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中野信治「佐藤琢磨のインディ500勝利を、日本のモータースポーツ界は決して無駄にしてはいけない」

5/30(火) 21:12配信

motorsport.com 日本版

 日本人として初めて世界三大レース(F1モナコGP、インディ500、ル・マン24時間)に参戦した中野信治。その中野も、佐藤琢磨のインディ500制覇を喜んだ。

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「素晴らしいのひと言に尽きると思います」

 そう中野は語る。

「彼のすごいところは、ずっと世界に拘って戦い続けてきたということだと思います。たくさんの苦労があったと思います。それでも、インディ500制覇を成し遂げたのは、すごいと思います」

「確かに、今回は良いエンジンが当たっていたということもあると思います。琢磨とアロンソのエンジンは、明らかに良さそうに見えました。そういう良い巡り合わせもあった。しかも、アンドレッティという良いチームにも入ることができた。オーバルはデータに懸かっている部分も大きいので、そういう全てが揃ったということでしょう。でもそれを揃えることもできたという、実力の勝利であったと思います」

 中野も、2003年にインディ500に出走している。

「インディ500の素晴らしさは、僕も経験しました。僕の時はプラクティスも満足にできなかったので、勝ちを狙うとか、そういうところまでは行けませんでしたけどね。だから、羨ましさと誇らしさの、両方の気持ちがあります。でも、素直におめでとうと言いたいですね」

 中野は、佐藤が自分と同じような道を歩んできたことに、親近感を覚えているようだ。そして、佐藤との意外な接点もあった。

「彼はイギリスに行ってF1までたどり着いて、その後はアメリカに行きました。先輩面するわけじゃないですけど、僕と同じような道を辿ってきたんですよね。僕がイギリスからアメリカに行く時、使っていたステレオをあげたくらいですから」

「彼と最初に会ったのは、僕がF1に乗っていた頃で、無限さんか何かのカート大会の時だったと思います。その時、彼がどんな立場だったのかは覚えていませんが、挨拶に来てくれて、自分をしっかりアピールできる子だなと思った。自分からしっかりと訴えてきたんです。その時から、彼は何か別次元にいるように見えましたね。僕はその一件で、彼の名前をしっかりと覚えました。そして、彼はF1に来るなと実感したのを覚えています」

 佐藤琢磨は、インディ500の勝利から一夜明け「インディを目指す日本人ドライバーが出てきて欲しい」とコメントした。中野も、それと全く同じ意見を持っている。

「これで若いドライバーが、F1だけじゃなくて、アメリカにも目を向けて欲しいと思います」

 そう中野は言う。

「彼を追いかける、そういう若い人が出てきてくれればいいですね。日本の弱いところは、『凄いな』と思っても、そこで終わってしまうというところにあると思います。そうじゃなくて、『次こそは自分が!』という、そういう人が出てくる起爆剤になって欲しいです。琢磨は40歳ですが、日本でのキャリアが十分にある、30歳くらいのドライバーだって、そういうチャンスはあると思うんです」

 そして中野は、次の言葉を強く形、締めくくった。

「日本のモータースポーツ界は、この勝利を決して無駄にしてはいけないと思います」

田中健一