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漏洩したトランプードゥテルテ電話会談録に読み取れる金正恩

5/30(火) 16:30配信

ニュースソクラ

「金正恩は核兵器を持った頭のおかしい男」

 弾道ミサイルの発射実験を繰り返す北朝鮮に国際社会が手を焼いている。日米は「圧力強化」を呼びかけるが、北朝鮮と近い関係にある中国は慎重で、ロシアはむしろ北朝鮮と経済関係を強化する動きを見せている。そんな中、トランプ米大統領の本音が読み取れる会話録を、米メディアが暴露した。

 機密 フィリピン外務省 4月29日午後10時

 トランプ大統領です。少しお待ちください。
 大統領、お電話ありがとうございます。こちらは夜です。
 遅くに電話したかな。大丈夫だった? 遅くなかった?
 大丈夫です。ASEANの他のメンバーと夕食をしていました。

 電話で会話しているのは、トランプ米大統領と、ドゥテルテ・フィリピン大統領だ。2人は4月29日に電話会談をし、主に北朝鮮問題について語った。ホワイトハウスは、この電話会談を「非常に友好的だった」と発表し、トランプ氏がドゥテルテ氏をワシントンに招待したことも公表した。

 この電話会談の詳細な内容が5月24日付の米紙ワシントンポストにすっぱ抜かれた。フィリピンの情報提供者からメディアに持ち込まれ、フィリピンのニュースメディアが本物と確認したという。

 この会談で興味深いのは、北朝鮮の指導者金正恩氏についての評価だ。
 2人の大統領は馬が合うらしく、気さくな感じで対話が進んだ。トランプ氏は金正恩氏を「核兵器を持った頭のおかしい男」と呼んでいた。

 できるだけ忠実に訳してみる。

 トランプ そちらの様子はどうだい。
 ドゥテルテ うまくやっています。ASEANのメンバーは朝鮮半島の情勢に神経質になっています。われわれは(トランプ)大統領を支持しますし、圧力をかけて行きます。なぜなら金正恩の手にロケットと弾頭がある限り、何が起きるか分からず、われわれも安心できない。
 トランプ あなたの意見はどうだい、ロドリーゴ(ドゥテルテのこと)。われわれが相手にしている人間は安定しているのか、安定していないのか?
 ドゥテルテ 彼は安定していません、大統領。ロケットを打ち上げる時、彼は笑っている。彼は、挑発してはいけない国である中国にも逆らっている。彼はいつも笑っている。人類に苦しみをもたらす危険なおもちゃを手にしている

 会談は中国の役割に移る。

 トランプ そうだね。彼は爆発物(核兵器のこと)は持っているが運搬手段はまだだ。全てのロケットは失敗している。これはいいニュースだ。しかし、本当に運搬手段を持ったら・・・ 中国はどうするかね。中国は彼に影響力はあるのか?
 ドゥテルテ ええ、中国は切り札があります。中国だけです。彼(金正恩氏)の頭は回っていない。彼は時々いかれる。中国はきっと彼にやめろと説得するでしょう。中国は重要な役割を果たします。
 トランプ われわれはあそこ(朝鮮半島のこと)にたくさんの火力がある。世界最高レベルの2隻の潜水艦がある。使いたくはないが、彼は狂っているかも知れないので、何が起きるか見ている。
 ドゥテルテ いつの時代にもおかしなやつはいます。われわれの時代は、金正恩です。あなたはとてもデリケートな問題を扱っています。(中略)
 トランプ 中国が問題を解決するよう希望する。中国は方法がある。相当部分のモノは、中国から(北朝鮮に)行っている。しかし中国がやらないなら、われわれがやる。(中略)私は彼(習近平・中国国家主席)と、とてもいい関係にある。フロリダで一緒に過ごし、理解しあった。いいやつだ。
 ドゥテルテ ミサイルの射程について心配しています。
 トランプ 核兵器を持った頭のおかしい男を、あのように野放しにはできない。われわれの攻撃力は北朝鮮の20倍だ。しかし(それを)使用することは望んでいない。

 この会話からは様々なことが読み取れる。
 まず、トランプ氏は、金正恩氏が理性的な判断ができる人間か疑っているが、出方を読めていない。
 トランプ氏は「核兵器の運搬手段の完成」を強く懸念している。米本土に達するICBM(大陸間弾道ミサイル)のことだ。これが「レッドライン」と判断していることが確認できる。北朝鮮の動向には注意を払っているものの、「使用は望んでいない」(トランプ氏)と、武力攻撃にはかなり後ろ向きだ。
 当面は問題解決に向けて、中国を動かそうとしている。個人的にも習近平にいい印象を持っており、期待している。

 この会談からだいぶ時間がたったものの、中国は期待通りに動いてくれなかった。この間、韓国には、北朝鮮に比較的理解を示す新政権が誕生した。ロシアは、北朝鮮との間に定期旅客船の運航を開始し、経済的なつながりを拡大する動きを見せている。
 北朝鮮は米国側の意図を見透かすように、ICBM級ではない、中距離や新型ミサイルの発射実験を繰り返している。
 トランプ氏が「狂人」扱いする金正恩氏の方が、いまのところ上手を行っているようだ。

■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にした。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。

最終更新:5/30(火) 16:30
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