ここから本文です

「しんにってつすみきん」と読みます-鉄の王者が渋谷でアピール

5/30(火) 7:48配信

Bloomberg

訪日外国人の観光スポットとしても知られる渋谷駅前のスクランブル交差点。目の前にそびえ立つファッションビルの壁面に、赤く溶けた鉄から火花が噴き出す工場の映像が映し出される。

「しんにってつすみきん、鉄を極める」。人々の波が押し寄せ、世界でも類を見ない通行人数を誇る交差点にアナウンスが鳴り響く。動画の広告を流しているのは国内トップの鉄鋼メーカー、新日鉄住金。ファッションの発信地として知られる渋谷の街は、重厚長大産業のイメージとは懸け離れている。同社が若い世代を対象に広告活動を行うのは近年、ある異変が起きているからだ。

ハチ公前で待ち合わせをしていた横山汐梨さん(17)は新日鉄住金の社名を見て「読めない」とつぶやいた。普段の生活の中で鉄はあまりなじみがなく、同社のことも知らないという。ブルームバーグが渋谷で横山さんら30歳未満の若者に調査したところ、同社について「知っている」と答えたのは10人中わずか1人。社名を正しく認識していたのは2人で、6人が「しんにってつじゅうきん」と読み間違えた。

「鉄は国家なり」

「鉄は国家なり」。鉄の生産量が国力の指標になることを表すこの言葉にも象徴されるように、鉄鋼業は戦後日本のものづくりを支えた。1970年に八幡製鉄と富士製鉄の「世紀の大合併」で発足した新日本製鉄(現・新日鉄住金)は日本企業として初めて売上高が1兆円を超え、70年代は国内トップの座を維持していた。

近年では長期化する景気の停滞に加え、約5年前に新日本製鉄と住友金属工業が合併し誕生した現在の社名が浸透せず、認知度は低迷する。新日鉄住金は「すみきん」を「じゅうきん」と間違えられたり、グループ会社と認識されたりすることもあった。同社広報担当者によれば、ニュース番組でも「しんにってつじゅうきん」と読み間違えられたことが何度かあったという。

新日鉄住金が参考にしているある企業ブランド調査によると、昨年、同社あるいは社名について「知っている」と答えた人は全体の半数程度にとどまった。調査を始めた30年前には新日鉄に対する認知度は90%を超えていた。新日鉄住金広報センター所長の大西史哲氏は「業界での存在感と世の中の認知度のギャップが広がっている」と話す。合併後の規模拡大で、同社は日本の粗鋼生産の4割以上を占めるようになり、中韓のライバル企業が台頭する世界市場でもトップ3の一角に返り咲いた。

1/2ページ

最終更新:5/30(火) 7:48
Bloomberg