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桃太郎テーマに教師像を語る…元県教育長の稲葉さん、浦和大学で講演

5/30(火) 13:31配信

埼玉新聞

 桃太郎は英雄か-。元県教育長で浦和大学客員教授の稲葉喜徳さん(72)が、さいたま市緑区の同大学こども学部で講演。罪なき鬼を一方的に退治する昔話「桃太郎」を批判的に見る福沢諭吉らの評価を挙げ、いま求められる教師像について説いた。(保坂直人)

■桃太郎をめぐって

 講演は同学部が今年4月、小学校教員養成課程を新設したことを記念し行われた。

 「桃太郎さん桃太郎さん、お腰につけたきび団子、一つわたしに下さいな」ー

 文部省(当時)は1911(明治44)年、尋常小学校唱歌第1学年用教科書に童謡「桃太郎」を掲載。有名な歌詞だが、4番以降はあまり知られていない。

 例えば4番。「そりゃ進めそりゃ進め、一度に攻めて攻めやぶり、つぶしてしまえ鬼が島」。5、6番も好戦的な歌詞が続く。稲葉さんは「日清、日露戦争の時代、好戦的で勇ましい内容の歌になっている」と説明する。

 桃太郎をめぐっては、福沢諭吉が1871(明治4)年、子ども向けにつづった家訓の中で、桃太郎を英雄とする見方に異を唱えた。
「ももたろふは、ぬすびとともいふべき、わるものなり」

 福沢は桃太郎を、鬼の宝物を盗み、他者の独立を侵害する盗人と断罪した。

 芥川龍之介は1924(大正13)年、小説「桃太郎」を執筆。安らかに暮らし、平和を望む「鬼が島」の鬼を無残に殺害し、鬼の子どもを人質に財宝を奪う桃太郎の姿をシニカルに描いた。

 稲葉さんは当時の時代背景に触れ「おそらく芥川は急速に軍国主義に傾斜していく日本を黙認することができず、独自の視点で桃太郎を描いたのではないか」と筆者の意図を推し量る。

 稲葉さんによると、戦後になっても、桃太郎は企業社会を生き残る積極的なモデルとして取り上げられるという。例えば、経営コンサルタントの田辺昇一氏は、桃太郎を経営者に、達成すべき目標を鬼が島に、イヌ、サル、キジをそれぞれ努力型、企画型、情報通の部下に見立てた(扇谷正造氏「桃太郎の教訓」)。

 稲葉さんは、こうした桃太郎の取り上げ方について「戦前は日本の軍国主義を、戦後は経済至上主義を体現するものだったのではないか」と指摘する。

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最終更新:5/30(火) 13:31
埼玉新聞