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拡大する中古市場 経済にとってプラス?

5/31(水) 7:10配信

ITmedia ビジネスオンライン

 フリマアプリ「メルカリ」の台頭が著しい。2013年7月にサービスを開始して以降、破竹の勢いで成長しており、15年10月には2000万ダウンロード、16年には4000万ダウンロードを達成。現在では1日当たり100万点以上の商品が出品される巨大中古市場に成長した。この影響を真っ先に受けたのが、中古本・中古家電販売のチェーン「ブックオフ」と言ってよいだろう。

【欧米では流通する住宅の7~9割が中古(『中古住宅流通シェアの国際比較』出典:国土交通省)】

 同社は16年3月期の決算で上場以来初の赤字に転落し、17年3月期も最終赤字となった。ブックオフの業績不振は、主力商品である書籍の市場縮小による影響が大きいが、一部にはメルカリに顧客を奪われた可能性を指摘する声もある。ブックオフではタダ同然の値段でしか売れなかった商品が、メルカリでは1000円で売れたといった話がSNSで拡散するケースも増えている。ブックオフへの中古品の持ち込みが減り、仕入れに苦戦した可能性は高い。

 ブックオフの場合、大型店舗を展開し大量の在庫を抱えているため、コスト的に致し方ない面があるが、メルカリのような市場運営型企業の場合、こうしたコストは限りなくゼロに近くなる。このため余分なコストが掛からず、売りたい消費者と買いたい消費者を最適にマッチングすることができる。

 メルカリが中古品売買のインフラとして社会に認知されれば、さらに出品者が増えて、市場としての価値が増大するという正のスパイラルが発生する。メルカリを経由した売買が、今後さらに拡大する可能性は十分にあるだろう。

●大塚家具とニトリが中古市場に参入

 中古市場は家具の分野でも広がりつつある。経営権をめぐるお家騒動から経営不振に陥った大塚家具と、ライバルのニトリとの争いが中古家具の分野で加熱しているのだ。

 大塚家具は経営方針をめぐって創業家で内紛が発生。創業者の大塚勝久氏が会社を去り、娘の久美子氏が社長に就任した。久美子氏は低価格帯の家具にも間口を広げる新戦略を打ち出したものの、これがうまくいかず赤字に転落。起死回生策として打ち出したのが、中古家具の拡充である。

 17年4月に旗艦店である「新宿ショールーム」に中古専門店を開店するとともに、中古マンション販売を手掛けるスター・マイカと提携し、高級中古家具付きの住宅販売にも乗り出す方針だ。

 一方、ニトリは、中古住宅販売カチタスの株式の一部を約233億円で取得。カチタスの住宅とニトリの家具をセットにして販売するプランを検討している。

 諸外国では家具付きで住宅を販売したり賃貸するケースがよく見られるほか、家具は購入せずにリースで利用する形態も多い。日本では新品に対する「信仰」が根強かったが、フリマの台頭で若い世代を中心に中古に対する苦手意識は薄れつつある。

 大塚家具はもともと中~高級家具を得意としており、低価格帯を中心としたニトリとは競合関係ではなかったが、間口を広げる戦略に転換したことで、顧客の一部はニトリと重複するようになった。

●中古市場の拡大は経済成長の原動力となる

 こうした中古市場の拡大については、社会や経済に対してマイナスの影響をもたらすのではないかと懸念する声がある。生産量の抑制につながるなど、一部ではそうした面があることは否定できないが、筆者は長い目で見た場合、中古市場の拡大は経済にとって好影響をもたらすと考えている。その良い例が米国の住宅市場である。

 日本では住宅流通量に占める中古住宅の割合は10%台だが、欧米では流通する住宅の7~9割が中古である。では、欧州や米国の住宅関連市場は縮小する一方なのだろうか。むしろその逆である。中古市場が活性化することで、住宅の資産価値が維持され、住宅市場は日本とは比較にならない規模に成長している。

 中古住宅が大量に存在することで、消費者が住宅そのものにかけるコストが安く済み、その分、断熱やインテリアなど、住宅の質を高める産業分野にたくさんのお金が回る。結果的に中古市場の拡大は経済全体を活性化しているのだ。

 最近、メルカリで発生した現金出品問題についても同じ文脈で捉える必要があるだろう。これは事実上のヤミ金融であり、こうした用途に悪用されないよう、運営者側が対策を講じるのは当然のことである。だが、こうした不適切な利用形態については、もっと大きな枠組みでの議論が求められる。

 日本では過度な取り立て問題から消費者金融に対する規制を強化し、事実上、消費者金融業界を縮小させてしまったが、こうしたサービスに依存していた多重債務者をどう救済するのかという部分については、まったくといってよいほど対策を講じなかった。

 その結果、行き場を失った一部の多重債務者がフリマ市場に流れ、そこに資金を提供する新しいヤミ金事業者が登場してきたという面があることは否定できない。中古市場は社会インフラであるという認識を持ち、サービス単体でその是非を議論するのではなく、社会全体で解決策を見いだす方向性を重視すべきだろう。こうした感覚こそが、成熟社会では求められている。


(加谷珪一)