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すべてを出し切ったヒュー・ジャックマンが新作『LOGAN/ローガン』を語る

5/30(火) 7:00配信

ぴあ映画生活

ヒュー・ジャックマンが主演を務める映画『LOGAN/ローガン』がいよいよ6月1日(木)から公開になる。本作でジャックマンは、2000年から演じ続けてきたローガン=ウルヴァリンの最後の戦いを描くため、主演だけでなく脚本づくりの段階から積極的に関わったが、「僕たちは映画の最後にローガンが死んでしまうのか、それとも生き残るかを重視していなかった」と振り返る。では、ジャックマンたちは本作で何を描こうとしただろうか?

『LOGAN/ローガン』写真

ジャックマンが演じ続けてきたウルヴァリン、別名ローガンは、鋭い鋼の爪と驚異的な速度で回復する身体をもつ男。彼は、特殊能力をもつ“ミュータント”と呼ばれる者たちと共に“X-MEN”として戦うが、どこか孤独で、仲間と距離を置く孤高の存在だった。なぜ、ローガンは野生的な力を発揮する最強ヒーローでありながら、孤独な生き方を選んだのか? ローガン役を機に世界的なスターになったジャックマンは、2009年、この疑問を解き明かすべくローガンが主人公のシリーズに着手する。「この役を初めて演じたときから、スーパーヒーローの人間性の部分について、長い間、興味を持っていた。ローガンは西部劇に出てくるヒーロー、つまり、善人だけど謎めいた未知なる部分がある人物だからね」

2009年にウルヴァリン誕生の秘話を描く『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』が公開され、4年後にはジェームズ・マンゴールドを監督に迎えて、日本を舞台にした『ウルヴァリン: SAMURAI』が製作された。「ジェームズが2作目から関わるようになって、その撮影が終わった3か月後には、この映画の話を始めていたよ。どんな作品にすべきか、ずっと考え続けていたから、夜中に急にアイデアを思いついて、ベッドから出て、慌ててボイスレコーダーに録音したりもしたよ(笑)。当時は、自分の考えに自信が持てない瞬間もあった。でも、時間をかけて執拗に考え続けることで、これまでのシリーズの印象を変えてしまうような、単なるウルヴァリンの最終章ではない、より深く、新しい映画にしたかったんだ」

ジャックマンとマンゴールド監督がミーティングを重ね、監督がふたりのライターとまとめあげた脚本の舞台は、ミュータントが絶滅しようとしている未来だ。すでに新しいミュータントが生まれることはなく、人々もまた彼らを必要としていない社会で、老いたローガンは、アメリカとメキシコの国境沿いで、かつて“X-MEN”を率いたチャールズ・エグゼビアとひっそりと暮らしていた。しかしある日、彼の前に特別な力をもつ11歳の少女ローラが出現したことで、ローガンの最後の物語が幕を開ける。

新作に登場するローガンは、老いて、身も心もボロボロで、やつれた表情を浮かべ、他人を寄せつけない日々を送っている。あのワイルドで、精悍なウルヴァリンからは想像もつかない姿だが、ジャックマンは本作で「ローガンのこれまで描かれなかった面を見せたいとずっと思っていた」と振り返る。「長い間、ローガンを演じてきたから、これまで描かれてこなかった彼の内面があることに、ずっとフラストレーションを感じていたし、ファンもそう思っていたと思う。ファンの声や感想にはいつも耳を傾けていたし、考えることも多かったから、こうして感動的な映画が出来上がった今は、ファンの人たちに心からありがとう! と言いたい気持ちでいるよ」

興味深いのは、老いて、身体をひきずるように動く状態であっても、危機が迫れば、ローガンは内に眠る“本能”で敵に立ち向かうことだ。意識しても身体がいうことをきかなくなりつつある老いた姿と、無意識に危機に反応するローガンの野生的な部分を、ジャックマンは見事に演じ分けている。「ありがとう! ダニエル・デイ・ルイスなら3時間もあればマスターできる演技かもしれないけど(笑)、6年前の僕がこの脚本のローガンを演じることができたか聞かれたら……確かなことは言えないな。ただ、僕は17年かけて、ローガンという役に自分の血を注いだと言ってもいいほど取り組んで、すべてを出し切ることができた。もちろん、完璧じゃないかもしれない。でも、今はすごく満足しているよ」

ジャックマンが17年という時間を投じて作り上げたローガンの物語は、どうやって終わりを迎えるのか? ジャックマンは製作陣と話し合いを重ねるにあたって、クリント・イーストウッド監督の名作『許されざる者』から強いインスピレーションを受けたという。「イーストウッド演じる主人公がそれまで断っていた酒をグイッと飲んで復讐に向かう場面があるだろ? あのシーンで観客はいつも胸が張り裂けそうな気持ちになる。あの主人公はこれまでずっと耐えて暮らしてきたけど、あのシーンで銃を手にしたことで一生、“許されざる者”になってしまう。でも、美しいことをするために彼は最も醜くて暗い場所に行かなければならないし、そうすることで彼は“生きる”ことができるんだ。死ぬことは簡単だけど、痛みや罪悪感を抱えて生きていくことの方が大変なわけで、脚本づくりの初期の段階から、僕たちは映画の最後にローガンが死んでしまうのか、それとも生き残るかを重視していなかった。最も大事なのは、観客がローガンの“二面性”を目撃することだ。彼は、タフで究極の兵器でありながら、同時に破滅的で、驚異的な力が自分を壊してしまう方向に作用している。だから、観客はいつもローガンに対して、戦ってほしいけど、戦ってはダメだと思っているし、この映画ではそんな彼の相反する二面性が極限に達するんだ」

圧倒的に強いのに、戦うたびに自分が傷ついてしまう。誰よりも愛を求めているのに、周囲の人々を遠ざけてしまう。不死の身体を手に入れたのに、この世を去ることばかり考えている。ジャックマンはローガンを最後に演じるにあたって、彼がもつ複雑な側面をあますところなく演じることにこだわった。「その上で、観客には“考える”のではなく、何かを“感じて”もらえるような結末になったと思うよ」

『LOGAN/ローガン』
6月1日(木) 全国ロードショー

最終更新:5/30(火) 7:00
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