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誤差は±25℃、セメント設備の省エネ効果を高める温度計測システム

5/31(水) 13:10配信

スマートジャパン

■±25℃範囲内での計測が可能に

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2017年5月、三菱マテリアルとチノーがセメントロータリーキルン(回転式窯)内の過度な熱エネルギー使用を低減し、省エネルギー効果を高める高精度温度計測システムを開発したと発表した。このシステムを実物キルン内で検証した結果、従来の温度計測では誤差-150~-60℃程度だったのに対し、ほぼ±25℃範囲内での計測が可能となり、大幅な精度向上に成功したという。

【クリンカ温度計測の原理】

 日本のセメント製造業は世界的に省エネルギーが進んでいるが、地球温暖化に対する社会的要請から、さらなる省エネルギー化が求められている。既存技術による省エネルギー化はほぼ限界に達しているため、新たな技術の開発が必要とされている。

 セメント製造設備のロータリーキルン(回転式の連続高温焼成装置)内で焼成されたクリンカ*)の温度は放射温度計を用いて測定されているが、クリンカの微粒分によるダストが光のエネルギーを散乱、吸収、放射することが障害となり、測定精度が低いという問題があった。クリンカを適正な温度に保つことで、熱エネルギーの過度な使用を抑制し、省エネルギーにつながる高精度な温度計測技術が求められていたという。

*)クリンカ:石灰石、粘土などを原料とした塊状物質。石こうとともに粉砕してセメントが製造される。

 両社はクリンカの省エネルギー焼成を確実なものとするため、高ダスト濃度環境下のセメントロータリーキルン内で温度計測できる高精度計測システムを開発した。

 同システムでは新たに開発した2台の高性能放射温度計を使用し、キルン出口のクリンカ温度を測定するとともに、それに近い落口金物の温度を測定。得られた2つの温度からクリンカ温度を算出する新アルゴリズム(ダストキャンセル法)を採用している。このシステムを実物のキルンでも検証した結果、従来技術の放射温度計で誤差-150~-60℃程度に対し、ほぼ±25℃範囲内の計測が可能になり、大幅な精度向上に成功した。

 同システムの開発で、三菱マテリアルは温度測定位置の最適化、温度算出モデルの高精度化、計測システムの耐久性の検証を行った。同社の共同研究先である岐阜大学は、温度算出モデルに必要なダストによる光の減衰の測定を担当。チノーは指向性の高い高性能放射温度計の開発、データ収集・演算システムの開発に取り組んだ。

 同システムは、セメント製造プロセスで最もエネルギーを消費するクリンカの焼成工程での熱エネルギーの使用量の低減に寄与する。今後に実用化が期待されている鉱化剤を用いたクリンカの低温焼成技術の実現にも欠かせないシステムになると考えられ、ダストが存在する各種工業炉などでの温度計測にも適用が期待される。両社は今後、同システムの計測精度や信頼性、耐久性を高め、2020年度の製品化を目指すとした。