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カンヌは落選も…河瀬直美監督「光」が“泣ける”と話題

5/31(水) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 邦画で唯一のパルムドール出品に、日本メディアが色めき立った河瀬直美監督(48)の最新作「光」(キノフィルムズ配給)だが、第70回カンヌ国際映画祭授賞式でその名が呼ばれることはなかった。「正直悔しい」と無念の気持ちをあらわにした3年前の「2つ目の窓」に続き、最高賞受賞を逃す結果となった。

 しかし、公式上映では拍手喝采のスタンディングオベーションで、授賞式前日にはエキュメニカル審査員賞を受賞したというニュースが報じられ、新聞評もこぞって高評価だったこともあり話題性は十分。東京・有楽町にある映画館「丸の内TOEI」の切符売り場は、月曜昼(29日)の上映なのに列をなす盛況ぶりだ。

 もっとも、それは都内近郊に限った話で、「オープニング2日間の興行収入は1300万円。単館系に近い上映規模とはいえ地方の動きが鈍く、及第点には程遠い数字です。樹木希林と市原悦子のコンビで多くの中高年層を動員した『あん』(15年)は5億円を突破し、いまだロングラン上映していることを考えたら、その差は歴然。パルムドールを取っていたら風向きは変わったでしょうが、最終で1億円程度でしょう」(映画興行関係者)。

 昔は第一線で活躍していた天才カメラマン(永瀬正敏=50)が弱視となり、視覚障害者のための「映画の音声ガイド」の制作に従事している女性(水崎綾女=28)と出会うものの、互いに生き惑う男女の心の機微を描いたヒューマンラブストーリー。河瀬監督の故郷で現在の拠点でもある奈良を舞台に、自然豊かな山あいや自然光を多用した映像美も楽しめる。

 たとえ、カンヌで1等賞に選ばれなくても、都会暮らしで汚れた“心の洗濯”にはうってつけの作品だ。映画評論家の秋本鉄次氏もこう言う。

「河瀬監督の代名詞ともいえる『殯の森』をはじめ、初期は前衛的な作品が多かったのに比べ、『あん』同様、いい意味で商業ベースを意識した万人受けしやすいテイストに仕上がっていました。気持ちが素直な人ほど感動できる作品でしょう。ただ、個人的には、永瀬は異常性や凶暴性をはらんだ役柄のほうが光る役者であり、水崎もキャバ嬢を演じた『ユダ』のほうが好ましいと思っています。そこが残念ではありましたね」

 “カンヌの申し子”の異名も持つ河瀬監督。次回こそ――。