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県内自治体で水道料金値上げ拡大 老朽、耐震化で改修費増

5/31(水) 4:00配信

茨城新聞クロスアイ

水道料金を値上げする自治体が県内でも増えている。水需要の減少で収入が減る中、現行の料金体系では古い水道管の交換や施設の耐震化に必要な費用を賄い切れなくなっているためだ。自治体同士で連携してコスト削減に努める動きも出てきたが、県全体の水道事業は今後40年間で4千億円不足するとの試算もあり、値上げの動きは今後も続きそうだ。 (報道部・戸島大樹)


神栖市は2016年5月分から水道料金を平均9・9%引き上げた。供給単価が給水単価を下回る原価割れの状態が続き、07年度から8年連続で赤字を出し続けてきた。

値上げで収入は約1億8千万円増え、黒字転換のめどは立ったが、担当者は「設備の更新には多額の費用がかかる。大口顧客の企業が水源を地下水などにシフトする動きもあり、予断を許さない」と話す。

ひたちなか市も、収益の悪化により今後10年間で約48億円の収入が不足するとして18年ぶりに料金を改定、15年10月から平均18・4%引き上げた。水戸市も水道施設の耐震化などに今後40年間で約1120億円が見込まれるとして14年4月から平均7・9%、日立市も同月から平均6・6%、大洗町も13年4月から平均8・75%引き上げた。

■県平均4094円
県によると、15年3月末時点の水道料金の県平均(水道管の口径20ミリで1カ月に20トン使用した場合=標準モデル)は4094円。記録の残る過去30年で最高を記録した。

値上げの背景の一つに東日本大震災での苦い経験がある。地震で水道管や浄水施設が被災し、県内では約80万戸が断水。断水率は8割に上り、東北3県を上回る「水道被災県」となった。

一方、県内の主要な水道管のうち震度6強程度の地震に耐えられる割合は34%(15年度末時点)、浄水施設の耐震化率は16%(同)で、ともに全国平均を下回る。

各自治体とも設備の維持改修や更新を迫られているが、人口減少や節水で収益は悪化し、財源確保のために料金の値上げに踏み切らざるを得ない状況という。

■30年ぶり検討
県内で最も水道料金が安いつくば市(標準モデルで月2500円)も、約30年ぶりとなる値上げを検討中。有識者らでつくる審議会から「経営健全化には平均38%の改定が必要」と指摘されている。

水道事業は運営費を料金収入で賄う独立採算制だが、同市の場合、一般会計からの赤字補填(ほてん)は年間約4億円に膨らみ、98年度に75億円あった内部留保も15年度には10億円まで減少。値上げは「待ったなしの状態」(市)だ。

県と地方自治研究機構が昨年実施した意識調査によると、県内42の水道事業体のうち14団体が料金改定について「検討中」、または「検討予定あり」と回答している。

■徴収を民間委託
経営改善に向けて国が「水道広域化」を促す中、かすみがうら市と阿見町の取り組みが全国的に注目を集めている。

2市町は15年度から料金徴収業務の民間委託を共同発注する仕組みを導入。従来は市町ごとに拠点があったが、1カ所に集約することで人件費を削減。委託料は両市町とも1千万円以上減った。担当者は「連携する分野や自治体を広げ、さらなる経費削減につなげたい」と話す。

ただ県と同機構が3月にまとめた調査報告書は、県内42団体の今後40年間の収支総額をシミュレーションした結果、全体で4002億円もの資金不足が生じると試算。40年後には38団体で預金がマイナスになるとして、さらなる経営改善を求める。

本県は地下水が豊富だったため水道の普及が遅れた「水道後発県」。水道設備の更新時期のピークは今後10年程度とみられており、県内の水道事業は大きな岐路を迎えている。

茨城新聞社