ここから本文です

【高安、平成生まれ初の和製大関】〈3〉磨く一撃必殺のかち上げ

5/31(水) 10:03配信

スポーツ報知

 眉間にしわを寄せて、高安は声を荒らげた。4月の兵庫・加東市での巡業。「ウォーターバッグ、どこやったの?」。春場所前から取り入れた、長さ1メートルほどの円柱の中に水を入れることで体幹を鍛える道具を付け人が手違いで東京へ送ってしまったからだ。「やるか、やらないかじゃだいぶ違うんだよ」。直後の藤沢巡業。付け人に一時帰京の際に取りに帰らせ、体育館の端で1人黙々とウォーターバッグを抱え、すり足をする高安の姿があった。

 関取、幕内、金星、三役など“平成生まれ初”の枕ことばが付いてきたが、なかなか上位に定着できず苦しんだ時期もあった。大関昇進は照ノ富士に先を越され、同じフィリピン人の母を持つ学生出身の御嶽海には初対戦で黒星。「やっぱり負けたくないっていう気持ちはありますよね」。たたき上げの闘志に火が付いた。

 たどり着いたのが立ち合いの強化。「かちあげ」だった。兄弟子の西岩親方(元関脇・若の里)が「技術はもともとある。ああ見えて器用」と評すように、左右の四つ、突き押しでも取れる万能さが持ち味。反面、絶対の型がないと言われてきた。自覚のあった高安は、突きを生かすため稀勢の里との三番稽古で試行錯誤。「圧力が通じることが何回かあった」と手ごたえをつかむと、すぐに実践。かちあげで上体を起こし一気に突ききった初場所の白鵬戦は理想だった。

 器用貧乏になる必要はない。同じ茨城出身で万能型だった二子山親方(元大関・雅山)は「かちあげからの突き、それくらいでいい。大関としてそれを盤石にしないといけない」と提言する。夏場所では12番で使い、相手を圧倒。上体を起こして突きに転じて一気に勝負を決める姿が目立った。

 一方で連敗癖など好不調の波が激しいのは課題。相手を懐に呼びこむ引き技はもろ刃の剣で、多用するはたき込みは弱点にもなる。「大関は他の力士から研究されますから。雑な相撲では負けてしまう。一番一番考えて前に出る相撲を取らないと」と二子山親方。悪癖を改善し、一撃必殺の立ち合いを極めれば安定感は増す。「どんな状況でも堂々というのが僕の大関像」。目指す相撲道の先に、初の賜杯と横綱の地位も見えてくるはずだ。(特別取材班)=おわり=

最終更新:5/31(水) 10:44
スポーツ報知