設けたことで頑張れている。まだメジャーのチャンスは残っている。諦めてない」

 米女子ツアーは6月以降11月までまだ23試合ある。メジャーは6月の全米女子プロ選手権、7月の全米女子オープン、8月の全英リコー女子オープン、9月のエビアン・チャンピオンシップの4大会が残る。出場試合は「まだ決めていないが、メジャー大会にはエビアンまで全て出たい」。勝利への意欲にあふれる今を喜び、悲願のメジャー初制覇へと最後の舞台に乗り出す。

琉球新報社

最終更新:5/30(火) 14:10
琉球新報